第30話 スーパーヒーロー? ウニー=トンサー

「ぴゅ、ピュリファイ!」


 ウンコの塊に飲まれたベーションは転移魔法を用い難を逃れていた。そして身体にこびりついたウンコを浄化魔法で綺麗にする。しかしウンコこそ取れたが臭いまでは取れていなかった。


「むむぅ、鼻がまがりそうじゃわい。ピュリファイではこびりついた臭いまでは取れんか。弱ったのう」

「べ、ベーションではないか! 一体どうなっておる。窓ガラスを破って神聖な謁見の間に大量のウンコが流れて来たではないか!」


 ベーションが逃げた先は謁見の間だったのだが、クソメテオの直撃を受けた所の窓ガラスは破壊されていた。そのためこの謁見の間にもウンコが溢れていたのである。


「も、申し訳ありません陛下。あまりにも巨大な飛来物に対処は不可能でしたわい。儂が行ったときには既に遅すぎたんですじゃ」

「そ、そうか。しかしまさか城の中をクソまみれにされるとは思わなんだ。おのれソロモンめ、見つけたら必ずその首を跳ねてくれるわ!」


 こんな大量のウンコを操れる奴はソロモンしかいない。それがわかっているため国王はソロモンに対し激しい怒りを覚えた。城内をクソまみれにされたのだから当然ではあるが。


「そうですなぁ。まさか巨大な飛来物がうんこの塊などとは思わなんだわい。とにかく浄化魔法で片付けるしかなさそうじゃな」


 ベーションが浄化魔法でウンコを片付けようとしたときそれは起こった。謁見の間に溢れていたウンコが集まり、一体のゴーレムを生み出したのである。しかもそのゴーレムは他のウンコゴーレムとは違い細身の人型であった。そしてさらに驚くことにそのウンコゴーレムは形をが完成するやいなや高く跳躍し、空中でくるっと回転して着地したのである。


「な、なんじゃこのゴーレムは? なんと機敏な動きをするゴーレムじゃ!」


 ベーションは通常のゴーレムでは考えられない機動性に驚く。しかしこのウンコゴーレムの凄さはそれだけではなかった。


「フハハハハ! そこに座するはナトリウム国王とお見受けしたが如何に?」


 なんと喋ったのである。


「う、ウンコが喋っただと……? 確かに私がナトリウム国王である。それがどうかしたというのか?」


 人型のウンコが喋ったことに驚きつつも受け答えはしっかりしていた。ウンコと会話した国王などこのナトリウム国王以外に存在しないだろう。


「やはりか! ブルーレットの街を壊滅させた悪党め。この愛と正義のウンコゴーレム最強戦士、ウニー=トンサーが成敗してくれるわ。クソを喰わせてお仕置きだ!」


 ウニーはウンコを蒔き散らしながらポーズを取りつつ口上を宣う。なお、お仕置きだ、の部分では身体を仰け反らせつつ国王を指差していた。


「ぬううっ、ウニー=トンサーだと? ゴーレムのくせに名前があるのか」

「その通り! この私は世界で唯一人の名前付きネームドウンコだ! カッコいいだろう?」


 ウニーは国王を指差すポーズを維持したまま己の存在をアピールする。とはいえ元はウンコである。顔はのっぺらぼうなので表情もなく、コスチュームがあるわけではもないのでやはり動くウンコには変わりなかった。


「知らんわ! さっさと消え去れい、くらえピュリファイ!」


 ベーションは浄化魔法でウニーの消去を試みる。ピュリファイは範囲魔法であるため、単体浄滅魔法のアニヒレーションより有効と判断したのだ。


「無駄だ!」


 ウニーは素早い動きでピュリファイの効果範囲から逃れる。その速さは普通のウンコゴーレムの比ではなかった。


「ならば燃えつきろ! ファイアーボール」

「無駄だ! ウンコウェーブ!」


 ベーションの生み出した火の球。それに対処するためウニーは周囲のウンコを操り波を作る。その波は火の球と激突すると、激しい異臭を残して火の球を打ち消した。


「な、なんじゃとぉっ!?」


 まさかウンコの波をぶつけてファイアーボールを打ち消すとは思わず、ベーションは驚愕の声をあげた。もっと火力のある魔法はあるが、そんなものを使えば謁見の間は火の海となる。使える火魔法であればそんなに種類はなかった。


「今度はこちらの番だ!」


 ウニーは周りのウンコを集め、一振りの剣(?)を作る。正確にはウンコを剣の形にしただけであるが。


「な、なんじゃそれは!?」

「この剣こそは伝説のウンコの剣。その名もエカリバー! 覚悟しろ悪党ども!」


 ウニーはエクソカリバーを構えると一気に距離を詰める。その動きは素早く、ベーションは迎撃ではなく防御を選択した。


「喰らえ! 愛と怒りと悲しみの! エンガチョーーー、エクソカリバー! 突きぃ、突きぃ、突きぃーーっ!」

「プ、プロテクション!」


 ウニーはエクソカリバーでベーションの口を狙う。しかしそれをベーションの張った魔法の壁が立ち塞がった。そして砕け散るエクソカリバー。


「バカめ! 何がエクソカリバーじゃ。所詮はただのウンコではないか!」


 エクソカリバーが砕け散る様を見てベーションがほくそ笑む。


「バカは貴様だ。魔法の壁といっても前にしかないのだろう?」


 ベーションの使ったプロテクションの魔法は自分の前に壁を張る魔法である。当然その他の部分はがら空きであった。


「なんじゃとぉ、うわぷっ!?」


 そしてベーションの頭上から大量のウンコが降り注ぎ、ベーションにのしかかった。そして大量のウンコはベーションにまとわりつくとベーションの口から鼻から侵入していった。


「フハハハハ! 派手なパフォーマンスで目を引き、本命の攻撃の陽動としたのだよ。これも全て我が主の作戦通り!」

「お、おげええええっっっ!?」


 そしてベーションは口から鼻から侵入したウンコに吐き気を催し盛大に吐く。集中力を失ったため、ベーションの張ったプロテクションが解除された。


「さぁ、お仕置きの時間だベイビー」


 ウニーはクソまみれのベーションの頭を掴み、無理矢理立たせる。そして怒涛のラッシュを放った。


「うおおおお! ブリブリブリブリブリブリブリブリブリブリブリブリブリブリブリブリブリブリブリブリブリィ゙ィ゙!」


 ウニーの放つ拳は全てベーションの口の中へと放り込まれ、ベーションは否応なしに大量のウンコを口にする。


 そして当然そのウンコは寄生虫の卵がびっしりであった。大量のウンコを食わされ、ベーションはその臭さと精神的なダメージに気を失う。寄生虫が孵化し、餌食となるのは時間の問題であった。


「お前の敗因はただ一つ。私をウンコと思って侮った。ただそれだけよ」


 ウニーは気絶して倒れたベーションを指差し、そう宣言した。


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