第九話
揚羽と香奈と遊んだ翌日、ここは真也のクラスの教室である。
「着物を着た女の子?」
真也は揚羽が見たという着物の女の子の幽霊の事を麗華に話していた。
「ああ、妹の友達が見たって言ってんだけどよ、何か知らねえか?」
「んー……」
麗華は自身の席で頬杖をつきながら考えている。
「……悪いけど、思い当たる節は無いかも。」
「そうか……」
少し残念そうな表情の真也。
「でも、服装を考えると結構古い霊かもしれないわね……私も調べてみるわ。」
「そうか、サンキューな。」
話を聞いて協力を約束する麗華、対して真也は軽い笑みを浮かべてお礼を言う。
「ねえ、何か仲良さそうじゃない?」
「やっぱりあの二人って……」
そんな二人を見て噂話を始めるクラスメイト達、しかし、当の本人達は知らない様子だった。
「みんな席につけー、HRを始めるぞー。」
担任の教師の指示によって生徒全員が着席する。
「で、あるからして~……」
その後、HRが終わり、1時限目の授業が始まった。
(……確か、あの辺にいたって言ってたよな……)
真也は幽霊がいたという校庭の真ん中辺りを見つめていた、しかし、真也には何も見えないようだ。
一方その頃、揚羽も自身の教室で授業を受けていた。
「……」
揚羽も真也と同じように幽霊を目撃した校庭の真ん中にチラッと目を向ける、しかし、幽霊は見えなかった。
「……フウ……」
揚羽は幽霊が見えなかった事で安堵のため息をつき、再び黒板に目を向ける、しかしその時、揚羽は教室のドアに違和感を感じ、目を向ける。
「……ヒィッ!!」
その瞬間、揚羽は怯えたような悲鳴を上げ、椅子から転げ落ちた、先日見た着物の女の子が教室のドアのガラスから覗いていたのだ、ガラスは大人が教室を覗き込める程度の高さと大きさであるため、女の子の身長では覗き込める筈がないのだ。
「西野さん……どうかした?」
急に揚羽が転げ落ちたので、教師はキョトンとした様子で声を掛ける。
「ハァ……ハァ……」
揚羽は尻餅を着いたまま冷や汗をかき、呼吸を荒らげている。
「大丈夫? 揚羽ちゃん。」
クラスメイトの女子が揚羽の手を取る。
「う……うん、ありがとう。」
再び席に座る揚羽、その後、再び席に戻り、教室のドアに目を向けると、女の子はいなくなっていた。
そして、その日の授業も終わり、真也は帰宅の準備をしていた。
(学校ん中色々見てみたが……結局それっぽい奴は見つからなかったな……)
「真也くん。」
真也がランドセルを背負った時、麗華が話しかけて来た。
「何かわかったのか?」
二人は女の子の情報を話しながら教室を出る。
「うん、校長先生に聞いたんだけど、昔この辺で一人の女の子が行方不明になっているらしいの、その女の子の特徴が一致していたわ。」
「なるほどな……だとすると、そこまで危険性は無さそうだな。」
「……」
楽観的な意見の真也に対し、深刻な表情の麗華
「どうかしたか?」
「そこまで楽観視はできないかも。」
「……そうなのか?」
麗華の話によると、死後成仏できずに長い間彷徨った霊は邪気に侵され、悪霊となって生きている者に災いを振りまく可能性が高いらしい。
「かなり昔の出来事らしいから放置は出来ないかも、時間が経てば経つほど邪気が溜まって危険な悪霊になっていくから……」
「そうか……」
真也の表情が少し険しくなる。
(もっとしっかり探す必要があるかもな……)
「ところで……」
麗華は真也に対して疑問を持つような視線を向ける。
「なんだ?」
「どうしてその女の子の幽霊を追ってるの?」
「……それは……その……」
立ち止まる二人、真也は言い辛そうにどもっている。
「危険な霊だったら……その……妹や……揚羽が危ねえかもしれねぇから……な。」
恥ずかしそうに視線を逸らしている真也、顔もやや赤くなっている。
「……フフッ」
「……なんだよ。」
麗華の口から軽い笑いが漏れ出し、対して真也は少し恥ずかしそうに顔を顰める。
「真也くんがそんな事言うの、意外だなって、家族の事……大事にしてるんだね。」
優しい笑顔の麗華。
「……フン。」
真也はやや赤い無愛想な表情のまま歩き出し、麗華もそれについて行く。
「……そう言えば、その幽霊を目撃した女の子って、どのクラスにいるの?」
真也の顔を覗き込みながら問いかける麗華。
「なんでだ?」
「その子から、詳しく話を聞いておきたいから。」
「うーん……クラスは知らねえんだよなぁ……2年だし……」
真也は頭を掻きむしりながら考える。
「そっか……2年生だと、もう授業終わってるよね……」
麗華も顎に手を添えながら考えている、しばらく二人で考えていると、真也が何かを思い出したようだ。
「家に来るか? ひょっとすると、遊びに来てるかもしれないぜ。」
「じゃあ、お邪魔するわ。」
真也の家に行く事を決めた麗華、そんな二人を同級生の女子3人が曲がり角から覗き込んでいた。
「ねえ聞いた?」
「聞いた聞いた、家にお邪魔だって。」
「もうそこまで進んでたんだ……」
二人の会話を聞いて上機嫌な様子でヒソヒソ話す同級生達、しかし、肝心の二人にはまたしても聞こえてないようだった。
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