96.川の字
「いけぇ~~!!」
3人が、お風呂に入り終えると、リビングに置いてあるテレビを使って、アニメを鑑賞していた。
元々は、祖父母がドラマなどを録画して鑑賞する目的だけだったが、僕が一緒に暮らすことになって、HDMIに差し込むだけで、配信サイトのアニメを見ることが出来る機会を購入して付けてくれた。
配信サイトの契約に関しては、元々、僕の方でしていたのでログインさえすれば問題無かった。
僕は、幼馴染や皆の前では隠している(皆の前では、話す機会が無かっただけ……)が、重度のアニメオタクなのだ。
本音を言えば、グッズを買って部屋に飾りたい所だが、中等部時代は、幼馴染に意図的に隠していたこともあり買っていなかった。
高等部に上がってからは、買いに行きたいが、遠出をするだけの体力が無いのだ。
陽菜ちゃんが、今、ハマっているというアニメを見ているが、これは、高校1年生の僕でも面白いと思える作品だ。
これは、1人のタイミングで、配信分を一気見する必要がありそうだ。
「でも、詩季くん。意外だったよ。アニメの配信サイト契約してたんだね」
「そりゃ、ガチガチのオタクですから」
「そうなの!?」
陽葵さんは、予想以上の驚きの声を上げた。
「何で、そんなに驚くのですか」
「だって、意外だったから……」
「まぁ、話す機会が無かったですからね。中等部時代も隠していましたから」
僕は、インドア派で、他の3人はアウトドア派。
僕自身、休みの日は部屋に引きこもって1日アニメ鑑賞をしていたい派の人間なのだ。そりゃ、趣味が合わなくても仕方が無い。
「そうなんだ、意外な一面知れたなぁ~~」
陽葵さんは、何処か嬉しそうな表情になっていた。
「入院中も時間つぶしに見てたの?」
「見ていましたね。入院中の楽しみと言えば、アニメ鑑賞と陽葵さんたちのお見舞いだけでしたから」
まぁ、病院の消灯時間以降は、視聴できないので大人しく寝るしかなかったのだが。そのお陰もあって、夜更かししてまでアニメ鑑賞をしていないのは、自分を褒めたいと思う。
「て事は、女の子に水着姿に興味あるの?」
おいコラ。
自身の妹が居る前で、なんてこと聞きやがるんだ。
「ねぇ~~詩季兄ちゃん。お姉ちゃん、お兄ちゃんをボディーガードにして、私と水着買いに行ったもんねぇ~~」
「ちょっと、陽菜~~」
陽菜ちゃんにとっては、身近にあったイベントを話しているだけだが、陽葵さんには大きなダメージを与えていた。
と言うか、陽翔くん。
妹に、ここまでこき使われたのは、可哀そうだと思ったが、僕も羽衣に頼まれては、率先してボディーガードを引き受けたかもしれない。
まぁ、ボディーガードを引き受けた所で、守れるかって話ではあるが。
『 (白村詩季) 陽翔くん。陽葵さんのボディーガードお疲れ様です』
『 (陽翔) ん?』
陽翔くんから、直ぐに返信が返って来た。
『 (白村詩季) 陽菜ちゃんから聞きましたよ。兄妹で買い物に行ったんですよね』
『 (陽翔) あぁ、兄に産まれた運命だよ。と言うか、我慢できなくなったら襲っていいからな。勿論、避妊はしろよ』
陽翔くんやい。
そこは、可愛い妹を心配するべき展開では無いですかね。
そこから、21時を過ぎるまで、1時間暗いアニメ鑑賞をした。
「じゃ、陽菜。そろそろ、寝る準備するの」
陽菜ちゃんは、就寝の時間のようで、陽葵さんに準備をするように言われた。
かく言う僕も、22時には、寝てしまうので、今からが就寝準備時間になる。
「ねぇ、詩季兄ちゃん、一緒に寝たらダメ?」
「陽菜!」
陽菜ちゃんから一緒に寝たいとリクエストを頂いた。
うん。
さっき、陽葵さんと3人でお風呂に入りたいと言われた事に比べると、可愛いお願いで、叶えてあげる事が可能だ。
「なら、お姉ちゃんも一緒に、3人で寝る?」
陽菜ちゃんの要望をまとめるなら、3人で川の字で寝たいと言う事だろう。
「でも、詩季くん。床に直接だと……」
「そうですね。少ししんどいと思います」
「陽菜、詩季くんが、こうだから……ね?」
「うん。それなら仕方ないよね」
陽菜ちゃんは、がっかりした様子だった。
ダメだ。
この陽菜ちゃんの表情を見てしまっては、断る事は出来ない。
僕は、代替案を出すことにした。
「僕のベットで一緒でいいなら、陽菜ちゃんと2人で寝られると思います」
「――!いいの!」
さっきまでのしゅんとした表情から一変して、陽菜ちゃんは、嬉しそうな表情になった。
「詩季くん、ありがとう。陽菜のわがまま聞いてくれて」
「いぇいぇ。陽菜ちゃんにとってもいい思い出になって欲しいですからね」
「お姉ちゃんも、一緒に――」
「流石に、無理じゃないかな?詩季くんのベットがセミダブル位の大きさだとしても」
どうやら、陽菜ちゃんは、3人一緒に、寝ることに拘っているみたいだ。
「なら、布団を僕の部屋に敷けば、3人で寝る事になりませんか?」
「それでいこ!」
陽菜ちゃんの後押しに、陽葵さんは客間から布団一式を持って、僕の部屋の床に敷いた。
「陽菜、奥の方で寝てね。詩季くんが夜中にトイレ行きたくなった時のためにね」
「うん!」
3人で寝る準備を整えた頃には、既に22時を回っていた。
僕にとっては就寝時間になっていて、陽菜ちゃんにとってはかなり遅い時間になっていたので、一緒にベットに入って数分経ったら寝息をたて始めた。
「詩季くん、陽菜の我儘聞いてくれてありがとね」
「大丈夫です。羽衣の我儘に比べたら可愛い方です」
「良かった。……所で何だけど、詩季くんのお誕生日っていつ?」
「8月の31日ですね」
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