8.登録完了

一行は冒険者ギルドに到着した。


「ふ~‥。無事に到着出来て良かったぜ。俺たちの任務はここまでだな」


「ありがとう! レイガン、アリサ、バート。ボクたちのことはナイショね」エイジは三人に耳打ちしてウインクを飛ばした。


「わかってるって。お前さんの『楽しみ』を奪うようなことはしねーよ。けど、すぐに名が知られるようになるだろうがな。ガーッハッハッ! ほら、さっさと登録しちまいな! 俺たちゃあっちだ」

レイガンはそう言うと、クエスト達成報告の窓口へ向かった。


エイジは空いている受付を見つけて、新規の冒険者登録を申し出た。


「こんにちは! 冒険者登録をしにきました!」


冒険者登録に必要な事柄を用紙に記入した。

これで、明日の適正試験を受ければライセンスカードが発行される。


申請を終えたエイジたちに、レイガンが声を掛ける。

「すまねぇ、肝心なことを忘れてたぜ。ほれ、獣討伐の分け前だ」レイガンはそう言うと、銀貨の入った小袋をエイジに渡した。


「素材は全部で30銀貨ほどになったぜ。で、お前さん方には20銀貨だ」

「そんなに貰っちゃって良いの?」

「これでも少ないくらいだ。ほとんどお前さんたちが倒しちまったんだからな。まぁ、なんだ。こちとら今のうちに貸しを作っとこうって魂胆だから、受け取ってくれよ」ウインクを飛ばすレイガン。

「あははっ、それじゃ、遠慮なく」エイジもウインクを飛ばし返す。


「そうだ、無事に到着できたことだし今夜は、ぱ~っと飲みに行くか! 俺たちの奢りだ!!」

「エイジはジュースな。メイちゃんはいけるのかな?」

「問題ありません」

「えー! ボクもいけるよー! ボクの居た国では‥‥」

‥やいの‥やいの‥と賑やかな夜を過ごすのだった。



翌朝───



レイガンたちは町で所用を済ませたらすぐにグリーンウッドの村に向けて出立すると言って、宿屋の前でお別れした。


エイジとメイドが冒険者ギルドへ向かうと、適正試験の受講者たちが集まっていた。


「なんだ~? 冒険者てのは、こんな子どもでもなれるもんなのか?」

「おいおい、冒険者ナメてんのか? メイドなんか連れてよぉ~」

ガラの悪い二人組が早速絡みだした。


「(ふふっこういう定番のモブキャラも楽しみの一つだよねぇ~♪)」

「お~?な~にニヤついてんだぁ~?」物怖じしないエイジの態度にキレはじめる。

エイジは慌ててメイドの腕を掴んだ。


すると、「あなたたち! やめなさいよ!」と鋭い声が響いた。声の主は女冒険者だった。

「こんな子どもに絡むなんて‥、恥ずかしいとは思わないの?」彼女は二人組を睨みつけた。


「ぁああ~?」「よせ、アニキ。すまない、そんなつもりじゃなかったんだ」二人組の様子から、彼女はこのギルドでは名の知れた冒険者だということが伺える。


「大丈夫?その歳で冒険者になろうだなんて‥きっと何か事情があるのね。頑張ってね!」彼女は優しく微笑み、エイジの頭をなでた。


「うん、ありがと!(あぶなくメイが前に出るところだったから)助かったよ」


しばらくして、ギルド職員が説明を始めた。

「これから、冒険者になるための適正試験を始めます。あくまでも適正を見るための試験なので、成績が悪くても冒険者にはなれるので、安心してください。とは言っても、冒険者とは常に危険と隣り合わせの職業です。命を落とす者も多いです。己を知り、分をわきまえて行動できるように、そうなるための試験だと思って望んでください。決して無理して背伸びなどせずに、ね」最後の方はエイジに向けての言葉だったのだろう。


受講者は全部で七人。

エイジたちに絡んだガラの悪い二人と、さっきからメイドに向かって色目を使っている優男、生真面目そうな男性、それとローブを深々と被った小柄な女の子。


「では早速、基礎能力テストを行いまーす。筋力、敏捷性、持久力、そして魔力を測りますので、裏手にある練習場の方へ移動しまーす」


ゾロゾロと移動する間、優男はメイドに無駄なアピールを繰り返していた。


「(メイ、ここでは目立ちたくないから、わかるよね?)」

「(承知)」

エイジもメイドも、やり過ぎないように慎重に無難に臨んだ。


「皆さん、基礎能力はなかなかのものでしたねー。最年少の彼も、大人に負けず劣らずで。さて、引き続き、知識教習となります。これはテストではありません。冒険者ランクやジョブ、サバイバル術やダンジョン、モンスターについての基礎的な知識を学んでもらうものになります。では、別室の方へ移動してください」



エイジにとっては退屈な座学も終わり、冒険者のライセンスカードが交付された。


ランクは最低のFからのスタートとなった。

基礎能力の評価は高かったが、やはり子どもということで安全が重視された。


のんびり異世界ライフを楽しむのが目的のエイジにとって、ランクの高さは問題ない。

なるべく目立たずに、ここぞ!って時にガツーン!とブチかましてみんなの驚く顔を見る。

それがエイジの『楽しみ』だ。


「メイ! 早速クエストを受けに行こう!」

「承知」

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