第16話 強化赤痢アメーバの恐怖
「ふふん、ちゃんと上手くやったようだなメルディナ」
「はい、ソロモン様。全て手はず通りに行いました」
宿屋の一室で俺はベッドに腰掛けたままメルディナからの報告を受けた。メルディナはあの俺が拷問にかけた女騎士のことだ。オクシオーヌからメルディナを譲り受けてからの2週間、俺はひたすらこの女をわからせてやったのだ。
今じゃこの女は完全に俺に屈伏し、俺の言いなりである。なにせメルディナには寄生虫ダキムが寄生しており、俺の合図一つで激しい快楽に支配されてしまうのだから。
さらに寄生虫ダキムを通し、俺はメルディナの行動もある程度把握できる。それによりメルディナは俺の指示通りに動いたと確信が持てたのだ。
「しかしこの小瓶、何が入っていたのですか?」
「お前がそれを知る必要はない。だが飲んだところですぐに何か起きるわけじゃないけどな。ところでお前、まさかその液体を舐めたり身体に付着させたりしていないよな?」
知ってたらさすがに葛藤しただろ。何せ元お仲間を売り渡すことになるわけだからな。見当はついてても知らなきゃまだ自己弁護の言い訳が可能だろう。
「はい、それは大丈夫です。見つからないようにするの大変だったんですよ?」
「そうか、ならいい。もし身体がおかしくなったらちゃんと言えよ」
今や俺のクソ魔法のレベルは早くも7に到達している。寄生生物除去という医者も羨む魔法を身につけたからな。寄生虫どころか細菌やウィルスまで除去できちまう。これなら真っ当に生きることも可能だったわけだが今更だな。
「はい、ありがとうございます。それでその、ご褒美をいただきたく……」
メルディナは頬を染めてモジモジと身体を揺する。おいおい、真昼間から俺にサカれってか?
快楽墜ちしてからというもの、こいつの性欲はなかなか凄い。騎士だけあって体力あるよな。
「やれやれ、あまり大きな声を出させると困るからな。その口を塞いだまま狂わせてやるよ」
「~~~~~!!」
俺はメルディナの唇を強引に奪うと、寄生虫ダキムに命じた。
メルディナを快楽地獄に落とせ。
そう念じた瞬間メルディナは身体をよじらせ俺の首にしがみつく。
そして俺は猿になった。
「ふぅ、ついやっちまったぜ」
事が終わる頃にはメルディナはベッドの上で白目を向いていた。脳がオーバーヒートして気絶したのである。まぁ、一分もしないうちに目覚めるはずだが。
「う、ううう……」
しばらくするとメルディナが目を覚ました。だが頭がまだはっきりしないのかぼんやりしている。
「はぅ……」
余韻に浸っているのかもしれんな。さて一応このブルーレットの街でやることはだいたい終わった。効果が現れるのに2~4週間と幅があるが、一度蔓延すれば原因の追求や対策にそれなりの時間を要するはずだ。
他にもとっておきの寄生虫を仕込んでおいたが、あれは果たして寄生虫なのかと思えてしまったな。
それよりここにしばらく滞在して思ったんだが、この世界には獣人とかエルフとかいないんだろうか?
いや、獣人はいるか。リーウなんて顔がライオンだし他にも猫の獣人らしき仲間も見ている。もしかして獣人はこの世界じゃ魔族に属しているのか?
「なぁメルディナ。少し気になったんだが、この世界には亜人、たとえばエルフとかドワーフとかそういう種族はいないのか?」
亜人という言葉にメルディナは少し俯いて顎に手を当てる。多分この世界に無い言葉なのだろう。
「亜人とは人間以外の人型種族のことでしょうか?」
「そうそう」
メルディナはむくりとベッドから身体を起こす。そして少し言いにくそうに上目遣いで俺を見た。
「人間以外の人型種族は全て魔族にカテゴリーされてます。その、魔族ですから捕まれば奴隷か殺されるのが普通です」
「物騒だなおい。人間様が一番偉いっていう宗教でもあんのか?」
ファンタジー宗教あるあるだな。人間様が一番偉いとか神に選ばれた種族であるとかさ。
「はい。絶対神ボットンブーリ様を崇めるブリブリ教の教義にありますね。絶対神たるボットンブーリ様の加護を得る人間こそがこの世界の統治者であり、他の種族には支配される権利があると。人間に殺されたり隷属することで彼らはボットンブーリ様に認められ、安息の地へと辿り着けるという教義がございます」
想像の斜め上をいかれたわ。隷属や殺すことまで正当化してやがるのか。じゃあ認められなかったらどうなるんかね?
「胸糞わりぃな。お前はもう俺に忠誠を誓った。ならお前もボットンブーリとやらの教えは捨てろ。いいな?」
マジでクソ宗教じゃねぇか。もしこの考えを捨てられないならこいつはもうただの性欲処理便器だな。
「はい、もちろんでございます」
メルディナは俺の問に即答してくれた。正直ホッとしたわ。散々調教しまくったけど、相当な美女だから情が移っちまってるんだよな。素直になってからというもの、随分可愛く見えてしまうのだ。
「よし、メルディナよ。この街でやることは終わった。後はお前が騎士団を退団するだけだが……」
すっかり忘れてたわ。こいつが一度騎士団に顔を出した以上再び消えるのは不自然だろう。そうなると退団させた方がいい。
「それはもう済ませました。これからはソロモン様のために生きます。末永く可愛がってくださいませ」
メルディナはうっとりした表情で俺に告げる。これはもはや身も心も完全に俺のものになったと見ていいな。メルディナは美人だしナイスバディだし最高の拾い物だったわ。
「もちろんだ。其の言葉忘れんじゃねーぞ?」
「はい、ソロモン様」
メルディナが恍惚の笑みを浮かべる。やべぇ。むっちゃ可愛いわ。これってつまり恋人同士ってことでいいよな?
初めてできた彼女がこんな美人でナイスバディとか最高過ぎるだろ。
俺、魔王軍に入って良かったと心底思えたわ。
* * *
それから3週間が経とうとしていた。ブルーレットの街では謎の集団腹痛が流行り、治癒院では連日患者が運び込まれている。更に騎士団の方では発熱を伴う者が現れたりとその対応に苦慮していた。
「まいったわ、胃薬だけじゃ対応しきれない。アンチドーテの魔法で毒素を抜いても全快しないなんて」
「酷い熱を出してる人もいるわ。なんかみんな白いものが付着した血便をしているらしいし、なんらかの病原体に感染したとしか思えません」
赤痢アメーバ感染症。致死率そのものはそう高くないが、腹痛や吐き気を引き起こすこの感染症は不衛生な水を媒介に広がることがある。
通常であれば寄生されても発症しないことも多く、アメーバが血流に乗って
そしてこの赤痢アメーバ感染症はこの世界においては原因が特定されておらず、治療法も確立されていない病気である。
そのため地球においてさえも年間数万単位の死者を出して来た赤痢アメーバ感染症はソロモンのクソ魔法によりさらに高い致死率を誇る死の病へと凶悪化したのであった。
そして多くの兵士や騎士達が病に倒れる中、最悪の報せが騎士団に届いたのである。
「騎士団長、大変です! 魔王軍四天王の一人ホルヌスの部隊がこの街に近づいています!」
「な、なんだと……!」
病室のベッドで横たわる騎士団長の顔色は吐き気も相まってさらに血の気を失うのであった。
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