第2話 最低のクラス
「ボットンブーリボットンブーリ。偉大なる神よ我が証をここに刻みたまえ」
仕方なくカードを額に当て呪文を唱えるとカードが茶色い輝きを放つ。なんか全然神々しくっないんだけど!?
「さ、マイカードに刻まれた君達のクラスを俺に教えてくれ。自己紹介も兼ねてね」
「じゃあ俺からいくぜ。俺は狩井海斗17歳だ。そのクラスってやつはオーラバトラーだな」
背の高い男は狩井海斗というのか。ゴツい身体をしてるだけあってパワータイプっぽいクラスなんだろうな。
「オーラバトラーか。気という力を身体に纏わせて戦う戦士だね。とても強力なクラスだ、おめでとう」
当たりだったのか下剤王子は笑顔で海斗に拍手を送る。それに合わせて俺以外の三人も拍手を送った。それを見て俺も慌てて拍手を送った。
「じゃあ次は僕だね。僕は藤間悠。16歳だから海斗さんより一つ下だね。僕のクラスはグランドマスターって書いてあるんだけど、もしかして相当凄いやつ?」
背の低い男は藤間悠か。俺の身長が168でその俺より顔半分くらい小さいな。てことはこいつ160ないのか。でもよく見るとそこそこ顔立ち整ってやがるからなんかムカつくな。しかしグランドマスターか、めちゃくちゃ凄そうだ。
「ぐ、グランドマスターだって!? それは凄い。この世界のありとあらゆる魔法に適正があって武芸にも秀で、強大な資質を持つクラスだ。このクラスになれた者は歴史でも数えるほどしかいない。素晴らしい!」
下剤王子は喜びを隠しきれないのか満面の笑みを浮かべて拍手を送る。他の皆も凄い凄いと褒め称え、拍手を送っていた。なんだよその物語の主人公みたいなクラスは。それは俺の役割なんじゃないのかよ。くそ、俺のクラスはなんだろな。きっとそれを越えるすげぇやつに違いない。
期待を込め、おれは自分のマイカードに目を向けた。そこには自分のキラキラネームが漢字で書かれており、年齢や前科数という項目ある。そしてクラスに目をやると俺は愕然とした。
……な、なんじゃこりゃあっ!
「私は大木美奈代です。16です。クラスはアークメーガスて書いてありますね」
「アークメーガスは女性魔道士の最上位クラスだね。素晴らしい才能だ、おめでとう」
わざわざ女性魔道士と男性魔道士でクラス別れてんのか?
アークウィザードでいいじゃねぇかややこしい。みんなはいいよな、なんか凄そうなクラスだし。
「えへへ、ありがとう」
美奈代は大木という性の割には小さい。でも胸はデカいな。美奈代じゃなくて胸代だなこりゃ。くぅっ、顔も可愛いしあの胸を揉みたいぜ!
他の皆が拍手を送る中、俺は美奈代の胸に視線が行っていた。そのせいで白い目を向けられているのにきづいていなかった。
「私は朝凪志津香。18だからこの中じゃお姉さんかしらね? クラスはセイントって書いてあるんだけど、聖職者かしら。ちょっとガラじゃないわね」
やたらと背の高い女は朝凪志津香というのか。海斗よりでけぇな。俺より頭一つ分大きいから190近いんじゃないか?
スタイルもバツグンだがそれ以上に筋肉が凄いな。腕なんか俺より太いぞ。セイントというのはきっと素手で相手を殴り倒すクラスに違いない。
「セイントっていうのは神聖魔法の使い手の中じゃ伝説級だね。特に女性の場合は聖女と呼ぶんだけど、この国に現れるのは150年ぶりだ。実に素晴らしい!」
「せ、聖女ぉっ!? いや、私なんかより美奈代の方が聖女感あるんだけど。ほら、私って格闘技やってるから相手ぶっ倒すほうが得意だし」
「そんなことないよ! うん、きっと人柄がいいからだと思うな」
下剤王子や周りがもてはやすと、志津香は照れくさそうに笑う。まぁ、結構美人だからありなんかな。ああ、それにしてもみんなが凄いクラスになってて羨ましい。俺の番が来るのが怖いぜ。
「さぁ、最後は君だ。色々醜態をさらしてはいたけど君にも期待しているよ。さぁ、君のクラスを教えてくれ」
下剤王子が期待の目を向ける一方、他の四人はジト目で俺を見ていた。なんだこの疎外感は?
「俺は草井だ。16歳だが高校2年生だ」
「下の名前も言えよ。みんな言ってるだろ。空気読めよ」
俺の自己紹介に海斗が横槍を入れる。あー下の名前言いたくねー。絶対笑われるやつじゃんかよ。
「いやまぁそうなんだけどよぉ」
「貸せ。俺が読んでやる」
俺が渋っていると、海斗が俺にツカツカと歩み寄りカードを強奪する。
「あ、なにすんだ!」
「ちゃんと返してやるから待てよ」
俺はカードを取り返そうと手を伸ばすが顔を遮られて近づけない。そうしているうちに海斗が俺のカードを読み上げる。
「草井ひとりもの? なんて呼ぶんだよこれ。教えろよ」
あー、やっぱ読めねぇよな。クソッ、なんで俺の親はこんな名前にしたんだよ。
「……そろもん」
「きこえねーよ」
仕方なく小さい声で名前を教えるが、海斗は眉をひそめて聞き返す。多分耳を疑いやがったな。
「ソロモンだよ!」
逆ギレするように俺は声を張り上げた。あーちくしょう、恥ずかしい。
「はぁっ!? どうやったらそう読めるんだよ。なぞなぞかよ」
「もしかして一人をソロって読んだ説が濃厚だったりする?」
海斗が嘲るように笑い、憐れむような視線を俺に投げつける。悠の奴は勘がいいのか正解に辿り着きやがった。
「キラキラネームかよ」
俺が黙っていると、正解を確信したのか海斗は半笑いだ。ちくしょう、人の名前を馬鹿にすんじゃねぇよ。だがそれよりクラスだよな。ああ、公開処刑待ったなしだ。
「キラキラネームはソロモン君? が悪いわけじゃないから可哀想だよ。それよりクラスを答えてカード返してあげよ?」
今名前を疑問形にしなかったか?
でも養護は嬉しい。美奈代ちゃんの方が聖女っぽいよな。ヒロインポジってやつか。
「ああ、そうだな。悪かった。えーとクラスは……なんじゃこりゃ!」
海斗は一応口だけで謝ったが、俺のクラスを知って吹き出した。その様子に周りは興味津々でなになに、と教えるようにせがむ。
「わりぃわりぃ。発表しまーす。ソロモン君のクラスはなんと、クソ野郎でーす!」
海斗がノリノリで笑いながら俺のクラスを発表した。まさに公開処刑。みんな発表を聞いても最初は笑いを堪えていたんだけどねぇ。何を思ったのか思わず復唱しやがった。
「く」
「クソ野郎!?」
こうして笑いのダムは決壊した。
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