102.好きな人に……

 詩季くんと一緒に、お風呂に入る事になった。


 詩季くんが、身体を洗っている間に、私は客間から自分の荷物を詩季くんの部屋に移動させて、下着を脱いで、水着を身に付けてシャツを着る。


 ドキドキする。


 お泊りの際に、期末テストのご褒美としてお願いしようと思っていた事だったが、断られる事も覚悟していた。


 だけど、OKしてくれたのは嬉しかった。


 私自身、覚悟を決めていたと言えども、いざとなると恥ずかしい。


 時間的に、詩季くんが身体を洗い終えただろうタイミングで、脱衣所に移動した。移動すると詩季くんに確認をとって、OKが出たので、お風呂場に入る。


 詩季くんは、あまり食べないので、やせ型だと想像していたが、筋肉も男の子らしくついていた。これは、もっと食事量を増やせば、さらに筋肉が着くと思う。


 おっと、いけない。


 このままだと、詩季くんが冷えてしまう。


「詩季くん、足開ける?」


 詩季くんをサポートして湯船につかって貰った後に、私は、全身にシャワーを軽く浴びてから、詩季くんの足の間に、腰かけて彼の背中にもたれ掛かった。


 向かい合って、詩季くんの腹筋を見たらお風呂場が、私の鼻血で赤く染まる可能性があったから、そうしたが、直接、肌が触れあるのもヤバい。


 詩季くんのお家のお風呂場は、足が不自由な彼が1人で入れるように手すりなど色々取り付けられている。静子さんと健三さんの詩季くんに対する愛情の大きさがうかがえる。


 詩季くんは、腕を浴槽の縁に置いていたので、湯船に入れて私のお腹に置くように促した。


 お腹に、詩季くんの手の感覚がある。


 大好きな人に、バックハグして貰って包まれているようで嬉しい。


 詩季くんにもたれ掛かっているが、私のドキドキが伝わっていないか心配だ。詩季くんは、そう言った方面に関しては、余り表情を変えないからどう思っているか解らない所がある。


 すると、私のお尻付近に、何か、硬い物が当たる感触がした。


 多分、他の女子なら「気持ち悪い」だとか「変態!」と思うのだろうけど、私としては、嬉しいと思ってしまう。


 高梨さんに対して、「貴方とセックスを出来ません」と告げていた。その後に、女として見られないと告げられた時の、彼女の表情は、人生の終了を感じているかのようだった。


 だからこそ、詩季くんが、私でドキドキしてくれている証拠でもあるので、私としては嬉しいのだ。


 お互いが、この状況に慣れたタイミングで、詩季くんの妹さんである羽衣ちゃんの話になった。羽衣ちゃんに、イギリス人の彼氏が居る事を知って驚いた。


 詩季くん大好きっ子なイメージだったので、意外だったが、理由を聞いて、詩季くんと羽衣ちゃんの兄妹は、お互いがお互いを想い合っているんだなぁ~~と思った。


 そして、私は詩季くんに、聞いてみたいと思った。


 距離は、ゆっくりと詰めていく予定だったが、どうしても聞きたかった。


「ねぇ、詩季くん。……私のおっぱいどう思う?」

「んぐっ……!」


 詩季くんは、私の問いに驚いたようで、驚きを文字で表していた。それと同時に、落ち着いていた所も少し反応していた。


 普段は、クールな詩季くんが、私の身体で取り乱しているのは、面白くてイタズラしたくなってしまう。


 私は、詩季くんに片口から私の胸を見るように言った。詩季くんの心臓のからは、ドキドキが伝わってくる。多分、私のドキドキも伝わっているだろう。


 私は、着痩せするタイプだから日常的には、男子に胸に視線を向けられる事は無いが、中等部時代の体育の時間で、体操服に着替えた時は、サイズの問題もあってか嫌らしい視線を受けた。

 中等部時代に必須だった、水泳は特に嫌だった。ラッシュガードで隠しているとは言え、形が強調されてしまい男子から下品な視線を集めてしまった。


 だから、高等部の体操服を買うときに、上半身は、ワンサイズ大きめのを買って、胸が強調されるのを防いだ。


 男子のそう言う視線は、嫌だったけど、詩季くんに胸を見られるのは嫌じゃない。むしろ、詩季くんのドキドキが伝わって来て嬉しい気持ちになる。


 ダメだ。お母さんから貰った、ゴムを使う事になってもいいから、もう少し私を女だと意識させたい。ゆっくりと距離を詰める私の戦法は、一時的に破棄しよう。


 私は、詩季くんの手を取って、胸に当てた。


 突然の事で、詩季くんは、驚いて軽く揉んできた。変な声が出そうになるが、我慢した。


「私、おっぱいFカップあるよ……いひぁい」


 私もテンションがおかしい方向に行っていたのだろう。詩季くんに、胸のサイズを教えていた。そして、詩季くんは、私のほっぺを引っ張って暴走を止めてくれた。


「サイズは、聞いてません……のぼせそうなので、もう上がりますね」


 詩季くんは、少し早口で言うと、私の肩をポンポンと叩いたので、どいて欲しい合図だったのでどいたら浴槽にある手すりを上手に使って浴槽から出ていた。


 私は、頭がフリーズして動けなかった。もしかしたら、やり過ぎたかも知らない。そう、反省していると……


「そっその……陽葵さんの胸……少し、揉んじゃいましたけど……綺麗な形をしていましたし、柔らかかったです。嫌というか、むしろ、嬉しかったです。ただ、これ以上は、ドキドキが凄いので上がります」


 詩季くんから感想を言って貰えた。


 私も嬉しい気持ちが心の中に染み渡っている。


 ん?今の詩季くん……口調が、タメに近かったような。






 詩季くんが上がってから、私は、水着を脱いで身体を洗い出す。


 私は、最近、春乃ちゃんの事が気になっている。


 春乃ちゃんは、着痩せしないタイプなので、推定D以上はある胸が、制服と体操服の両方でもラインとして出てしまっている。


 春乃ちゃん自身は、中学校時代からそうだったから慣れていると言うが、可哀そうだと思う。


 余談だけど、春乃ちゃんも弟と妹想いなんだよね。


 この前、春乃さんがスカートの中に、毎日、体操ズボンを履かずにスパッツの理由を聞いたんだけど、弟と妹が、同じ高校に進学した場合に、おさがりとして利用できるかもしれないからだそうだ。

 だから、毎日、スカートの中に体操ズボン履いて、洗濯してを繰り返して色落ちしたのを渡すぐらいなら、なるべく新品に近い物を渡してあげたいそうだ。


 学年色の問題もあると思うが、丁度、弟さんの年齢が、私たちの学年色の青周期らしい。


 話しは戻って、そんな春乃ちゃんをさりげなくガードしているのは、陽翔なんだよな。そして、春乃ちゃんも陽翔に好意を持っていると思うんだけど。


 女の子と言うのは、そう言うのに敏感なんだよ。


 だから、春乃ちゃんと陽翔は、両想いだと思うんだけど、何でか、春乃ちゃんは、詩季くんとの距離を詰めようとしているのが、気がかりだ。

 生徒会かなんかの帰り道に、私の術中にハマってスパッツを詩季くんに見られて恥ずかしがっていたのに、リハビリの時は、恥ずかしがる詩季くんに構わず見せていた。まぁ、倒れた詩季くんを起き上がらせないといけなっかったから仕方が無いとも言えるが。


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