166.風向き
昨日、松本先輩は、新聞部からの取材を受けた。
今日の放課後に最終情勢調査を載せたものが、発行される。放課後に発行される情勢調査は、分裂選挙だと発覚してからの情勢調査になるだろう。
今日、記載される記事を予め貰って見てみたが、松本先輩が話した通りに忠実に書かれている。
松本先輩と古河先輩の分裂がわかってから、選挙戦において有権者の動きが出てきた。
特に、橋渡先輩陣営を支持していた方に動きが見られる。
恐らくは、松本先輩を慕って支持していた人が、離れているのだろう。
その離れた人が、僕が星川先輩の固定票になるのか、浮動票になるのか。それを記したものが、今日の放課後に発行される。
僕の選挙運動にも人が集まるようになった。
今、この場で僕が掲げる公約を述べていく。
投票前の演説は決選投票以外ないので、決選投票に残るには、この場でどれだけアピール出来るかが鍵になる。
「ご清聴、ありがとうございましたぁ〜〜」
昼休みもギリギリになったので、演説を終了して教室に戻るとする。
放課後になり、僕達は、演説に行かずに選挙対策のために、学校から貸して頂いている教室に居る。
「はい、新聞!」
奈々さんが、ここに来る前に新聞を取ってきてくれていた。
『速報! 校内ベストカップルの分裂選挙は、古河裕大による束縛!』
トップニュースはこれと言わんばかりに、大きな見出しでこれが書かれている。
新聞には、松本先輩が僕を応援する事にした理由という形で過去に古河先輩からされていた事を述べていた。
「私が取った時には、ほとんど無くなってて新聞部の人が再印刷して持ってきてた」
つまりは、この記事の内容がほとんどの生徒に知れ渡ってしまうという事だ。
「しきやん。これが、第3の矢?」
「そうですよ。これで橋渡陣営は、かなりの影響を受けるでしょう。さぁ、向こうの固定票が崩れますよ」
固定票を得るためには、相手の固定票を崩さないといけない。
今回、相手の固定票を崩すキッカケとなったのは、古河先輩の日頃の行いだ。
カリスマ生徒会長という化けの皮が剥がれた、今、彼はどうなっているだろう。
「とりあえず、情勢調査を見るのは後にして1時間程演説をしましょう」
僕達は、演説をするべく、適した場所に移動する。
「どういうことだ!」
「そうだ!彼女に、こんな事しといて、よく生徒会長選挙の応援なんて出来るな。松本の事は、どうでもいいんか!」
広場では、演説をしようとしている橋渡先輩と古河先輩に対してと言うより、古河先輩に対して、厳しい声を掛けられている。
「そ、それに関しては、選挙が終わってから……」
「うわぁ、最低」
新聞に書かれたのは、僕が聞いた内容をかなりオブラートに包んだ内容だ。
だけど、読んだ人には古河先輩の行いに対して松本先輩がどう思っていたかを理解出来る。
特に、女子生徒が理解してその内容を男子生徒にも吹聴して今の状態が出来上がっている。
橋渡陣営は、演説所では無くなっている。
「奈々さん、マイクの準備をお願いします」
今日の演説用にマイクとスピーカーを学校側から借りていた。
生徒会長選挙期間中に、喉をやってダミ声になってしまう事がおおくなっていたため立候補者と応援する人たちの喉を守るために、申請すれば使うことが出来る。
「音量は、最初だけ指定範囲で最大音量にして下さい。向こうに群がる人たちの注目がこっちに集まったら音量は普通に」
「わかった」
マイクを取って、奈々さんが音量の調整を終えたのを見計らってからマイクのスイッチを入れる。
「みなさま、今から生徒会長候補の白村詩季の演説を始めたいと思います!」
僕の一言で、橋渡陣営に群がっていた生徒はこちら側にやって来た。その隙に、橋渡陣営は、撤退していった。
これは、ほとぼりが冷めるまでは、橋渡陣営は演説所ではなくなるだろう。
予定通り1時間程度演説をしてから選対用の教室に移動して来た。
「これで、橋渡陣営は演説をする事が出来なくなりますね。松本先輩大丈夫ですか?」
「古河くんからは、話したいってメッセージがたくさん来てるね。既読スルーしているけど」
「だったら、一層の事もう振ったらどうですか?」
「いやぁ~~振ったんだけどね。けど、しつこくて……」
「だったら、学校内における公的機関に情報渡して対処して貰ったらどうですか?」
「選挙後でもいい?」
「おまかせします」
松本先輩は、情深い所もあるようだ。
古河先輩の松本先輩に対する態度を見ると、相当辛かったはずだ。いや、古賀先輩ではなく橋渡先輩に配慮しているのかもしれない。
「それよりも、情勢調査を見ようよ」
松本先輩が、この話題は終了して欲しいという合図をだしたので、新聞を開いて情勢調査の欄を見る。
橋渡剣 40% → 25% -15
星川愛理 35% → 35% ±0
白村詩季 10% → 15% +5
不透明 15% → 25% +10
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