117.女子会
「それでぇ〜〜しきやんを悩殺する水着は、どれにするんですかぁ〜〜」
私は、今、奈々ちゃんと春乃ちゃんと共に、喫茶店に来ている。
奈々ちゃんは、今度のプールの時に、私がどっちの水着を着るのかをニヤニヤしながら聞いてきている。
この2人には、詩季くんのお家にお泊まりをする事は、話していない。つまり、既に、露出の少ない方の水着を詩季くんに見せた事も話していない。
お泊まりの事を話たらあらぬ疑いを持たれて詮索されるのが目に見えている。
ちなみに、この3人で、皆でプール行く時の水着を買いに行った。
だから、私が2種類の水着を買った事も知っている。
「内緒だよ!」
本当は、当日にどっちの水着を詩季くんに見せるかわ決めている。お泊まりの時に、露出少なめの水着を来た時点で、もう決めていた。
「それで、夏休みの間は、詩季くんとに遊んでるの?」
春乃ちゃんからタイムリーな話題を振られた。
遊んだと言えば、遊んだ。お泊まりだ。
お泊まりに関しては、出来るだけ黙っておきたい。特に、奈々ちゃんが居る間。絶対にからかわられるに決まっている。
「詩季くんのお家で、遊んだよ」
何もお泊まりをしたと言わなければいい。詩季くんのお家で遊んだ事には変わりない。
んまぁ、羽衣ちゃんにアドバイスを貰って色々と仕掛けた事は否定しないけど。心の中で。
「へぇ〜〜てことはぁ〜〜何か、進展でもあったんじゃないぃ〜〜?」
やっぱり、奈々ちゃんが食いついてきた。春乃ちゃんからの質問なのにだ。
「陽菜も一緒だったから、特には……」
「陽菜ちゃんもしきやんに懐いてるから仕方ないよねぇ〜〜でも、2人で遊んだ時もあるでしょ?」
本当に、色恋沙汰の話となるとこうも勘が鋭くなるのだろうか奈々ちゃん。
「あるけどぉ」
「へぇ〜〜んで、何か進展あった?」
何だ、この尋問。いつまで続くのだろうか。
「そう言う、奈々ちゃんは、瑛太くんとどうなのさぁ?」
さっきまで、私と詩季くんの話に興味津々だった、奈々ちゃんにバトンを無理矢理投げる。
春乃さんは、私の時より、興味が薄れているように感じる。
「えぇ、私は、予定が合ったらデートして、そう言う雰囲気になって、環境が整ったらするって感じだけど?」
私と春乃ちゃんが、頬を真っ赤にしたのは言うまでもない。
何も、奈々ちゃんと瑛太くんカップルの性事情を聞きたい訳ではない。瑛太くんと普段、どのように過ごしているかを聞きたかったのだ。
ん?待てよ。
今の返答は、ある意味、普段瑛太くんとどのように過ごしているかの返答になっている気がする。
「2人とも何で、顔赤くしてんの?」
「「奈々ちゃんのせいだよ!!」」
「わっ、息ぴったり!所で、しきやんとは何か進展あったのかなぁ?」
やはり、逃がしては貰えないようだ。奈々ちゃんの目は、獲物を狙う蛇の目だ。そんな目を他人の恋路を聞くのに使って欲しくないけど。
「……好きだとは、伝えたよ」
「――おぉ〜〜!」
「それで、詩季くんの答えはどうだったんですか?」
奈々ちゃんちゃんが、ニヤニヤ笑顔で詰めて来ようとしていた所で、春乃ちゃんが食いついて、詩季くんからの返事を聞きたがってきた。
「おやおや、三角関係かなぁ〜〜?」
奈々ちゃんは、ニヤニヤしているが、私は不思議で仕方がない。
春乃ちゃんは見た感じ、陽翔に気があると思っいた。文化祭準備の指揮を2人でした事で、意気投合していたからだ。
それに、この前は陽翔とデートしたみたいだし。
「返事は、保留になったよ。詩季くんが、自分の気持ちがわかるまで待って欲しいって……」
「しきやんも臆病だなぁ〜〜」
「ふ〜ん」
春乃ちゃんは、何か考えている様子だった。
「ねぇ、春乃ちゃんは、詩季くんのことどう思ってるの?」
私は、牽制する。
もし、春乃ちゃんがライバルになると言うなら、詩季くんの彼女の座を争う覚悟はある。
確かに、春乃ちゃんが詩季くんの事を好きになる理由はある。むしろ、好きにならない方がおかしい理由が。
私は、詩季くんの優しくて強い所に惚れた。春乃ちゃんが、惚れているとしたら同じ所だと思う。
そして、春乃ちゃんには態度をはっきりとして欲しい。
陽翔を選ぶのか、詩季くんを選ぶのか。
詩季くんが好きならもっとアピールするべきだ。なのに、蚊帳の外か傍観する立ち位置で居る。
陽翔は、春乃ちゃんとのデートから帰ってきた時、ものすごく落ち込んでいた。理由を聞いても教えてくれなかった。
そして、今日の私の詩季くんに対する恋バナに対して、異様な食いつきを見せる。
かなりの確率で、何かを隠しているように見える。
「確かに、はるのん。しきやん狙いなのかはるるん狙いなのか、解らないところあるよね。まさかだけど……そっち系の女の子?だったら、瑛太は――」
「それはないです」
奈々ちゃんは、春乃ちゃんに対して警戒心をむき出しにしていたが、春乃ちゃんはそれをきっぱり否定していた。
「だったら、この前、陽翔とデートしたでしょ?落ち込んで帰って来た。今は詩季くんの事を気にしている理由が気になるんだけど?」
私も追及する。
春乃ちゃんも行動は、私たちの友人関係を破壊しかねない。
『友人関係が完全に破綻するのは、異性。異性関係が完全に破綻するのは、身体』
母さんのこの言葉は、本当のようだ。今、この3人の空気は悪くなっている。
「勘違いして欲しくないけど……私は、詩季くんとそういう関係になる気は無いよ。多分、陽翔くんが、落ち込んでいたのは、私が詩季くんの事を尋ねたからですね」
「そ、それさぁ~~はるるんの気持ち理解した上で、だよね。ひどくない?」
「確かに、陽翔くんには、酷な事をしたかもしれませんね」
「はるのんは、何をしたいの?」
春乃ちゃんが、何をしたいのか。
「こればっかりは、家の事情があるので話せません。しかし、陽葵ちゃんの詩季くんへの恋心は邪魔するつもりもありませんし、陽翔くんには今度謝罪します」
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