104.一線……?

 陽葵さんと一緒に寝ることになった。


 リビングで、のんびり過ごしていたが、21時を過ぎたタイミングで、僕の部屋に2人で移動した。


 陽葵さんは、客間から自身が使う枕を持ってきて僕の枕の隣に置いた。


 荷物は持ってきて、枕は忘れるのは、何とも面白いものか。


 やはり、一緒にお風呂に入った事で、判断基準のボーダーラインが、緩くなっているのだろう。

 一緒にお風呂に入っていなければ、一緒に寝ることは、了承していなかっただろう。


 何も、僕の部屋で一緒に寝たことが無いわけではない。

 中間テストの僕のご褒美で膝枕をしてもらった時に、一緒に寝たことがあるが、あの時とは、全然違う。


 今回に関しては、陽葵さんと一晩を同じベットで過ごすことになるうえ、祖父母は、居ない。昼に陽菜ちゃんは、帰っている。


 そして、陽葵さんは、可愛いパジャマを着ていた。


 昨日と比べても可愛い。


 まるで、今日の夜のために、用意したかと捉える事が出来る。


「可愛いですね」

「えっ点々」

「何なのですか。嫌なのですか」


 陽葵さんは、僕から褒められるとは思っていなかったようで、動揺していた。


「嫌じゃないよ!むしろ、嬉しいよ」


 陽葵さんは、照れているようであたふたして、その拍子に、陽葵さんは、カバンを倒してしまった。


 すると、陽葵さんのカバンの中から、僕が健じぃに貰ったものと同じ、赤いバッケージの箱が出てきた。


「点々点々」

「点々点々」


  僕と陽葵さんは、フリーズした。


「こっこれは、その〜〜」


 先に反応したのは、陽葵さんだった。床に落ちた赤い箱を素早く手に取った。


「こっこれは、そのぉ〜〜詩季くんとそのお泊まりする事になったから点々もしものために?」


 何で、そこで疑問形になるのですか、陽葵さん。


「何なのですか。もし、僕が陽葵さんとHな事したいって言ったら受け入れるんですか?」


 陽葵さんから一緒に寝たいとお願いされてからの赤い箱だ。

 そういう事を連想してしまうのは、仕方が無いだろう。


「うっ受け入れるよ。詩季くんなら」


 つまりは、あれか。


 お風呂で、胸を触らせてきた事も踏まえると、陽葵さんは、こういう事をする事は、覚悟の上だった。


 僕が、今、求めたら受け入れて行為に及ぶ点々


 僕は、引き出しから、健じぃに渡された、陽葵さんと同じ赤い箱を取り出して見せる。


「ーー!」


 陽葵さんも驚いた顔をしていた。


「陽葵さんは、僕の事どう思っているのですか?」


 初めてこの事を聞いたと思う。


 直接的には聞にくい所だ。聞いた事で、関係性が、変わってしまう事もあるからだ。


「詩季くんの事、好きだよ。異性として。だから、胸を触られても平気だし、下着を見られても大丈夫。Hだってね」


 陽葵さんは、僕に好意があると伝えてくれた。


 身近な女性に、好意を伝えられると言うのは、嬉しい物だと思う。





















 では、僕は、陽葵さんに対してどういう感情を持っているのか。


 友人としての信頼は寄せている。友人として、ずっと仲良くしたいと言う気持ちは、強く持っている。


 でも、この感情が恋心なのかは、わからない。


 陽葵さんが、スカートの中を見せてきた時も、一緒にお風呂に入った事も、胸を触った事にもドキドキした。


 ドキドキした=好き なら、好きなのだろう。


 だけど、春乃さんのスカートの中を見てしまった時も、奈々さんのシャツ直しを見た時もドキドキした。


 つまりは、ドキドキした=好きでは無いという事だ。


 でも、今の流れに身を任せれば、陽葵さんと身体的な関係を持つ事も可能だろう。


 もしかしたら、関係を持つ事で、陽葵さんに対する感情の変化を感じる事ができるかもしれない。多分、陽葵さんは嫌がらない。


「陽葵さん」


 僕は、隣に座る陽葵さんの肩を掴んだ。


 陽葵さんは、目を閉じてキスを受け入れるかのような表情になった。


「白村くん。好きな人との初めてが、同情とかでいい?」


 以前、松本先輩から話された事の冒頭部分を思い出した。


 2人の初体験に関して、松本先輩から聞いた話。古河先輩は、自分が辛かった時に支えてくれたと美談にしていたが、松本先輩は、痛くて辛かった記憶しか無く、古河先輩の事が好きだから嘘を吐き続けていると。


 陽葵さんは、僕に、好意を寄せていると教えてくれた。


 だけど、僕は、陽葵さんの事が好きかどうかわからない。好きと言う感情が解らずに、高梨さんと男女交際して【別れ】を経験した。


 今、陽葵さんの事が好きか解らない状態で、Hをしてしまったら同じことの繰り返しになるし、陽葵さんに、松本先輩と同じ思いをさせるかもしれない。


 僕は、陽葵さんの肩に手を置いていたが、それを離して頬を引っ張った。


「いひぁいよ。詩季くん」


 陽葵さんは、期待を裏切られたと思ったのか、解放された頬を膨らませていた。


「すみません。陽葵さんが、僕に好意を伝えてくれたのは、嬉しいです。でも、僕は、陽葵さんの事を好きなのかが解らないんです」


 陽葵さんは、僕の言う事に、真剣な表情で聞いてくれる。


「そんな状態で身体の関係を持ってしまったら将来的に後悔すると思います」

「そうだよね」


 恐らく、陽葵さんも冷静になってから、この状況を理解したのだろう。


「そう言うのは、お互いの気持ちが固まった時にしたいというか……」

「詩季くん、大丈夫だよ。言いたい事解ってるから」

「はい。では、待っていてくれませんか。僕の気持ちが整理出来るまで」

「わかった」

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