103.髪の長さ
お風呂から上がった僕は、服を着てから自分の部屋に移動した。
そして、諸々、落ち着かせるところは落ち着かせて、ゴミを持ってリビングに移動して、捨てた。
陽葵さんは、まだ、お風呂かは上がっていなかったようで、何とか、ミッションコンプリートと言ったところだ。
色々とやばかった。
もしかしたら、健じぃから貰っていた、物の出番になっていたかもしれないかった。
リビングのソファに腰掛けると、テレビをつけてニュースをぼ〜と眺める。
ん?
そう言えば、僕の部屋には、何故か、陽葵さんの荷物らしきものが置いてあったような気がするが。
まぁ、気のせいだろう。
ガタン♪バタン♪
廊下から脱衣所に繋がるドアが、開いて閉まる音がした。
陽葵さんが、お風呂から上がったのだろう。
思い出してはいけない。
陽葵さんの胸の感触を!
陽葵さんは、友人として、僕と接してくれているのだから…………
本当に、友人として見ているのかな?
異性の友人だったとしても、自分の胸を触らせるかな。
もしかして、僕に好意がある?
好意があるなら、このような行動の理由にも合点が行く。
どうなんだろうか。
もし、陽葵さんが僕の事を好きだったとして、僕の気持ちはどうなのか。
1度、恋愛で失敗してしまったし、次は、失敗したくないな。
「あぁ〜〜詩季くん、髪の毛全然乾かしてないぃ〜〜」
リビングに入ってきた陽葵さんは、僕の髪を見ると脱衣所に戻ってドライヤーを持ってきた。
「はい、詩季くん。髪乾かすよ!髪長いんだからしっかり手入れしないとすぐ痛むよ」
髪は、大分伸びている。
片口位までは伸びていて、湯船に浸かる時は、伸びた髪を団子にしている。
何回もしていたら、自分で団子を作れるまでになってしまった。
慣れた手つきで、ドライヤーとブラシを使って僕の髪を手入れしてくれている。
「詩季くん、寝る時は、どうしてる?」
「基本的に、結んでないですね」
「おっけ」
髪を乾かし終えた、陽葵さんは、僕の隣に座り直した。
昨日も思ったが、同じシャンプー・リンスを使っているはずなのに、陽葵さんからは、いい匂いがするのは、何故なのだろうか。
「夏休みのどこかで、髪を切りに行こうと思ってます」
色々とやる事があって、髪は、入院したから伸ばしっぱなしだった。
流石に、そろそろ切りたい。
退院する時には、かなり伸びていて、家に帰った時に、静ばぁに肩口まで切って貰ってからは、肩口の長さで維持していた。
たが、この夏を過ごして思った。
暑すぎる。
そろそろ、切りに行きたいのだ。
「ダメだよ!」
陽葵さんに、即答で散髪はダメと言われてしまった。
「何で、ですか!」
「だって、詩季くんの髪のセット出来なくなるじゃん!」
「何という、私的な理由なんですか!」
「詩季くんの髪の毛のセットは、私の役割だよ」
確かに、学校ある日の毎朝の髪のセットは、陽葵さんにお願いしているが、いつの間に、陽葵さんの役割になっていたのか。
そして、陽葵さんが、僕の髪のセットが出来なくなるという理由で断られるとは微塵も思わなかった。
「……だったら、髪切った後も陽葵さんに髪のセットを頼みますから」
「長い髪も似合うと思うんだけどなぁ~~」
「陽葵さんに手入れをして貰う分には良いんですが、日常生活中に、少々、邪魔になって来たんですよ」
「長い髪慣れるよ?」
そう言うと、陽葵さんは、僕と同じ位の肩口まで伸ばしている髪を見せて来た。
「陽葵さんは、その髪の長さにしてどれ位ですか?」
「ずっと、この長さだね。お母さんに憧れてからだから」
「陽葵さんは、その髪のベテランなんですよ!僕は、1年目なのです!」
「詩季くんも慣れるよ!」
「僕に、10年以上も同じ髪の長さで居ろと言うのですか?」
陽葵さんは、うるうると言った視線で、僕を見てきている。そんなに、僕の髪の手入れが出来なくなるのが嫌なのだろうか。
「むぅ~~」
子どものような抗議の仕方をする陽葵さん。多分、これは、僕の負けだろう。
「解りました。高校3年になるまでは、この髪の長さを維持します」
「一生でいいんだけどなぁ~~」
せめて、一生は保留にして頂きたい。高校3年になれば、受験シーズンが始まる。そのタイミングで、身なりを整えると言う意味でも、髪は切らしてもらいたい。
「まぁ、いいか。その代わり + 期末テストのご褒美なんだけど……」
「おい、期末テストのご褒美で、一緒にお風呂入ったじゃないですか」
「詩季くんと一緒に寝たいんだけど……ダメ?」
陽葵さんは、多分、押し切ろうとして来ている。
多分、期末テストのご褒美だけでは、断られると踏んで、髪の長さの事も引き出してきたな。と言うか、髪の長さに関しては、僕が、妥協した方だと思うんですが。
一緒にお風呂に入った影響もあるだろうが、一緒に寝る事も本当ならドキドキ案件なのだろうが、冷静でいる自分が居る。
「陽菜とは、一緒に寝たから、私もダメ?」
「いいですよ」
多分、僕の部屋に陽葵さんの荷物が置いてあった時点で、これを狙っていたのだろう。
「よっしゃ~~」
陽葵さんは、ガッツポーズをしていた。
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