小学生時代
第一話
アルゲルスが人間、
(しかし……)
学校に向かう途中、真也は自身の手を見つめながら思い出していた、この世界に転生したあの日の夜の事を……
その日の夜、真也が眠りについた時の事である。
「ここは……どこだ……」
真也は不思議な空間を漂っていた。
『……ルス……』
「ん?」
突然自分を呼ぶ声が聞こえ、真也は周りを見回す
『アルゲルスよ……』
「どこだ……? 誰だ……?」
真也が声の主を探して辺りを見回していると、突然眩い光が放たれた。
「……!?」
眩い目を瞑る真也、やがて光が収まると、平安時代の貴族のような和風の男と、古代ギリシャのような洋風の男が現れた。
「あんたらは……誰だ?」
『我はこの地を統べる神。』
和風の男は神を名乗った。
「神……だと?」
男の返答に驚く真也。
『そうだ、そして私は、君が元いた世界の神。』
洋風の男も、神を名乗る。
『今日は話したい事があって、お主の夢の中へ来たのだ。』
日本の神が説明する。
『まずは身を挺して勇者を守ってくれた事に礼を言おう、ありがとう。』
異世界の神は真也に対して頭を下げる。
「……別に手前の為じゃねえよ。」
真也はぶっきらぼうに答えた。
『わかっておるさ、それでも、君に助けられた事には変わりない。』
異世界の神は優し気な微笑みで話す。
『それで、お礼に君の願いを叶えようと思ってな。』
「願い?」
『君も願っただろう、もっと人間を知りたかった、と。』
「……ああ。」
物思いにふけるような表情の真也。
『だから私は君を人間として生まれ変わらせたのだ、同じ人間として共に過ごせるようにな。』
「……けどよ、それならなんで元の世界じゃねえんだ。」
『……それに関しては、すまなかった。』
異世界の神はバツが悪そうな表情で謝罪した。
「?」
『本当なら元の世界で生まれ変わらせる筈だったのだが、私の部下のミスで、誤ってこっちの世界に送ってしまったのだ。』
(……何してくれてんだよ、まったく。)
真也は不機嫌な顔になった。
『……やはり気に食わんか。』
『無理もないだろう、向こうの世界とは何もかも違い過ぎる。』
日本の神も真也の気持ちを察している様子だった。
『すまないが、生まれてしまった以上はどうにもできん、そこで、お主の力に制限を付けさせてもらった。』
日本の神は続けて話す。
「なに?」
『お主の魔法はこの世界では異質そのもの、闇雲に使ってはお主が生き辛くなってしまうからな。』
日本の神が言うには、真也の身体には4段階の封印が施されているという、勿論封印を外せばそれだけ姿と力が元に戻る、今は外せないようになっているが、必要な時が来れば自由に外したり、戻したり出来るようになるらしい。
『ただし、だからといって無闇に外してはならんぞ、封印を外せばそれだけ身体への負担が強くなってしまうからな、少なくとも子供の内は外す封印は1つだけにしておけ。』
「……一つ良いか。」
真也は何かに気付いたように日本の神に尋ねる。
『なんだ?』
「何故俺の力を奪わない、お前ならそうする事も出来るんじゃねえのか。」
『……その事か、簡単に言えばお主の転生は、我にとっては嬉しい誤算でもあるのだよ。』
「なに?」
『詳しく話したい所ではあるが、時間切れのようだな。』
真也がいる空間全体がまるで靄がかかるように歪みだした。
「!?」
『残念だが、我らはこれ以上夢の中にはいられない。』
『それではさようならだ、君の人生の幸福を祈る。』
二柱の神が真也に対して頭を下げると、空間は完全に消える、そして真也は夢から覚めたのだ。
(あいつらめ……勝手な事しやがって……)
「お兄ちゃーん!」
「ん? 香奈。」
真也の後ろからツーサイドアップの少女が駆け寄って来た、少女の名は
「もう、かわいい妹を置いて行くなんてひどいよ。」
「お前がいつも準備に手間取るからだろ。」
「女の子は色々と時間がかかるんですー!」
香奈はベーっと舌を出す。
「ん?」
真也は何かに気付いた、小学生男子3人が肩まで髪を伸ばした女の子に集まっているようだ。
「やーい、化け物!」
「妖怪女!」
どうやら男子グループは女の子を虐めているようだった。
「あいつら……」
香奈はグループに向かって走り出す。
「ちょっと、何やってるのよあんた達!!」
香奈は男子グループと女の子、女子の間に割って入り、男子グループを止める。
「なんだよお前、文句あんのかよ。」
「あるに決まってるでしょ! 寄ってたかって女の子を虐めて!」
「ちげーよ、これは虐めじゃなくて化け物退治だ!」
「はあ?」
男子グループの一人の言葉に、香奈は訝しげな反応を返す。
「化け物に味方するって事はお前も化け物だな!」
「妖怪め! 退治してや……」
男子グループの一人が掴みかかろうとしたその時、その男子の足元に空き缶が飛んできた、その場の全員が飛んできた方向に目を向けると、空き缶を投げた真也が歩いて来ていた。
「真也……!」
男子グループは明らかに真也に対して怯えている様子だった、香奈は虐められていた女の子の手を取って真也の後ろに隠れると、男子グループに対してべーっと舌を出す。
「……」
真也は一言も話さないが、その眼は男子グループを威圧するように睨んでいた。
「クソッ」
男子グループは悪態をつくと、逃げるように歩き去った。
「フン。」
「大丈夫?」
真也は男子グループを鼻で笑い、香奈は虐められていた女の子に話しかける。
「う……うん……ありがとう。」
女の子は俯いたまま二人にお礼を言う。
「どういたしまして。」
真也は素っ気なく言った。
「なんであいつらに虐められていたの? なんか化け物だのなんだのって……」
香奈は女の子に対して、虐められていた理由を聞をきいた。
「それは……その……私が……見えるから……」
おどおどした様子で話す女の子。
「見えるって、何が?」
「……お化け……」
「え?」
女の子の返答に、素っ頓狂な声を上げる香奈。
「……私……学校で幽霊を見た事があるの、それを話したら……」
「……成程な。」
真也の素っ気ない返答に驚く女の子。
「……怖くないの?」
「別に。」
元が元だからなのか真也も幽霊がはっきり見える、しかし、そんじょそこらの幽霊なら威圧だけで追い払えるので真也にとって幽霊は特に怖くも何んともない存在であった。
「私のお兄ちゃん強いのよ、ホラー映画を見ても全然怖がらないんだから!」
えへん、とばかりに胸を張る香奈、事実真也はホラー映画を見てもだいたい寝ている、因みに好戦的な種族の性なのか、アクション系やバトル系にハマっているらしい。
「んな事はどうでもいいだろ、早く行くぞ。」
「あ、ちょっと待ってよ!」
香奈と女の子は学校に向かって歩き出した真也に慌てて付いて行く。
「あ、そうだ、私は香奈、祭堂香奈だよ。」
「私は……
互いに自己紹介する香奈と揚羽。
「……」
そんな一緒に歩く三人を物陰から見つめる小さな影、真也はその視線に気付いたのか、物陰に一瞥する。
「どうしたの? お兄ちゃん。」
そんな真也に不思議そうな表情を向ける香奈と揚羽。
「……いや、何でも。」
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