第4話 冒険者になるぞ

「では達者で暮らすがいい」

「あの、この世界には冒険者ギルドとかそういうのないですか?」


 こういうときのは定番はやはり冒険者になることだろう。魔物がいるならそういうのを退治したりする仕事だってあるはずだ。


「冒険者になるつもりか。それもいいだろうな。それならここから歩けば1時間程で着くだろう。方向はあっちの方だ。人に聞きながら行け」


 歩いて1時間は結構遠いな。まぁ城があるくらい大きい街なんだから広くて当たり前だよな。俺は城の外まで案内してくれた神官の指さした方角を眺めた。ここからだと大きい建物は見えないな。案内してくれればいいが、そこまでは望むみすぎか。


「わかりました、ありがとうございます。それと、金貨5枚はどのくらい生活できる金額なのでしょうか」


 貨幣価値がわからんのは困る。10万円金貨なんてのもあるけど、この金貨にどれだけの価値があるのか不明だ。1枚あたりそんな大した重量もないし、大きさ的には500円硬貨くらいだ。


「金貨5枚あれば平民なら一ヶ月は余裕で食っていけるな。金貨1枚は銀貨だと100枚に相当する。角銀貨なら10枚だな。そして銅貨なら1000枚だ。この街の宿で一泊二食付きなら銀貨10枚あれば結構いい宿に泊まれるだろう」

「結構な大金ですね。ありがとうございます」


 うーん、感覚的に銀貨1枚1000円くらいなのだろうか。それだも銅貨1枚100円か。それ以下の貨幣はないのか?


「銅貨の下ってないんですか?」

「あるぞ。銭貨というんだが10枚で銅貨1枚分だ。元々は青銅貨という名前で今の銅貨は白銅貨と呼ばれていたんだが紛らわしくてな。それで銭貨と呼ばれるようになったんだ」


 ほほう、白銅貨って100円玉だし青銅貨といえば10円玉だな。わかりやすくていいかもしれん。


「色々ありがとうございます。では」

「ああ、達者でな。強く生きろよ」


 俺は親切な神官に別れを告げ、冒険者ギルド目指して歩き出した。財布は持っているので金貨はそこに入れておくとして、日本の硬貨は使えないよな。この世界で売れば少しは金になるかもしれん。そういうのを扱っている店がないか後で探してみるか。





 そして人に聞きながら歩くこと1時間。俺は赤い屋根の比較的大きな建物の前にいる。看板も出ているが、残念なら文字は読めなかった。そういや言葉が通じているのも不思議な話だな。助かるから別にいいけど。


 俺はドアを開けようとドアを引いた。しかし開かない。なんでだ?

 もしかして本日休業?

 いやまさかな。もう一度チャレンジしてみるか。気を取り直し、もう一度ドアノブに手をかけようと手を伸ばす。すると俺の手は空を切り、ドアが開いた。


 そう、なんとこのドアは内開きだったのだ。そういや世界で外開きのドアは日本くらいだっけ。外国だと殆どが内開きだ。


「邪魔だ」

「あ、すいません」


 やたらとガタイの大男に睨まれ思わず道を開ける。金属性の鎧を着込んでまさに冒険者って感じだな。俺もいつか名のある冒険者になってやるぜ。


 俺は強くなった自分を夢想し、意気揚々と建物自体の中へと入った。建物の中は長椅子と机が並んでおり、冒険者達がそこに座って話し込んでいる。料理の注文も受け付けているらしく、奥のカウンターの右半分くらいはオープンキッチンになっていた。


 そして左半分のカウンターには受け付けの人が座っており、冒険者とやり取りをしている。受け付けは4箇所あり全て女性が担当しているようだ。ちょうど一つ空いているしそこへ行こう。


 俺は空いている受け付けへと足を運び、受け付けのお姉さんに話しかけた。


「すいません、冒険者登録をしたいのですが」

「はい、登録ですね。マイカードはお持ちですか?」

「はい、持っています」


 俺はポケットからマイカードを出して受け付け嬢に差し出した。マイカードはサイズ的に地球のカードより大きく厚みがある。そのため財布には入らなかったのだ。


「あの、失礼ですがこれはどこの国の言葉でしょうか」


 そういや言語違うから読めないよな。しかしこのマイカード、どんな仕組みなのか全くの謎だな。これって相当凄い技術だと思うんだが。


「えーっと、日本という異世界にある国の言葉ですね」

「異世界? まさか王国の英雄召喚により呼び出された方ですか?」


 英雄召喚というのか。なるほど、確かにみんな凄いクラスだったな。それならなんで俺だけこんなクソみたいなクラスなんだよ。納得いかねぇぞ。


「ええまぁ、そんなとこです」

「そういえば変わった身なりをしていますね。英雄召喚で呼び出された方は普通なら王国に仕えるものですが別にいいでしょう。では手続きを進めますね」


 受け付け嬢は何も聞かず手続きをしてくれるようだ。個人のことには深入りしないのはマナーだよな。


「リードランゲージ」


 名前からして読解魔法なのだろう。どうやら内容を理解したらしく、受け付け嬢の頬が何かを堪えるように膨らんでいく。何かというより笑いだよな、間違いなく。


「あははははは、な、なんなんですかこのクラスは。聞いたことないですしなんか凄く下品です!」


 そして我慢はすぐに限界を迎え、爆笑。やっぱりこうなるんかい!


「あの、手続きを……」

「あ、失礼いたしました。文字は書けますか?」

「無理っす」

「わかりました。マイカードの情報を元に代筆します」


 受け付け嬢は羽根ペンを走らせ、俺の登録用紙を代筆してくれた。しかしリードランゲージって魔法は便利そうだ。これがあれば文字の読み書きも覚えられるかもしれない。


「登録は終わりました。マイカードの更新をお願いします」


 代筆が終わると受け付け嬢はマイカードを俺に返却する。このカード更新できるのか。めっちゃ便利だな。


「更新ってどうやるんですか?」


 うん、嫌な予感しかしないけどな。


「額にカードを当て、更新の呪文を唱えるんです。呪文はボットンブーリボットンブーリ、偉大なる神よ我が証は更新された。新しき証をここに刻みたまえ、です」


 なんでこの世界の神様はそんな名前名乗ったんだよ。勘弁してくれ。

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