13.再会
シルバムンヒルを発ってから数日───
獣の襲撃は何度かあったが、エルドリアへの旅路は順調だった。
「エルドリアに着いたら、カイルとディルはどうするの?」
「これといったアテがあるわけじゃないが、俺たちはもっと強くなりたいんでな。上位ランク目指して経験積んで‥」
「エルドリアに行きゃ、最高の冒険者と謳われるトップ4に会えるかもしれねぇしな」
「トップ4?」
「な~んだ、知らねぇのかよ。まぁ、俺らも噂で聞いた話だから、尾ヒレは付いてっかもしれねぇけど‥」そう言って、カイルとディルは冒険者ギルドのトップ4について語りだした。
「なんつってもトップは、
「ダンジョン! スタンピード!! それ、知ってる!! ほんとにあるんだね!!」エイジは目を輝かせる。
エイジが話に食い気味なので気を良くしたディルが続ける。
「次に有名なのはー‥そうだな。
「お前ぇはああいう細長いのが好みなんだな。俺ぁこう筋肉質のほうが‥」カイルが茶々を入れる。
「あははっ。
「そして、
最後に、氷結のフローズン。水属性の中でも氷に特化した魔法を極めた魔法使いだ。彼女が放つ氷の魔法は砦全体をも凍りつかせたことがあるとかないとか‥」
「最後だけ二つ名がテキトーな感じだね‥。美味しそうな‥」
「いやいや、四人の中で最も敵に回したくないのが氷結のフローズンらしいぜ。冷静沈着の頭脳派で、しかも情け容赦のない冷徹ぶりって噂だ」
「‥顔を合わせることがあったら、仲良くなれるように努力しよう...」
「エイジなら、そのうち、雷属性で五人目に名を連ねそうだよな。フフッ」
「なら嬢ちゃんだって格闘系で六人目だ。ジーさんは‥‥大道芸枠だな。ダーッハッハッ!」
「いやはや、主殿の雷撃は味方にも危害が及びますゆえ‥
そうこうして、エルドリアまであと二日ほどの距離に迫った頃、事件は起きた。
「警戒してください」メイドが危険を察知した。
街道を外れた森の中から、カイルとディルでも感じ取れるほどの威圧感が一行を襲う。
「なんなんだ!?」「と・とんでもねぇーのが来るぞ!」
「これほどの気配は初めてですな。お二人は後ろへ‥」ジーがカイルとディルを庇うように前に出る。
エイジはというと、目を輝かせて森へ歩み寄る。その後ろにメイドが続く。
「ぉ・おい! エイジ! 嬢ちゃん! 気を付けろ!!」「くそっ!!」
ディルはクロスボウを構えようとするが、手が震えて矢を装填できない。
ベキッ‥バキッ‥ズズン‥
木の陰から現れたのは、巨大な熊の姿をした魔物だった。
しかし、目の前でそんな魔物が臨戦態勢を取っているというのに、エイジの注意は別のところへ向いていた。
エルドリアがある方角‥エイジがそっちに視線を移した瞬間、魔物の頭が吹き飛んだ。
(ドパァーン!)
少し遅れて激しい風が吹き抜ける。
エイジの視線の先には、馬を駆る冒険者たちが近づいてくるのが見えた。
「何が起きたんだ?‥助かった‥のか?」ディルが腰を落とす。
「お・おい‥ありゃー‥
「おやおや、こんな所で、とは」執事が優しい笑みを浮かべて呟いた。
馬に乗った冒険者たちが、エイジたちと合流する。
「間に合って良かった。怪我は‥なさそうですね」馬から降りた女性が、一行を見渡して微笑んだ。
次の瞬間、エイジに突進して抱き上げる。「エイジー!! 会いたかったー!!!」
「はい?‥ぇ? え? ちょっ!」困惑するエイジ。
エイジを地面に降ろして、ドヤ顔で見下ろす女性。
身に纏ったエレガントな軽装備には古代の紋様が描かれている。
すらりと伸びる長い脚。
豊満‥とまでいかないが、ほど良く膨らんだ胸。
自信に満ちた大きな瞳。
陽光を浴びて輝く金髪。
そしてー‥鋭く尖った耳。
「まさか(この魂‥)リリス!?」エイジは驚きを隠せずに飛び上がった。
「久しぶりね、エイジ! 本当にまた会えるなんて!!」リリスはしゃがみ込んでエイジを抱きしめた。
「どうして!?‥ぁ、そっか! リリスってエルフ族だったのか!?」
リリスが尖った耳をピコンと動かす。
「エイジは本当にあの頃のままなのね」まじまじとエイジの顔を覗き込むリリス。
「ぁーーリリス!『あの頃』の話は、シーッ! シーッ!!」
「なんだよ‥エイジ‥お前、
「まぁまぁ皆様、日も暮れてまいりましたし、野営の準備をしてから、ゆっくりと‥」ジーの掛け声で、駆けつけてくれた冒険者たちも一緒に設営を始めた。
食事を終えて、みんなと離れた場所で二人きりになるエイジとリリス。
「一年ほど前にね、冒険者ギルドにジーさんが現れてね。見覚えがある顔だなーって思ったら、本人だって言うのよ。お別れしてから二百年も経ってるのよ?人族はそんなに永くは生きられないのに‥。理由を聞いたら、古代の秘術で眠りについて時を越えたって。もうすぐエイジも目覚める頃だって」
「そうだったのか‥。ジーめ、ナイショにしてたんだな」振り向くと、焚火を囲んでみんなと談笑するジーの姿が見えた。
「リリスは、本当にすごい冒険者になったんだね。
「もう~ヤメて~その呼び名は。恥ずかしいから‥」リリスの頬が紅くなる。
「‥もう会えないって諦めていたのに、まさかこんなふうに再開できるなんて、まるで夢のよう」
「ボクもだよ‥。リリス、小さい頃は耳尖ってなかったよね?エルフ族だって気付かなかったよ?」
「大人になるにつれて、こうなるのよ。この二百年、色んなことがあったんだよ~」
それからリリスは、エイジたちと別れたあとの冒険譚をたっぷりと語りだすのだった。
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