119.色気

「詩季くん一緒に遊ぼ!」


 陽葵さんから、水鉄砲を渡してくれた後に、バケツに水を汲みに行ってた来てくれた。


 水鉄砲は、かなりいい物を持ってきたようで、陽葵さんが持ってきたパイプ椅子に移動するのと、皆が、プールサイド近くに来てくれれば、当てられる。


「詩季くん、見るだけじゃつまらないでしょ?」


 なるほど、僕は外から中で遊んでいる人たちを攻撃すると言うわけですね。


「みんなぁ〜〜私達の攻撃から避けられるかなぁ??」

「おぉ〜〜こいやァ〜〜」

「あっ、詩季くんが移動出来ないから、詩季くんの射程圏内から離れる移動は禁止ね?」

「無茶すぎだろ!陽葵は、動けるんだからな!」


 相変わらず、瑛太くんと奈々ちゃんカップルは元気だ。その2人を、傍から見守る春乃さんと陽翔くん達も微笑ましいと思う。






 1時間に、1回10分以上の休憩を挟みながらプールで遊んでいると、あっという間に、昼の13時を過ぎていた。


 途中、プールの中からの反撃もあり、プールサイドにいながら、濡れる体験が出来た。


 空腹もあり、そろそろ引き揚げて、皆で昼食を食べに行こうと言う話になった。


 陽葵さんは、途中、休憩で更衣室に移動した以外は、常に僕の隣に居てくれた。


 瑛太くんは、陽葵さんの水着姿も拝みたかったようだったので、残念そうだ。まぁ、奈々さんからの制裁を受けていたのでざまぁと思う。


「じゃ、着替えようか」


 陽翔くんの号令で、男女それぞれの更衣室で着替えようとなった。


 僕も着替えるために、陽翔くんに荷物を持ってもらって移動しようとすると上着を引っ張られた。


「詩季くん。ちょっといいかな?」


 陽葵さんに呼ばれた、僕は、案内されるがままに、更衣室とは逆方向に移動した。


 陽翔くんは、僕のカバンを持って男子更衣室に入ってくれた。そして、他の子もそれぞれの更衣室に入った。


 今、プールに居るのは、僕と陽葵さんだけだ。


「どうしたのですか?」

「あ、あのね、私の水着を見て欲しくって……」


 そう言えば、皆がプールで遊んでいる間は、陽葵さんは、ずっと上着を着たままだった。


 何だか、自分だけが特別に見せて貰えるみたいで悦に浸れる気分だ。


 これが、〖好き〗と言う感情の正体なのだろうか。


 僕が、そんな事を考えていると陽葵さんは、ファスナーを開けて上着を脱いで、今、着ている水着を見せてくれた。


 お泊まりの時に、着ていた水着とは違って、色っぽい水着だ。

 電話で、2人きりの時なら見たいと言った、谷間も見える水着だ。


「どう?」

「可愛い過ぎます……」


 多分、僕の頬は、真っ赤になっているのだろう。


 本当に、似合っている。


 春乃さんや奈々さんの時には感じなかった、感情を持っている。


「ほんと?」

「本当です。ある意味、お泊まりの時に着なくて良かったと思えるレベルで可愛いです。それに、色っぽくて……」

「――!」


 赤かった陽葵さんの頬は、さらに赤くなった。


 我ながら、親しくない男女間なら嫌われてもおかしくない事を言っている自覚は、ある。

 これで、嫌われていないという事は、親しい関係性である事は間違いない。


 と言うか、お泊まりの時に好意を伝えられたのだ。


 その後の、色っぽい水着攻撃は、かなり響くものがある。


 僕は、陽葵さんの頭に手を持って行ってよしよしする。


「あわわぁ、どうしたの?」


 陽葵さんは、逃げる素振りは、一切見せずに、なでなでを受け入れてくれている。


「えへへ、もっと撫でてぇ〜〜」


 陽葵さんは、表情を和らげている。昔、羽衣をよしよししてあげた時も同じような反応をしていたような気もする。


「そんなに、嬉しいですか?」

「うん!」


 僕のなでなでで、こんなにも喜んでくれているのは、僕に好意があるからだろう。

 僕自身も早く、好きと言う感情を理解しないといけない。


 すると、僕と陽葵さんは、視線を感じた。


 女子更衣室から春乃さんと奈々さんが覗いていたのだ。


 春乃さんはしっかり制服に着替えていて、奈々さんは上ポロシャツ下体操ズボンで、手にスカートを持っていた。


 春乃さんはふむふむと言った感じで、奈々さんは、ニヤニヤしていた。


 僕は、陽葵さんへのなでなでをやめて、陽葵さんは、上着を着直した。


 恥ずかしさもありながら、僕と陽葵さんは更衣室に移動して制服に着替える事にする。






 制服に着替えた後は、学校近くのファミレスにお昼ご飯を食べ終えた後に、別れた。


 瑛太くんと奈々さんは、奈々さんのお家でデートするそうで、ファミレスで別れた。2人の様子的には、恐らくそう言う方面のスイッチが入っているように見える。


 春乃さんも、途中まで一緒に帰って、陽葵さんと陽翔くんは、僕を家まで送ってくれた。


「今日は、ありがとうございました。本当に、楽しかったです」


 僕は、素直な感想を伝える。


 友人には、自分の感情は素直に伝えるべきだと思うので実践する。


「俺も楽しかったよ。珍しく、陽葵が大人しかったな」

「いつも大人しいよ!」


 陽翔くんは、水着の一件を知らないから大人しかったと思うのだろう。まぁ、水着に関して、僕としては役得だったので暴走したと言わないか。


「では、また学校で」


 2人と別れて、家に入ると羽衣の出迎えは無かった。」


 てっきり、外での会話を聞いて玄関でで待ちしているかと思っていた。

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