八話 魔力保持者と姉と
太陽がちょうど空の中央に位置する時間。
シトラスとミュールはいつもの
この日は二人とも
いつもは人通りが少なく閑散としている路地裏。
しかし、今日はどこか様子がいつもと異なっていた。
もうすぐ我が家としている襤褸屋というところで、まずミュールがその異変に気づいた。
「まて! ……なんかへんだぞ」
ミュールは後ろを歩くシトラスを手で制する。
そのままシトラスを引っ張り、物陰に隠れた。
探るように
シトラスもミュールの真面目な雰囲気に黙って従った。
「へん?」
物陰から目をやると、襤褸家の周りに何十人と人が集っていた。
集った人はどれも身汚く、髪はぼさぼさでまるで亡者である。
中には空き瓶や角材を手に携えている者もおり、辺りには剣呑な雰囲気が漂っていた。
「あいつら、たかりにきやがった」
ギリギリ、と歯を食いしばるミュール。
しばらく様子を伺っていると、襤褸屋を取り囲む男の一人が痺れを切らして、手に持った角材で襤褸家の扉を叩き始めた。
打音が木霊して二人の耳にまで届く。
掛け値なしの襤褸小屋だが、ミュールからすればかけがえのない家。
ドアが閉ざされていることから、シロッコかモートか、もしくは二人が室内にいるのは想像に難くない。
自分をここまで育ててくれた兄貴分の危機。
震える足を鼓舞して立ち上がる。
襤褸屋の様子を注意深く観察していたため、反応が一歩遅れるシトラス。
「うわあああああ!!」
――まってミュールッ!
我武者羅に突っ込んだミュールに向かって伸ばしたその手が空を切る。
見る見る間に、亡者たちに距離を詰めていくミュール。
どうにかしないと、と逡巡するシトラス。
その時、ミュールの声に呼応するように勢いよく襤褸家の扉が開き、二人の男が飛び出して来た。
シロッコとモートである。
扉を叩いていた男たちは、開いた扉に頭や体を打ち付けられ後ろによろめいた。
一番近くで態勢を崩した男に対して、体格のいいモートが腕に抱えた閂で打ち据える。
盛大な打音の後にカエルのうめき声のような声を出して男は沈黙した。
シロッコはいつぞやリンゴを切るのに使った鉄片を握りしめて周囲を警戒する。
幸い襤褸屋を囲む者たちに腕っぷしの立つ輩はいないようであった。
シロッコと、そして閂を握り直してシロッコの横に並んだモートに、意味のない呪詛の言葉をぼそぼそとぼやいている。
「おらぁ!」
ミュールが襤褸屋を囲む男の一人に後ろからタックルをかけた。
子供とは言え、助走をつけたタックル。
襤褸屋の中から飛び出して来た二人に意識を取られ、後方を意識していなかった線の細い男は、ミュールのタックルでつんのめる形となり、シロッコとモートの前にその身を躍らせた。
それを反射的に腕に抱えた閂で豪快に振りぬくモート。
閂は男の顔面にヒットし、男は黄ばんだ歯を飛び散らしながら後方に吹き飛んでいった。
「大丈夫か!? ミュール!」
「――ってことはシトもいるな! ミュールッ! シトを連れてここから逃げろ!」
タックルしてそのまま地面に倒れこんだミュールに、後から追いかけてきたシトラスが手を差し伸べる。
「ミュール、たてる?!」
「あ、あたりまえだ。アニキたちは!?」
差し出されたシトラスの手を振り払って、立ち上がったミュール。
シトラスを捕まえようとする二人の男を、手にした閂でまとめて薙ぎ払うモート。
モートの打撃を受けた二人は背後の乞食たちを巻き込み、倒れこんだ。
シロッコも二人と襤褸屋を襲撃してきた乞食たちの間に身を躍らせ、手にした鉄片をこれみよがしに振り回して威嚇する。
「俺たちも後から追いかける! はやくッ!」
ミュールはシロッコの言葉にわき目もふらず、ただシトラスの手を引っぱり通りの道へ駆けだした。
◆
シトラスとミュールが走り去っていった通路を塞ぐように、立ち塞がるシロッコとモート。
襲撃してきた乞食たちとにらみ合う二人。
二人にとって幸いなことは、ここに集まった乞食たちは空き瓶や角材などの凶器足りえる物を手にしてはいるものの、荒事に慣れていないということだ。
事実、彼らはじりじりと距離を詰めることしかできない。
誰かがシロッコたちを襲えば、それに便乗しようという者ばかり。
「モートッ!」
鉄片を振り回し、じりじりと距離を縮める周囲を何度か牽制した後に、シロッコが叫ぶ。
「二人が通りに向かってだいぶ経った! よし、モート! 俺たちもずらかるぞ!」
「え!? そ、そんな……俺たちの家は!?
「命にはかえらんねぇ! いくぞ! お前らも引き留めて悪かったな、じゃあなッ!」
モロッコは懐から球体の襤褸布を取り出す。
何かを包んで重みの感じる球体に、周囲の視線が布に集まった。
シロッコは視線が襤褸布に集まるのを確認するとほくそ笑んだ。
それを集団の上に投げつける。
布は空中でその形を崩した。
中に内包していたものが宙で散らばり、雨の様に降り注ぐ。
それは鉄貨と銅貨であった。
地面に落ちた硬貨は子気味の良い音を響かせる。
シロッコ達を取り込んでいた集団はぶちまかれたものに気づくと瞬く間に、地面に這いつくばった。
血眼になって散らばった効果を探し、必死に懐におさめる。
集団の中では銅貨をめぐって喧嘩を起こる始末である。
もはや彼らの中で誰も上を向いていなかった。
シロッコはシトラスたちの逃げた方角に向かって一目散に駆け出し、硬貨に気を取られ数拍遅れたモートも慌ててシロッコを追いかける。
散らばった硬貨をあらかた懐に収めた乞食たちは、小さくなったシロッコたちの背中に一瞥をくれただけでその後を追う素振りはなくかった。
ただ我先にと、もぬけの殻となった襤褸家に雪崩れ込んだ。
襤褸屋の中では、残っていた残飯や手にした硬貨を巡って、乞食たちが争いを始め、殴打の音やうめき声が路地裏まで響き渡った。
◇
シロッコが先導する形で、路地裏を駆ける。
後ろを振り返ると、モートが遅れて駆けてくる姿が見える。
壁に寄り掛かり、荒い息を吐くシロッコ。
「はぁはぁ……こ、ここまでくれば……」
少し遅れて、モートが追い付いた。
「はぁはぁはぁはぁ、あ、あにき……おれたちの金が……」
「仕方ねぇ。命には代えられねえからな。それに……」
一足先に息を整えたシロッコは、自慢げな表情でおもむろに懐から数枚の小銀貨を取り出した。
さきほどばらまいたのは銅貨と鉄貨のみで、小銀貨は別で懐に取っておいたのだ。
「さ、さすがあにきッ!」
弟分の素直に賞賛に、カッコつけるようにモートに背中を見せ、再び彼の先を歩き始める。
シロッコは酔っていた。
自分に。弟分の賞賛に。
そして、それが彼の人生最後の見せ場であった。
ゴゥ、という音と、音に一拍遅れて凄まじい熱量が、シロッコの体の脇を駆け抜けた。
文字通りの熱球。
シロッコの脳裏をよぎったものは小さな太陽。
それは魔法を学んだことのあるものであれば、誰もが知っている火系の著名魔法である<
シロッコが慌てて来た道を振り返ると、視線の先にはゆったりとしたローブを身に纏った見知らぬ者が
深くかぶったフードで口元以外の姿は見えない。
さきほどまで弟分が立っていた場所には、黒く炭化した
「モートッ!! お、おまえがやったのか!?」
ローブの者は手袋に包まれた右手をすっと上げ、シロッコに向ける。
反対の手には厚みのある装飾の施された本。
本は風もないのにペラペラと勝手にめくれ上がる。
ある場所で本のページがぴたりと止まる。と同時に右手に集まる熱気。
「ま、魔導書!? ま、魔法使い!? な、なんでこんなところに!? ま、まってくれ。きっと何かの勘違いだ! お、俺が、俺たちが何をしたってんだ! か、金かッ! 金ならやるから!」
「……」
シロッコの言葉に沈黙を持って答える。
その間にも右手に集まる熱は炎という現象に形を変え、周囲の気温を瞬く間に上げた。
「う、うわああぁぁ!!」
背を向けて駆け出すシロッコ。
その頬に伝う汗は熱さだけのものではない。
駆けるシロッコを黙して見つめる。
掲げる右手にはさらに超常の光が集まっていた。
もはや人の身ほどを超える炎球。
その周囲が熱によって歪んでいる。
足をもつれさせながらもがくように、あがくように足を動かすシロッコ。
それを追うように凄まじい熱風が路地裏を駆け抜ける。
ローブの下から見つめる先にはもう人はいなかった。
◆
「はぁはぁ……もうすぐとおりだ。ミュールだいじょうぶ?」
「あ、あぁ……お、おい。シト、まえからだれかきた」
ミュールが指差した先には、身なりの汚れた人相の悪い男。
先ほど襤褸屋を囲んだ男たちとは、荒事に慣れている雰囲気を漂わせている点で違う。
男も二人に気づくと、気色を浮かべて仲間を呼ぶ。
「いたぞ! 」
呼び声に呼応して同様に人相の悪い男が新たに四人。脇の通路から出てきた。
総勢五人となった男たちは、シトラスたちの進路を塞ぐように横に広がった。
男たちの身なりは粗雑で、下卑た笑みを浮かべ二人を品定めするように不躾な視線を飛ばす。
男たちの中から頬に鳥の入れ墨のある無精ひげの男が、一歩前に出てくる。
その男の目は落ち窪んでおり、その頬はこけている。
張り付けたような笑顔が品の悪さに拍車をかけていた。
「おまえが噂の妖精さんか?」
下卑た笑みを浮かべながら、歩を進める無精ひげの男。
その右手には使い込まれて鈍く光る剣。
答えを待たず、男は歩みと口上を続ける。
じりじりと下がる二人。
「俺はこのあたりでチンケな商売をやっているセカマってもんだ。へへっ、妖精は仕事を手伝って周っているんだってな? なら今度は俺の商売も手伝ってくれよ、な? いいだろ?」
シトラスが叫ぶ。
「はしって!」
シトラスがミュールを追い越して、元来た道へ駆け出す。
それに慌てて追従するミュール。
「ははっ、つれないねぇ」
セカマは駆け出した二人の背中を見て、にやにやと笑っていた。
セカマの後ろで四人の部下たちも獲物が逃げたにも関わらず、セカマ同様ににやにやとした表情を浮かべていた。
二人とセカマの距離は五メートルほど。
「まってくれよぉおお!」
のんびりとセカマが
だが、初動とは裏腹にそれは速く。
不自然なほどに。
セカマと二人の距離が瞬く間に縮まり、追い越した。
シトラスの腕をセカマが掴む。
「なっ……!?」
「逃げることないだろ?」
先に駆け出した二人からすると、セカマが瞬間移動でもしたような心地であった。
先ほどまであった五メートルの距離が今はなく、それどころか二人の前に立っている。
「は、はなせっ!」
「ん? 坊主、お前も
シトラスの手を掴み持ち上げたセカマは、反対の手でミュールの顎を乱暴に掴む。
「て、手を放せッ!」
「うぉ!? ……ちょっと大人しくて、なッ!」
顎を掴まれたミュールが勇敢にも殴り掛かるが、セカマはそれを半身になって躱した。
躱されたことで前のめりになったミュールの背中を、握った剣の柄で力強く殴打する。
地面に叩きつけられるミュール。
「ミュールッ!」
「安心しろ。坊主。すぐ楽になる。だから怖いことなんてねぇ」
「なにするんだッ!?」
キッと精一杯セカマを睨みつけるシトラスだが、切った張ったに慣れた荒くれ者からすれば少年の、しかも温室育ちの視線はかわいいものである。
むしろ、嗜虐心がくすぐられるくらいであった。
「
下卑た笑みを浮かべながら地面に伏すミュールの頭に足を乗せて、ぐりぐりと踏みにじる。
セカマの足元から聞こえるミュールのうめき声に、シトラスは歯を食いしばる。
「はは、妖精だけじゃなくて、俺の風の餌も手に入るとは俺もついているぜ」
セカマが喋っている間に追いついた彼の手下たち。
そのうちの一人が、ミュールの
セカマの足元でもがいているミュールの頬に、ドブ川で煮詰めたような汚ブーツのつま先を当てながら。
「カシラぁ、このガキはどうします? 先にバラします?」
「んー、そうだな。あの世でぼっちゃんが迷子になったら可哀そうだもんなぁ。 お前、友達だろ? なら先に待っていてやれよ、ははは!」
ひとしきり笑った後に、セカマが足元で足掻くミュールの頭を強く蹴り飛ばす。
蹴り飛ばされた衝撃で頭が一度跳ねた後、ミュールは動かなくなった。
これで切りやすくなった、とニタリと笑うセカマ。
「ミュールッ!」
悲痛なシトラスの声。嘲笑うセカマとその手下。
そして、振り上げられる刃。
――風が吹いた。流れを断ち切る強風が。
まず、セカマ。そして
自分たちの来た方角から強い風が向かってくる。
通路の置かれた物をその風圧で巻き散らして。
「カシラぁ、なんか来ますぜ」
それは人影。
豆粒ほどの存在が瞬く間に視認することができる距離まで迫ってくる。
セカマもその仲間もその存在に気がつき、それぞれ懐から獲物を取り出して構える。
しかし、セカマは余裕の笑みである。
「なんだ? 神様は次に俺に何をくれるっていうん――」
――だ?
セカマが言い切る前に、その疾風は立ち塞がったセカマの取り巻きを吹き飛ばし、地面でのびているミュールを飛び越えシトラスに迫る。
シトラスはぎゅっと目を瞑った。
風をまとった人影はシトラスの前で、ぴたりと止まる。
すると、風が遅れて周囲に破壊をもたらした。
路地裏の空き箱や木材、建物間で干してあった衣服がその被害を受ける。
荒れ狂う風が止むとともに、優しい声がシトラスの耳朶をくすぐる。
「シト、大事ないか」
聞きなれた優しい声に、シトラスがぎゅっと瞑った目を開ける。
そこには金橙髪に一房の赤色。
腰には剣が収まっている。
動きやすさを重視したパンツスタイル。
若くして既に麗人の片鱗が垣間見える美少女。
「あねうえっ!」
頼りになる姉の姿に、表情が明るくなるシトラス。
ベルガモットは元気そうな弟の姿に相好を崩す。
「また、
にやにやと笑うセカマに、立ち位置の問題で吹き飛ばされなかった大柄なセカマの手下。
その大柄な男が指を鳴らしながら、一歩前に出てくる。
手には鉄の仕込んだグローブ。
その自慢の拳でセカマに歯向かった者を、何人も殴り殺してきた札付きである。
「おまえたちの血でな」
子供とは思えない冷淡な声で吐き捨てる。
それと同時にセカマに背を向けていた体を急旋回させて反転。
振り返った時には、ベルガモットの腰の刃は鞘には収まってはいなかった。
「――あ?」
ベルガモットの顔程ある大男の左腕がぼとり、と落ちる。
瞬く間に地面が赤で染まっていく。
一拍置いて響き渡る大男の悲鳴。
そして、手下に手を出されたセカマの怒声。
「こ、こんの糞ガキがぁあああ!」
セカマの背後で風が生じ、ベルガモットに迫る。
予備動作なしでの加速。
先ほどシトラスたちに追いついたカラクリである。
セカマは多くの風の
もともとはこの力を使って暴力や略奪行為を行っていた悪漢だが、無頼の輩同士の抗争で敗北し、ロックアイス領に流れ着いた。
ロックアイス領のスラムでは相手になる存在はおらず、手下を従えて時には衛兵相手に立ち回る札付きの悪である。
彼はこれからも奪う側だと信じて疑わなかった――そう、今日このときまでは。
「その程度の風でいきがるな」
一閃。
地面に左右の腕が揃った。
ただし、その持ち主は同じではないが。
「お、俺の右腕がぁぁあぁぁ!!」
吹き出す血潮の返り血が、ベルガモットを避けるように飛び散る。
しかし、風に守られるかのように、セカマの返り血すらベルガモットへは届かない。
大の男が二人血まみれになり、苦痛の声を上げる中、ベルガモットは何事もなかったように、ちょっと忘れ物をしたかのような気安さで声をかける。
「シト、少しまっていて。すぐに片付けるから」
そこからはあっという間の出来事であった。
ベルガモットはその体を瞬く間に加速させると、手にした剣でセカマとその配下の意識を一撃で刈り取った。
ベルガモットは獲物を腰に戻し、気を失ったセカマと先に倒した大男の傷口に手を翳すと、出血が和らぐ。
もう一度手を翳すと、セカマと大男の衣服の袖がひとりでに出血している腕にきつく絡みついた。
汗一つかくことなく、悪漢どもをのしたベルガモットは何事もなかったかのように、シトラスの手を取った。
「さぁ帰ろう、シト。ねえさん心配したわ」
眉尻を下げる姉の姿に流石にしゅんとなるシトラス。
「ごめんなさい」
しゅんとなったシトラスに内心で身悶えるベルガモット。
「父上と母上も心配している。さあ帰ろう」
シトラスの手を引くベルガモット。
踵を返すと、手を握りながら一歩踏み出す。
「ま、まってあねうえ!」
「どうしたのシト?」
ベルガモットの質問には答えず、シトラスは繋いだ姉の手を離した。
一目散に地面に伏すミュールの元まで駆け寄る。
後ろで困ったように少し眉をハの字に曲げた姉の表情には気づかず、地面に伏しているミュールを揺り起こす。
「起きて! ミュール」
シトラスに起こされて、うぅん、と呻き声の後にゆっくりと立ち上がるミュール。
少し意識が混濁しているため視点が定まっていなかったが、直ぐに気を取り戻したようだ。
意識を取り戻すと、痛む頭を押さえながら周囲を伺う。
すると、視界に飛び込んで来たのは、片腕を無くして意識を失っているとセカマと、その周囲で同じように意識を失っている彼の手下たち。
ミュールはその光景に目を剥いた。
「こ、これは!?」
「あねうえがぜんぶやっつけてくれたよ!」
ベルガモットの存在に二重の意味で驚くミュール。
いつの間に、という驚きと――
「あね!?」
あねうえ、とシトラスに催促され、困惑しつつも挨拶を交わすベルガモット。
「ベルガモット。ベルガモット・
「ロッ……ク……アイ……ス……?」
ぽかーん、と口を開けるミュール。
つい先ほどまで馴れ馴れしく話していた少年が、密かに
この辺境の地で、唯一の貴族として知られている名を。
「どうやら弟が世話になったみたいだな。あとで父上に伝えて褒美をとらせよう」
ではな、とベルガモットは再びシトラスの手を引き、歩を進めようとする。
しかし、シトラスがそれに抵抗して動かない。
ベルガモットの力を持ってすれば、シトラス一人を動かすのはどうということはない。
齢十二にして英邁の誉れが高いベルガモット。
学問に優れ、武芸に優れ、ただの一兵卒では束にならないと敵わない魔法士ですら一人で倒すくらいに強い少女。
しかし、彼女は最愛の弟には滅法弱かった。
「ど、どうしたんだシト」
「ミュールもつれていって!」
今度ははっきりと形の良い眉がハの字を描いた。
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