第3部

14.ギルド

二百年前───



ギルド、ガストン、リリスの三人は、エイジたちと別れた後、町長の屋敷に向かった。

道中、町の住民たちの困惑した顔や緊張感が漂う空気に気づく。


「何やら慌ただしいな‥」


行き交う住民に事情を聴くと、ここ最近、町の周辺に狂暴な獣が頻繁に現れるようになり、作物が荒らされたり、人が襲われているという。

昨夜も被害が出たとか...。


町長も対策に乗り出してはいるが、芳しくないらしい。


「そいつぁ‥冒険者に打って付けの仕事クエストじゃねーか」


町長の屋敷に到着すると、三人は単刀直入に申し出た。

「町長、俺らは『冒険者ギルド』って組織の結成を提案しますぜ!」


「冒険者ギルド‥ですか? それは一体どういうものでしょうか?」町長は訝(いぶか)し気に尋ねた。


「冒険者ギルドってのは、獣の討伐や町の防衛、危険な場所での素材採取などを専門に行う組織のことだぜ。冒険者たちを集め、訓練し、町の安全を守る」ギルドが力強く答えた。


「今、準備を進めている自警団とは何が違うのかね?」


「そいつぁ‥」言葉に詰まるギルドに代わり、ガストンが前にでる。

「私から説明させて頂きます。どちらも地域の安全を守るための組織ですが、その目的や構成、活動範囲には大きな違いがあります。自警団というは主に‥‥、一方、冒険者ギルドは‥‥」ガストンが流暢に説明を続けた。

これにはギルドも驚きを隠せなかった。こんなに『ちゃんと』喋れる奴だったなんて‥。


町長はガストンの説明に耳を傾け、深く頷いた。

「なるほど、あなた方の提案を受け入れます。冒険者ギルドの設立には出来る限り援助させてもらうとしよう」


「ありがとうございます、町長」ガストンは感謝の意を示し、ギルドとリリスに微笑みかけた。


町長は町の防衛施設の増強に力を注ぐことを決め、三人はギルドの設立準備に取り掛かった。

まずは拠点となる建物を探し、ギルドハウスとした。

ギルドを初代ギルドマスターとして、ガストンは新人教育係、リリスは受付嬢として活動を開始した。


「冒険者募集!!」町の広場にギルドの力強い声が広場に響き渡った。


これまで『冒険者』といえば、言ってしまえば根無し草。

農作業や狩りを手伝いながら各地を渡り歩く『放浪者』たちが、自らのイメージを良くするために名乗り始めたものだった。

この町にも少なからず冒険者は滞在している。まずは、そんな彼らを集め、組織としてまとめ上げていく。


男ばかりの冒険者ギルドにおいて紅一点のリリスは、雰囲気を和ませるのに一役も二役もかっていた。

これにはギルドもガストンも驚きだった。

保護したと思っていた少女が、大人並に業務をこなしているのだから‥。


本人リリス曰く「年齢でいうなら、ギルドハウスに集まる人たちの倍は生きてるんだけど、それはナイショ」

リリスは次の成長期に入るまで、その容姿は人間の子どものままだった。それが逆に大人たちのハートを捉えたのかもしれない...。


町を囲う防壁も次第に強固なものとなり、冒険者たちは日々の戦闘訓練の成果もあり町が獣の脅威にさらされることはなくなっていった。


噂を聞きつけた冒険者たちがエルドリアに集いはじめると、戦闘や魔法、狩りなど、様々な分野で優れた人材も増え、新人育成にも力が入れられるようになった。

ギルドハウスは日に日に賑やかさを増し、活気に満ちていった。


エルドリアは安全な町として住民も増え、商業の盛んな街として発展していく。


行商人の護衛任務も増えたことで、近隣の町に冒険者ギルドの支部が設立されていった。


こうして、三人で始めた冒険者ギルドは瞬く間に成長し、数年後には大陸全土へと広がっていった。

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