第三話
「起立、礼!」
「「「ありがとうございました!」」」
授業終了のチャイムが鳴り、真也のクラスメイトも一斉に帰宅する。
(やれやれ、学校ってのは本当面倒だな……)
真也がため息をつきながら帰路につこうとしたその時だった。
「お兄ちゃーーん!!」
「ん?」
揚羽と香奈が切羽詰まった様子で走って来た。
「どうした?」
「大変なの、実は……」
香奈は先程あった事を話し始める、10分ほど前、香奈が帰宅しようとした時の事である。
「……?」
突然廊下の奥に目をやる香奈。
「返してよぉ……」
「やだね!」
「取り返してみろよ、ホラホラ!」
「あいつらまた……」
どうやら、朝揉めた男子グループがまた揚羽を虐めている様子だった、香奈は虐めを止めようと走り出す。
「いい加減にしなさいよあんた達!!」
「来たな。」
「へへへ……」
間に割って入る香奈、しかし男子グループは香奈に対して意地の悪い笑みを浮かべる、男子グループの一人の手には、揚羽の物と思わしき可愛らしい筆箱が握られていた。
「その筆箱揚羽ちゃんのでしょ! 返しなさいよ!」
「やなこった!」
男子グループの一人は筆箱を背中に隠す。
「返さないと、お兄ちゃんに言いつけるわよ!」
男子を脅す香奈、しかし、男子達はニヤニヤと笑いながら互いに顔を見合わせる。
「いいぜ、言いつけてみろよ。」
「え?」
予想外の返答に戸惑う香奈、すると筆箱を持っていた男子が他のメンバーに目配せをし、目配せをされた男子が筆箱を受け取って走り出す。
「あっ!!」
「筆箱を返してほしかったら真也を2丁目の旧校舎まで寄越しな!」
「先生にチクったりしたらバラバラにぶっ壊すからな!」
他のメンバーも同じ方向に走りながら叫ぶ。
「……という訳なの。」
「……あんの野郎ども……」
話を聞いて顔を顰める真也。
(……2丁目の……旧校舎……)
その会話を偶然近くで聞いていた麗華、麗華は血相を変えて靴を履き替え、急いでいる様子で帰路につく。
「あの筆箱、揚羽ちゃんの大切な物らしいの、お願いお兄ちゃん、取り返してあげて!」
「……」
『お願いアル、手を貸して!』
香奈のお願いに、真也は前世の事を思い出していた、困っている村人を助けて欲しいと懇願してきたセリカの事を。
「……ったく、しょーがねえな。」
真也は頭を掻きむしりつつ承諾した、香奈はパアッと明るい顔になる。
「……だめ!」
しかし、オドオドしていた揚羽は突然真也の腕を掴む。
「?」
「揚羽ちゃん?」
「あいつら……真也君に何か罠を仕掛けるつもりだと思う……それに、旧校舎……危ない所だから……」
どうやら揚羽は真也の身を心配している様子だった、しかし……
「あっ……」
真也は掴まれた腕を乱暴に振り払う……が、すぐに揚羽の頭を優しく撫でる。
「心配すんな、俺に任せろ。」
揚羽は数秒俯いていたが、コクリと頷いた。
「それじゃ、旧校舎まで行くぞ、案内しな。」
「うん!」
旧校舎に向かって歩き出す3人。
一方その頃、先程の男子グループは旧校舎を訪れていた。
「ここが旧校舎か……」
そこは今時珍しい木造の古びた校舎で、何故か窓や玄関は中が見えないように木の板で封鎖されていた、設置されている時計は現在時刻とは違う時間を指しており、止まっている事が伺える。
「おい、お前らちゃんと持ってきてんだろうな。」
「おうよ。」
「この通り。」
男子グループが持って来たのは幽霊に扮する為の衣装だった。
「こいつでおびき出した真也を脅かして……」
「ああ、情けねえ姿を撮影してやろうぜ。」
「へっへっへっ……」
悪だくみを話し合った後、封鎖されてる門を乗り越え、旧校舎に入る男子達。
「……こうして見ると、不気味だな……」
「う……うん……」
しかし、メンバーの中の二人は旧校舎の異様な雰囲気に少々怖気づいた様子だった。
「ビビってんじゃねーよ、ほら行くぞ。」
しかし、リーダー格の男子は臆さず進む。
「けど、どうすんだこの板。」
玄関は木の板で封鎖されていた。
「抜かりはねえよ。」
リーダー格の男子は鞄からドライバーを取り出し、木の板のネジを外す。
「おい、肩車しろよ。」
「わかった。」
肩車して届かない位置のネジを外す、そして玄関を封鎖していた木の板が外れると、木の板の裏にはお札のような物がビッシリと張られていた。
「なんじゃこりゃ……」
「お……おい、ヤバいんじゃないか……これ。」
二人はその板を見て怖気づいていた、しかし……
「ハッ、どうせハッタリだろ、いいから行くぞほら。」
リーダー格の男子は構わず旧校舎に入っていく、残りの二人は互いに目を合わせて迷っている様子だったが、リーダー格の男子に着いて行った。
そして、男子グループが入って行った直後、止まっていた筈の時計が急に進み出し、旧校舎の異様な雰囲気はより強くなっていった……
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