109.寂しい
「詩季くんは、春乃ちゃんの事どう思っているの?」
夕ご飯を食べながら陽葵さんに聞かれた。
机に、僕、陽葵さんが隣り合って座り、向かい側に陽翔くんと陽菜ちゃんが座っている。陽菜ちゃんは、僕の隣に座りたがると思ったが、大人しく陽翔くんの隣に座っていた。
と言いながら、陽葵さんは隣から圧力を掛けられている。
夕ご飯は、昨日、陽葵さんが作り置きしてくれていたビーフシチューをメインに、サラダに卵焼きが置かれている。それプラスに、一昨日作って余った分のハンバーグも解凍して食卓に並べられていた。
さて、問題は、陽葵さんからの圧力からどうやって逃げるかだ。
僕に対して、好意を伝えた翌日に、この話題は、非常にまずい。
「春乃さんは、友人ですよ」
「そうかなぁ〜〜春乃ちゃん。詩季くんには、友人以上の感情を持っていると思うよ!」
「俺も思うけどな」
陽翔くんに関しては、自身が気になっている女の子の異性関係を何故に、こうも聞きたくなっているのか。
僕が、春乃さんに抱いている感情は、友人という感情だけだ。それ以上もそれ以外もない。
だけど、双子達の目線は、そう言う訳では無いみたいだ。
「2人は、どう見ているのですか。春乃さんが、僕をどう思っているのかを」
「何と言うかな、忠誠心的なのを感じるな」
「そう、それ!」
忠誠心?
何で、春乃さんが僕に対してそのような感情を持っているのか。
僕は、春乃さんと主従の関係になった覚えは無い。友人として、対等な関係だと思う。
「僕は、春乃さんには、友人として対等な関係性だと思っています。奈々さんと同じです」
「…………あれ、陽葵は?」
「私は?」
無意識なのだろうか、それとも意識的なのかは、わからない。
異性として対等な人の名前に、陽葵さんの名前を言っていない。
「……内緒……です……」
らしくもなく、言葉を詰まらせてしまった。
「うん、満足!」
陽葵さんは、何やら満足気な表情になっていた。そして、陽翔くんも安心した表情になっていた。
「お兄ちゃん、お姉ちゃんに、詩季にぃちゃん、私も混ぜて!」
おっとと、同級生3人の世界に入り込んでしまった。
陽菜ちゃんから自分も混ぜろとお怒りを受けてしまった。
夕ご飯を食べ終えると、西原さん一家は、帰宅して行った。
この3日間は、陽葵さんが家に居ることが当たり前だったので寂しく感じてしまう。
何だかんだで、陽葵さんと一緒に居るのは楽しいと思う。
「旅行はどうでしたか?」
「うむ、楽しかったぞい。ほれ、土産だ」
健じぃは、紙袋に入った洋菓子を渡してきた。西原さん達には、和菓子と洋菓子が入った紙袋を渡していた。
「わぁ〜い!このお菓子食べたかったんですよねぇ〜〜」
「本当に、困ったぞ。詩季は、和菓子全般食べないからの。陽葵ちゃんを見習って欲しいな」
「仕方が無いではありませんか。好みでは無いのですから」
「おいコラ、自分好みの話じゃなくなった途端に、口調を丁寧にするのやめてくれぃ」
あれ?
祖父母の前でも、基本的に、口調を崩すことは無かった。
無自覚に、口調を崩していたのだ。まぁ、祖父母は、1番信頼のおける人物なのには、変わりがないのは事実だ。
「陽葵ちゃんと一緒に居て、変わったねぇ~~」
「確かに、陽葵さんと一緒に居て、精神的には安定する事が出来ていると思います」
祖父母は、陽葵さんと言うが、学校で行動を共にする5人が良い効果を発揮していると思う。初めて、友人と言える人が出来て、毎日が楽しい。
楽しいからこそ、僕自身の表情は、明るくなっているのだろう。
「あぁ、そうだ、詩季にとっては朗報かもな」
「えっ、健じぃが、言うと瀋陽出来ないんですけど……」
「ひどいな!何処に、おじいちゃんを不審がる孫がおるんじゃ!」
「ここにいますけど……?」
僕は、頭を傾けて返答する。健じぃは、何やら複雑な表情をしている。
「詩季も、羽衣ちゃうんみたいな要素持ってんのかよ」
「そりゃ、兄妹ですからね」
「ごもっともなご意見で……」
静ばぁは、何やらニヤニヤとして笑っていた。
「所で、静ばぁ、何があるんですか?バカジジィが、朗報とか言っていましたけど?」
「バカジジィとは、何だ!そんな事を言う孫は何処にいる」
「「ここにいます」」
「何で、静子までぇ~~」
健じぃが元気だと、話が進まないので、静ばぁと2人で黙らせに行く。
「羽衣ちゃんとしずかの帰国が、3日早まったよ」
羽衣と母さんの帰国は、3日早まった。そして、お迎えに、西原さんの車を使わせて貰う事になった。
「……お迎え、僕が行ってもいいですか?」
「……?いいけど、どうしたの?」
「いやぁ~~羽衣に目に物見せたくてぇ~~」
「あらぁ、詩季。悪い顔してる」
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