110.空港
「おはようございます!」
家に、おばさんと陽葵さんが来てくれた。
陽葵さんのお泊りが終って3日後、つまりは、羽衣と母さんが帰国してくる日だ。
「今日は、羽衣ちゃんと、詩季くんのお母さんを乗せたら良いんですよね?」
「あぁ、それなんだけどね、詩季も乗れるかな?」
「はい、大丈夫ですけど、詩季くんも迎えに行くんですか?」
「そうなのよぉ〜〜」
静ばぁとおばさんが話し込んでいる間に、陽葵さんは、僕の方に来て髪のお手入れを初めていた。
2人は、リビングにやって来て、僕たちの姿を見ると、微笑ましそうに見ていた。
「あれが、学校のある日、毎日ですか?」
「そう、毎日!詩季も、満更でもないようだけど、私から言うと、照れてそっぽ向くのよ」
「あらら、詩季くんも、そこは子どもなんだねぇ〜〜」
何だか、非常にいたたまれない空間に早変わりしているように思う。
「陽葵さん、今日は羽衣が帰ってくるので、何時も以上にかっこよくしてください」
「OK!大好きな妹ちゃんと久しぶりに会えるもね!」
陽葵さんに、髪型をリクエストをする。
髪を切る事を拒否られた以上、陽葵さんには、うんとかっこよくしてもらわないといけない。
羽衣は、今回、帰国が3日早くなった事に関して、僕にメッセージを送って来ていない。
あの、はちゃめちゃな妹の事だ、急に帰ってきて僕を驚かすドッキリを仕掛ける腹積もりだろう。
だがしかし、その目論みは、祖父母の密告によって崩れ去っている。なら、する事は、1つである。
僕から空港に向かってお出迎えをする逆ドッキリだ。まさか、羽衣は、僕が出迎えに来るなんて思うまい。
ダメだ、逆ドッキリ計画を考えるだけで、ニヤニヤが止まらない。
「何か、詩季くん。悪い笑顔してる」
「えへへ、羽衣との再会が楽しみなのですよ」
「そうだね、詩季くん何時もより楽しそうだもん!」
「じゃ、行こうか!」
おばさんに呼ばれたので、車に乗り込んで、空港に向かう。
「やっぱり、広いなぁ〜〜」
空港に到着して施設内に入ると、陽葵さんが、そう言った。
空港なんて施設は、高校生の僕らは、滅多に来ない場所だ。その点、羽衣は、中学生ながらかなりの回数来ているものだと思う。
「到着予定時刻まで、時間がありますし昼食いかがですか?」
「おぉ〜〜いいねぇ〜〜」
空港に着くと家の時とテンション高い人と落ち着いている人が逆転している。
おばさんと陽葵さんは、空港で昼食をとる。僕は、羽衣と母さんを家に送ってもらった後に、家で食べる予定だ。
では、何で僕が昼食を仕切っているかと言うと、空港での昼食代を静ばぁから貰っているのだ。まぁ、少ないが車代という事だ。
陽葵さんは、海鮮丼のお店に入って券売機で注文をしておばさんも注文をした。お釣りは、きっちりと返してくれた。
ちなみに、残ったお釣りは僕のお小遣いにしていいそうだ。
「詩季くんは、食べないの?」
「食べたら、昼食が入らなくなります」
「本当に、食が細いよね。つまむ程度には、食べなよ」
そう言うと、陽葵さんは、自身の海鮮丼の一部をお箸で取り、僕の口近くに持ってきた。言わゆる、あ〜んという形だ。
「では、頂きますね」
僕も躊躇いもなく1口貰った。
「うふふ、2人とも仲良しねぇ〜〜」
僕と陽葵さんは、今の状況を思い出した。
そうだ、おばさんが居るのだ。
僕は、陽葵さんのお母さんの前で、陽葵さんにあ〜んしてもらった。陽葵さんは、お母さんの前で、僕にあ〜んをしたのだ。
お泊まりの時2人で居る時間があった事で、ついつい自分たちの世界に入ってしまったのかもしれない。
「詩季くん、もう一口いる?」
「いえ、大丈夫です」
「そっか!」
陽葵さんは、おばさんにはつっこまずにそのまま食事を再開した。おばさんは、陽葵さんに、突っ込まれずに、意地悪を出来ずに残念がっていた。
ここは、陽葵さんにそっくりだと思う。やっぱり親子だなぁと。
「ありがとうございました!」
お店から退店する際に、店員さんからの元気な声がした。
「時間的に、そろそろ、お出迎えの場所に行かないとね」
「そうですね」
おばさんに言われて、腕時計を確認すると、到着予定の30分前になっていた。国際線となると、到着予定時間が早まったり遅くなったりすると聞くが、そんな情報は聞かないので、予定通りに帰って来るのだろう。
お出迎えする場所に、到着して2人の到着を待つ。
2人は、お盆前に帰国してくるだけあって、比較的人が少ない。これなら、僕の事を直ぐに見つけてくれるだろう。
到着予定時刻になった。
日本に入ってから諸々の手続きを行わないといけないので、少々、時間が掛かると思う。それにしても、短期間で、日本とイギリスの行き来は、かなりのレアケースだろう。
帰国した人が出て来る扉が、時折開いては、キャリーケースを持った人が出て来ていたが、今回は、かなりの人が出て来た。
恐らく、羽衣と母さんが乗った飛行機に乗っていた人の流れだろう。
すると、人の流れから、見慣れた2人が姿を現した。そして、羽衣と目が合った。
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