第31話 最悪の寄生虫
「ホルヌス、機は熟したぞ。クソメテオにより城内は混乱している。それと国王の生け捕りに成功した。後は俺達が出てその身柄を奪えば勝ちだ」
天幕の中、メルディナの膝の上で休んでいた俺はホルヌスに好機が到来したことを伝えた。
俺のクソ魔法クソ英雄作成により生み出した戦士、ウニー=トンサー。奴を通じて俺はナトリウム城内の様子は把握できるからな。城の中は既にクソまみれとなり、様々な寄生虫どもが暴れている。教会の連中が浄化魔法でウンコを除去したとことろで城は広すぎるからな。到底追いつかないだろう。
「よし、オクシオーヌ。全員を集合させろ。我らの積年の恨みを晴らすときが来たのだ! この一戦を決戦とせよ。この戦いを魔王ゲリベーナ様に捧げるのだ!」
「はっ! ただちに」
オクシオーヌは背筋を伸ばして敬礼すると、威勢よく天幕のカーテンを開けて外へ出る。そして外にいる兵士たちに号令をかけた。
「全軍に告ぐ。これより全戦力を用いてスカトールを陥落させる。この一戦は決戦なり。ただちに集合せよ!」
オクシオーヌの号令を聞き、魔族達は他の仲間にも声をかけにいったようだ。一応前もって今日中に招集を行う可能性については触れていたからな。すぐに集まるだろう。
実際全員が整列するまで僅か1時間だ。草原を埋め尽くすような大群がホルヌスの前に集まった。なかなか壮観な景色じゃないか。
「皆のもの。これよりナトリウム王国王都スカトールを攻める。敵の中枢が混乱状態にある今が好機。虐げられし我らの怒りを思い知らせてやるのだ。この一戦に勝利した暁には魔王ゲリベーナ様がやって来られる。この一戦を魔王ゲリベーナ様に捧げよ。全軍進撃せよ!」
「おおおおーーー!」
ホルヌスの号令に各種族の部隊が雄叫びをあげる。獣人、エルフ、ドワーフ、ハーフリング、鳥人、竜人、デモノイド等様々な種族による混成軍。それが魔族なんだからこの世界はよっぽどクソなんだろうな。敗北した魔王の末路を聞いたときには反吐が出そうだったぜ。
全軍は足並みを揃えてスカトールを目指す。ここからはだいたい5キロほどらしいから1時間ほどで着くだろう。よく見つからずに済んでるもんだ。
「見えたぞ。スカトールの街だ」
「門の前に一般人が大勢いるな。あいつ等はどうするんだ?」
王都だけあって人の往来は凄いな。ここに来る途中にも馬車が走っていたが俺等を見かけると慌てて街の方へ逃げていったからな。俺等のことは既に伝わっているだろう。
「非戦闘員を殺す必要はない。人間を駆逐したいわけじゃないからな。だが邪魔なようなら躊躇なく殺るぞ」
「今まさしく邪魔だろ。見た感じ我先にと門の方に押し寄せている。俺等の進軍は既に伝わっているってことだな」
俺は遠見用の望遠レンズで街の門の様子を窺う。順番なにそれ状態で門の前は人が詰めかけている。そりゃ魔族が攻めてくるとなりゃ街の中に逃げたいか。だがそれは俺等を撃退できるっていう前提が必要だと思うんだがな。
「ああ、あのとき見かけた馬車ね。関係ないわ。肉の壁を作られる前に攻め込むべきよ」
「それにこの距離なら流石に俺等を見つけてるだろ」
「ふむ、それもそうだな。よし、全軍攻撃を開始せよ!」
ホルヌスの号令で全兵士が戦闘モードに突入。隊列を崩すことなく一直線に街の門を目指す。俺の出番は城にたどり着いてからだからな。それまでは後方で高みの見物になる。
* * *
「この私をどうするつもりだ……」
クソまみれとなった謁見の間。その玉座に座る王の周りにだけはクソはない。国王にはわかっていた。このウニーには自分を害する気はないと。その証拠に異形の寄生虫マンイーターは周りの倒れた兵士たちを食い散らかしているが、自分だけには一切寄り付こうとしないのだ。
「わかっているのだろう? 敗けた国の王の末路など一つしかない。民衆の前で処刑し、人間どもにわからせるのだ」
ウニーは腰に手を当て、胸を張って答える。ちなみにウニーの顔は目も口もないのでどこから声を出しているのかは謎である。
「ふん、いい気になるなよ? この穢らわしい汚物はすぐに浄化される。今頃騎士団が動いているはずだ」
浄化魔法を使えば汚物は除去できる。比較的低位の魔法なので使えるものも多いのだ。この穢らわしい汚物さえなくなれば勝てる見込みはあると国王は考えていた。しかしウニーは国王のそんな希望を容易く打ち砕く。
「そうか。実は今この街を我が主の部隊が攻めている。中と外、両方から攻められて持ち堪えられるかな?」
「おのれ……!」
さすがに魔族が攻めてきたとなると対応せざるを得ない。当然人員は街の防衛に回され、城内の浄化に回せる人員は減ることになる。
この汚物に紛れて出てくるゴーレムは動きこそ遅いが口に侵入されれば死が確定する恐ろしい寄生虫を持っている。
実際、あの
あのような化け物が蠢いているなら浄化魔法が使えるだけの雑兵などものともしないだろう。そうなると国王が助かる可能性など限りなくゼロに近い。
国王はそれを理解し、歯嚙みした。せめてあのグランドマスターがいれば何とかなったものを、と苛立ちながら俯く。
「今のうちに覚悟を決めておくがいい。貴様には最悪の拷問ショーが待っているからな」
「ご、拷問ショーだと……!?」
「そうだ。人間どもに逆らう気力を奪うための贄となってもらおう。今から貴様に寄生虫を植え付ける。この寄生虫はものすごく特別なやつだ」
ウニーは国王に近づく。それこそ玉座まで僅か1メートルもない位置まで。そしてウニーの顔の下半分が半月のように開いた。それが国王には不気味な笑みに見えたことだろう。そして穴から一匹の黒く細い虫が姿を現した。
「こいつの名は
「ま、まさか……!」
頭を潰す以外に死ねない。つまり拷問の最中に死ぬことはないのだ。国王はそれを瞬時に理解し、血の気が引く。
「そうだ。こいつは拷問のために創られた寄生虫。こいつに寄生されると身体に穴が開こうが心臓を抉られようが死ぬことはできず、気絶することも眠ることもできず痛みだけが永遠に残る。素晴らしいだろう?」
「やはり貴様らは邪悪な存在だ! そんな残酷な手段をよく思いつくものだ、この下衆どもが!」
あまりにも残酷な寄生虫に恐怖し、国王は歯をガタつかせながら罵る。
「何を言う。これはかつて貴様ら人間が先代の魔王にした仕打ちと同じのはずだが? なんでも敗北した魔王に死ねない呪いをかけて
ウニーは国王の両肩に手を置くと、自らの頭で国王の頭を呑み込む。そして黒く細い虫が国王の耳から脳へと侵入した。
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