169.投票結果
ゆっくりだった人の流れは、一段々と早くなっていき、10分程で、講堂に全校生徒が入り切った。
各クラスの選挙管理委員が、各クラスの投票用紙を集計係に手渡して集計を取っている。
集計を取り終えたらタイミングで候補者は、壇上に登場することになっている。
投票の仕方は、マーク式だ。
自分が生徒会長に相応しいと思う人物の名前を空欄に記入して、下の方にある候補者の名前の上にあるマークを塗る方式を取っている。
実質的に、マークを塗る事が投票する事になるが、名前も記入させる事で記入間違いを防ぐ目的もあるそうだ。それと、機械がマークを読み取れなかった投票の場合は、記入してある名前を基に投票先を判定するそうだ。
これも中等部時代の生徒会長選挙とは方式が、全く違う。
集計は、15分弱で終了した。
「一次投票の集計が完了しました。これより、生徒会長への立候補者が登壇致します。今回の選挙戦は異様な空気となっております。この場でのヤジ等々は警告となりうる可能性があります」
司会担当の生徒が、候補者の登壇前に参列している生徒に対して注意喚起を行った。
古河先輩に対するヘイトが強くなっていて、その煽りを受けている橋渡先輩の登壇時には、激しい罵詈雑言やブーイングが起こる可能性がある。
そうなってしまえば、選挙どころではなくなるので、先手を打って警告をちらつかせて悪い空気にしないようにしている。
「では、候補者の入場です。入場は、届出順となります」
候補者の入場となる。
ここからは、司会の方に呼ばれてから入場することになる。
「星川愛理候補」
最初は、星川先輩が呼ばれたので登壇していく。会場の半分位から力強い拍手が送られている。
星川陣営が、用意された椅子に腰掛けると次の候補者の名前が呼ばれた。
「橋渡剣候補」
橋渡陣営の2人が、舞台に上がっていく。しかし、先程とは違って拍手の音が全くない静かそのものだ。
司会の方が、暴言やブーイングを禁止していたが、これもこれで、かなりきついものだろうと思う。
それに、立候補順なので、真ん中に座るのだ。さらに、居心地が悪いだろう。
「白村詩季候補」
僕の名前が呼ばれたので、ゆっくりと歩いていく。春乃さんが、隣に立って段差を登る際のサポートをしてくれる。
舞台に姿を現すと、星川先輩と同じ位の大きさの拍手が向けられた。
だが、橋渡陣営の後だと心ばかしか大きいようにも思えてしまう。
僕も用意された席に腰掛けた。
その後は改めて、選挙担当の教師による説明を行った後に1次投票の結果発表に移る。
座席側の照明が落とされて、舞台の照明も先程より暗くなった。
すると、背後の白壁にシアターが写し出された。
上手いことに、各候補者の上に名前が表記された。恐らくは、座席に関しても綿密に合わせていたのだろう。
「では、投票結果の発表を行います」
すると、各候補者の名前の下に数字が回転した。回転しながらも数字が近くなると回転速度が遅くなった。
星川愛理 435票
橋渡剣 105票
白村詩季 396票
無効 24票
「ご覧の結果になりましたので、星川愛理候補と白村詩季候補による決選投票を行います。この後、少しの休憩を挟んだ後に、決選投票前の演説を行います」
(勝った)
僕は、この選挙戦に対する勝利を確信した。現在の星川先輩との票数差は、39票差。
十分に、逆転できるし大差を付ける事も可能だと思う。
決選投票前の演説のための休憩に入った。
各候補者は、舞台袖に帰って行った。ただ、橋渡先輩は舞台上で放心状態だった。
僕は、舞台袖に移動するとメッセージを一通送信した。
春乃さんから得た技術を酷使して、スマホの画面を見ずに送信した。
「では、両候補、決選投票前の演説順を決めたいと思います」
「では、星川先輩お先にどうぞ」
「何か、狙いでもあるのかな?」
「いえ、応援演説をしてくれる方と私の緊張を解す必要があるので」
「わかったわ。私が、先にする」
すんなりと演説の順番が決まった。
決選投票前の演説は、1人15分と決まっている。その配分は、候補者に任されている。
1人で15分使うのもよし。応援弁士と時間配分を決めて行うのもよしとされている。
殆どの場合が、自分自身の支持の広さをアピールするために応援弁士にも演説させる事がほとんどだ。
かく言う僕も、支持者の多さをアピールするために、応援演説をしてもらう予定だ。
「ねぇ、誰に応援演説してもらうの?」
奈々さんが、尋ねてきた。
それもそうだ。決選投票になった際に、誰に、応援演説をするかは伝えていない。
まぁ、この陣営の3人には依頼しない事は確かだ。現に、春乃さんも松本先輩もちんぷんかんぷんと言った表情だ。
敵を欺くならまずは味方から。
知名度がない人間が勝つには、何が必要か。
それは、勢いを生み出すブースター的存在だ。
決選投票に残れたのは、松本先輩ブーストのお陰だと言っても過言ては無い。
しかし、中等部時代の生徒会長経験があり、実力面で評価されている星川先輩には及ばなかった。
なら、別のブースター的存在に助けて頂かないと勝ち目は無いのだ。
「いい加減、舞台袖に退場しなさい!」
そんな事を考えていると、舞台で教師が怒る声が響いた。
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