二十四話 舞踏祭と終業式と
寮の談話室。
カーヴェア学園に通う生徒にとって、一年の最後の山場である魔法試験が終わった。
つい先ほど試験から解放された生徒たちは、今は思い思いに羽根を伸ばしていた。
シトラスはミュール、メアリーに加えて、レスタとエヴァと試験の出来栄えについて話し、盛り上がっていた。
「あーー、月光花いれるの忘れてた。あー、くそっ! なーんか忘れてると思ってたんだよッ」
「ミュールは抜けてるなー」
「……いや、お前には言われたくないわ、シト。お前魔法史の解答欄間違えてたろ」
「……道理で問題数が合わないわけだよね」
他人事のようにしみじみ頷いているシトラスに、ギョッとするレスタは、
「えっ、それ最後に気づいたのかシト? どうしたんだよ試験? あの試験そんなに時間余らなかっただろ?」
魔法試験は一年間の学習の総決算として、その試験範囲が広いことが特徴的である。
限られた時間の中で、その膨大な範囲から出題された問題を解く必要があるため、試験中は羽根ペンの音が絶えず教室に響き渡る。一年で最も腹痛を感じる生徒数が多い時間でもあった。
呆れた様子でシトラスに親指を向けて、補足するミュールは、
「こいつ教師に交渉したんだよ」
「え? まじどうやって?」
驚くレスタに、はにかみながら頭をかいたシトラスは、
「ん-ー。ここから回答一個ずれてます、って試験用紙に書いて、あとは先生のところに言って拝み倒した、らなんかいけた」
頼んでみるものである。
魔法試験は各担当科目の教師の裁量が大きい。
一部科目では追試、追加レポートによる救済措置などが存在する。
エヴァは無難に魔法試験を乗り切ったようだが、シトラス、ミュール、レスタの三人は手ごたえがあまり芳しくない様子だ。
メアリーはそういう次元に生きておらず、どこ吹く風で隣に座るシトラスに持たれかかっている。もはや周囲には見慣れた光景である。
レスタがエヴァに問いかける。
「試験評価って優、良、可、不可だっけ?」
「そうよ。結果は試験から二ヶ月後に通知されるみたい」
「これ不可ならどうなるんだ? 三か月には夏季休暇だろ?」
カーヴェア学園は六月で終業式。
それから二ヵ月間の夏季休暇に突入する。
「二年生から受けることになる専門課程と一緒よ。直接的にはどうもならないわ。ただ卒業後の軍役に影響するみたいだし、退役後の就職にも影響するみたいよ」
この不安と付き合いながら舞踏祭で踊ることを嘆くレスタは、
「ひぃえ~。じゃあ来月の舞踏祭は、ハラハラしながら踊らなくちゃいけないのかよ~」
「そうなりたくないのなら、日頃から予習復習をしっかりと心掛けることね」
ぴしゃりと言い放つエヴァに、男三人衆はぐうの音も出ず閉口するばかりであった。
「これで後は来月にある舞踏祭が終われば、四大行事も終わりだね」
しみじみと呟くシトラス。
周りもうんうんと、頷いている。
九月の入学式、十月、十一月の新入戦。
歳を跨いで二月の対抗魔戦、三月の魔闘会、そして今月の魔法試験。
時が経つのはいつの時代も早い。
残すは、五月の舞踏祭、六月の成績発表と終業式。
ミュールはうきうきした様子で、
「再来月で学校自体が終わりだからな。一年生も今月含めて三ヶ月。これを乗り越えれば、二ヶ月間の夏季休暇だ。俺は今からもう休暇が楽しみだ」
「休暇って言っても、その間も実家には帰れないからな。ただ、その期間は王城の地下都市が学生に解放されるみたいだから、よければ行ってみないか?」
レスタの提案に身を乗り出すシトラス。
「地下都市!? いいね! 行こう!」
「まーた、お前は勝手に決めて……」
呆れた様子でシトラスに視線を送るシトラス。
「まずは目の前の舞踏祭ね。レスタ、分かってると思うけど、パートナーの私に恥を欠かせないでよね?」
「お、おう」
夏季休暇の話題で浮かれた様子を見せるレスタに、視線と言葉で釘を刺すエヴァ。
これから一ヶ月は通常クラスに加えて、ダンスの授業が舞踏祭前日まで行われる。
舞踏祭当日は、午前中はエスコートした異性と、午後からは自由にパートナーを変えて踊り続けるという学園行事である。
このダンスをきっかけに恋仲に発展する生徒が毎年おり、午前中のダンスはもちろん、午後からのフリーの時間は、気になる異性にアピールするチャンスであった。
特定の相手がいなくても、思春期真っ盛りの男女。
人前で恥はかくまいと、毎年多くの生徒が必死になって取り組んでいた。
◇
迎えた舞踏祭。
シトラスは中庭に訪れていた。ライラと出会うときのお約束の場所である。
紺色のダンス用のタキシードに身を包んだシトラスも様になっている。
その後ろには、シトラスより地味な同色のタキシードを身に纏ったミュールと、動きやすそうな赤いドレスローブに身を包んだメアリー。
さらけ出されたメアリーの健康的なデコルテと肩がなまめかしい。少女然としたところが強く残る顔立ちと、成長途中の体躯は瑞々しい可愛らしさがある。
「ま、またせたな」
シトラスたちが中庭に訪れて、ほどなくするとシトラスの待ち人が現れた。
腰に届くほどの長さをもった光沢のある黒髪、煌めく銀色の瞳、健康的な褐色の肌。シトラスより頭一つ高い長身。
普段は顔の布地で覆われてパーツが、今日ばかりは全てがさらけ出されていた。
普段は制服ローブに隠されている体の線が、この日はピッタリとしたドレスによって、そのスタイルの良さが遺憾なく発揮されていた。三歳年上のライラの体には新入生には出せない大人の色気があった。
総じて、野性味あふれる健康的な大人の女性である。
照れ臭そうに、もじもじと顔の横に流れる前髪をいじるライラ。ちらちらとシトラスを見ては、視線をそらし、まだ戻す、ということを繰り返していた。
「ライラ、綺麗だね。いつものクールな格好もいいけど、今日のドレスもステキだよ」
「ありがとう。シトもかっこいいよ」
どこからともなく聞こえてくる音楽。学園中に響き渡る音に乗せて、生徒たちはそのパートナーと思い思いに体を揺らす。
シトラスが周囲を見渡すと、誰も彼もがパートナーと手を合わせ、踊り始めていた。
中庭で踊っているのは、シトラスたちを除くと獣人の生徒ばかりである。
明確な決まりはないが、いつからか下級臣民の生徒は校庭、教室あるいは廊下で。上級臣民の生徒は魔法闘技場や、ダンスホールなど華のある場所で。獣人の生徒は人目のつきにくい中庭で踊る、という住み分けがなされており、今回の二人のダンスの場所は中庭で、ということはライラが指定していた。
少し離れたところには、紺のドレスに身を包んだブルーの姿も見える。
「じゃあぼくたちも」
「そうだな」
シトラスが手を差し伸べると、はにかんでそっとその手を取るライラ。
二人とも華麗なステップを踏んでいるとは、お世辞にも言い難かったが、二人は自分たちのダンスを楽しんでいた。手を取り、腰に手を回し、相手の体と密着させた状態でその体を揺らす。
その傍では、キレッキレの動きを見せるメアリーと、半強制的に動かされるミュール。
穏やかなシトラスのコンビの顔つきと異なり、メアリーと踊るミュールの表情は、まるで剣山の上で踊っているかのように必死の形相であった。
「ちょっ、ちょっ、あ"ぁ"ーー」
周囲の学生たちも音楽に合わせて、思い思いにパートナーと共に体を揺らしている。
ときおり休憩を入れて、ダンスは続く。
食事のための昼休憩では、普段通り食す男子生徒と、ドレスの線が崩れることを配慮して、ほとんど固形物を取らない女子生徒の姿が対照的であった。
昼休憩の後は、パートナーを変えてダンスは続けられる。
引き続き中庭で、今度はブルーと踊るシトラス。
ライラは今はミュールと踊っている。
メアリーはダンスに飽きたのか、ドレスが汚れるのも構わず、中庭の隅の方でしゃがみ込んでいた。
時折、光に誘われる蛾のように、パートナーを探す獣人の男子生徒が、勇気を出してメアリーに声を掛けるも彼女は無反応で、彼らの心をバッキバキにへし折っていた。
午後のダンスで、シトラスがブルーと何曲か踊っていると、途中からいつもはダンスホールや闘技場で踊っている上級臣民、イスト俱楽部に所属する生徒たちが、中庭へと押し寄せてきた。
目を丸くして驚く獣人の生徒たち。
見ると、ブルーの手を引いて固まっているシトラスの前で、膝を折っている二人の美少女。
シトラスの姉であるベルガモットと、年上の幼馴染であるヴェレイラ。
瞳の色と同じ浅葱色の女性用タキシードに身を包んだ姉と、落ちついた橙色の煽情的なドレスに身を包んだ年上の幼馴染。
ヴェレイラは膝を折って、なお視線がシトラスよりも高い。しゃがんで強調された彼女の胸は、今にも零れ落ちそうなほどであった。
「シト、次は私と――」
「いやいや、シト私と――」
膝を折った状態で、仰々しく手を差し伸べる二人にシトラスは、
「順番ね。今はブルーと踊っているから、ね?」
――そこで私に振るのッ!?
と尻尾を逆立てながら、目を見開くブルー。
目の前のシトラスに話を振られたことで、彼女にとって、この学園で関わりたくないランキングトップ十に入る、生徒二名の視線を集めることになった。
二人の視線に釣られて、周囲の視線も集まる。
ブルーは、逃げる兎のように、心底この場を走って逃げ去りたかった。
しかし、しっかりと右手はシトラスに握られ、彼の反対の手は、今も彼女の腰を優しく抱きしめていた。
無理やり振りほどいて彼を怪我をさせようものなら、瞬く間に殺されそう、などと現実逃避をするブルー。
ベルガモットとヴェレイラは、シトラスが抱きしめているブルーの姿を確認すると、
「仕方ない」
「順番だもんね」
と言って立ち上がると、二人はそのまま二人でペアとなって踊り出した。
シトラスは知らぬことであったが、二人は入学して以来、舞踏祭は同性の二人で、またはアンリエッタと組んで過ごしていた。
新入生の時点からずば抜けた成績を残した二人に、同性とだけ踊っている程度のことで目くじらを立てる者は、教師にも生徒にもいなかった。
顔色を真っ青にしながらブルーは、一曲を踊りきると、お手洗いッ! と叫ぶように言い残すと、ドレスとは思わせない俊敏さで、瞬く間に中庭を後にした。
「ブルーはもしかしてお腹でも痛かったのかな? じゃあ次は――」
一瞬心配そうな顔を浮かべたものの、笑顔で振り返ったシトラスに、
「――私だ」
「――私だね」
ベルガモットとヴェレイラの二人は笑顔を浮かべて同時に、その言葉を口にした。
「――は?」
「――うん?」
一瞬で吹き飛んだ二人の笑顔。
ピリッとした空気が二人の間で流れる。
それを肌で感じて、中庭に居合わせた生徒たちは一斉に生唾を飲み込んだ。
彼女たちに釣られて中庭に訪れたイストの俱楽部生たちにいたっては、この場から逃げ出そうとする始末。彼女たちには前科があった。
「先に踊るかレイラ。私は後でも構わないが」
「いや、いいよベルが先に踊って」
しかし、親友でもある二人は、再度笑顔を浮かべて譲り合う。
これに周囲の生徒も肩を撫で下ろした。
特にイストに所属する生徒にとって、二人のぶつかり合いが途轍もなく激しいことに、身に覚えがあったからである。
釣られて笑うイストの生徒たち。弛緩した空気が中庭に流れた。
――次に学園長であるネクタルによる校内放送を聞くまでは。
『次の一曲で最後だよ~』
魔法で拡散されている間延びしたネクタルの声が、学校中に響き渡る。
呑気な声でもたらされた剣吞な修羅場。
「レイラ。ここはシトの姉である私が先に踊るのが筋だろう?」
「ベル。この前シトの勧誘の件で貸しがあったよね?」
二人とも目が笑っていなかった。
宙に浮かび上がるベルガモットに、大地を抉って一歩踏み出すヴェレイラ。
視線を同じにしてにらみ合う。
それを見たイストの俱楽部生は、今度こそ逃げ出した。
獣人の生徒たちにいたっては本能の警鐘に従い、既に彼らより先に逃げ出していた。
「レイラ――」
「ベル――」
素晴らしく
互いの名前を呼んだ後でタメを作り、
「――シトの前で恥はかきたくないだろ?」
「――シトの前で恥はかきたくないよね?」
二人は再び同時に言葉発した。
鼻と鼻とがぶつかりそうなほど、互いの息が届くほどに距離を詰めた二人。
ベルガモットの金橙色の髪と、ヴェレイラの橙色の髪が重力に逆らうように、浮かび上がりながら波打つ。
「あ、あの~」
そのような雰囲気の中で、恐る恐る声を掛けるミュール。
二人は向かい合ったまま、勇敢にもこの空気に割って入ったミュールに視線を向けた。
「シトはもう踊り始めちゃったみたいだけど……」
ミュールの言葉で二人が、臨戦態勢を解いて、慌ててシトラスに視線を送る。
すると、二人の視線の先ではシトラスが、メアリーの手を握って楽しそうに踊っていた。
それを見たベルガモットは地に降り立ち、ヴェレイラは肩に入っていた力を抜いた。
二人して大きくため息を吐く。
二人の視線の先では、メアリーと楽しそうに踊るシトラスの姿があった。
こうしてシトラスにとって初めてとなる、カーヴェア学園の四大行事は幕を閉じたのであった。
◆
ポトム王国にも夏の足音が聞こえてくる頃。
満員となった大講堂。
カーヴェア学園では、一年を締めくくる終業式が行われていた。
終業式後は、カーヴェア学園は二ヵ月間の夏季休暇に入る。
「一年も早かったねミュール」
「そうだな。俺としてはシトとメアリーといたからなおさらだよ」
先日の魔法試験の成績発表では、二人とも一部の科目で合格点すれすれの"可"こそあったものの、落第点である"不可"は免れて、今は晴れ晴れとした気持ちで式に臨んでいた。
なお、学園寮で同室のよく関りのあるレスタも、二人同様にその成績に"不可"はなく、その日は三人で喜びを分かち合う一幕があった。
優等生であるエヴァは"不可"はもとより、その成績には"可"すらもなかった。
対照的に、メアリーはほとんどの科目を"可"で突破する低空飛行を見せていたが、それでもその成績に"不可"はなかった。
現在、大講堂内で執り行われている終業式には、表彰式も含まれている。
スタンレー教師による連絡事項の共有が終わると、彼は壇上から下がり、今度は学園長であるネクタルが壇上に上がる。
彼の容姿は、相変わらず十代前後の子供と見間違う愛らしい容姿のままである。
床に届こうかという白雪のような白髪も相変わらずであった。
これからネクタルによって、表彰式が執り行われようとしていた。
ここで表彰された成績上位十名は、式の後に王城へ招かれ、国王への謁見が叶えられることは有名な話である。
そのため、生徒の多くが固唾を飲んで、壇上のネクタルに注目している。
シトラスが後ろのミュールに耳打ちして尋ねる、
「上位十名って言っても、七席がいるから後三人だけってこと?」
「いや、それが必ずしもそんなことないらしいぜ。この一年間の成績だけが評価の対象だから、七席全員が表彰されないってこともよくある、って聞いてる」
壇上のネクタルの魔法によって拡声された声で、今年度の成績上位十名が十位から順に読み上げられていく。
名前が呼ばれる度に、当該生徒が立ち上がると、大講堂は歓声や拍手が沸き起こる。
名前を呼ばれた生徒の反応は十人十色であった。
初選出であろう生徒は、名前を呼ばれた瞬間に感情を爆発させて快哉を上げる者もいた。
反対に、これといって特に反応を見せない生徒もいた。
成績上位十名の内、十位から四位まで読み上げられたが、ここまで一年生の名前はなく、三年生以下で見てもシトラスの実家の主家筋である東の四門、アンリエッタの名前が唯一読み上げられただけであった。
そして、残すもついに上位三名である。
『第三位! 四年生……サウザ・アブーガヴェルッ!!』
大講堂の一部でひときわ大きな歓声が上がる。
中には立ち上がって歓声と拍手を送っている生徒もいた
シトラスが拍手をしながら、腰を浮かせて盛り上がっている場所に視線を向ける。
視線の先には、輝く橙色の髪をオールバック風に逆立てた、迫力ある容姿の男子生徒が立ち上がって、壇上のネクタルに一礼をするところであった。
「あの人って……」
シトラスが口を開くと、ミュールが事前に聞いていた情報を補足する。
「あぁ、北の四門、アブーガヴェルの次期当主、サウザ・アブーガヴェルだ。対抗魔戦は出場してなかったが、魔闘会で昨年はお前の姉貴と引き分け優勝。今年は判定負けの準優勝。その実力は紛れもない化け物の一人だ」
サウザが座席に座り、彼への拍手が鳴り止むのを待ってから、表彰を続けるネクタル。
『第二位! 三年生……ヴェレイラ・ガボートマンッ!!』
今度はシトラスが立ち上がって歓声を送る番であった。
その巨躯故に、特別に教師と同じく最前列付近の壁際の席に座っていたヴェレイラ。
ヴェレイラはその名前を呼ばれると、立ち上がってネクタルに一礼をする。
他の生徒が座っていることもあって、ただでさえ群を抜いて大きい身長は、一部の生徒がもはや巨人かと思うほどであった。
立ち上がって拍手と共に歓声を送るシトラス。
振り返ったヴェレイラは、シトラスの存在に気がついた様子で、はにかんで小さく手を振った。
二位の表彰が終わると、いよいよ今年度の学園最高の生徒の表彰。
静まり返った大講堂には、どこか緊張した雰囲気が漂っている。
ネクタルがゆっくりとその小さな口を広げる。
『第一位! 三年生……ベルガモット・ロックアイスッ!!』
拍手や歓声よりも、どよめきが勝る大講堂。
真っ先に拍手や歓声を送ったのは、イストに所属する生徒と、何も知らない今年学園に入学した一年生であった。
それ以外の生徒、大講堂に詰めた生徒の大半の生徒は、彼女に対する称賛よりも驚きが勝っていた。
その理由がネクタルによって明かされる。
『いや、ほんとにすごいね君は。総合成績が文句なしの二年連続一位。入学以来の魔闘会三連覇はもちろん、そもそも同一人物による三連覇自体が学園開校以来の新記録。来年以降優勝すれば前人未到の四勝だ。もはや並外れているとしか言いようがない』
壇上から褒めちぎるネクタルに対して、ベルガモットは表情を崩さず、ただ壇上に一礼するだけであった。
それが終わると彼女はスッと腰を下ろす。彼女にとってこの受賞にはまるで大した価値がないといった様子である。
そのような彼女に苦笑いを浮かべたネクタルだが、大講堂をぐるりと見渡すと、
『優秀な成績を収めて十名の生徒に向けて、もう一度大きな拍手をッ!!』
割れんばかりの拍手で表彰式は幕を閉じた。
その後は、ネクタルによる一年間の講評と夏季休暇の諸注意をもって、終業式は幕を閉じるのであった。
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