第3話 鍵を開けて

「あいつには言ったの?こっち来ること。」

「言ったよ。あの子も結婚して3年くらい経つしね。別にあたし居なくても。」

「相手が相手じゃん。」

「…私の距離感とあの子の距離感は違う。それに、あんたは私に『』を望んでるはず。違ったらごめん。」

「違わない。」


即答した。やはりこの人は僕の気持ちを見抜いていた。


「……私もあんたの『特別』でいたい。」

「母親とか、知り合いじゃなくて?」

「言葉には表せない。でもすごく大切。」


彼女は僕を抱き寄せた。

昔から変わらない。唯一無二の安心感。

誰にもない温かさと柔らかさ。


「いっつもごめん。」

「うん?なにが?」

「本当はこうしてほしかったのに」

「わかってたからいい。」

「俺、本当の子供じゃないからさ、母親とっちゃいけないって、甘えちゃいけないって思ってた。」

「それもわかってる。」

「……独り、しんどかった。」

「しんどかったな。よく頑張ったな。」


僕は彼女の胸の中で涙に溢れていた。

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