95.お風呂は一緒に?!

 午前中に、陽葵さんと陽菜ちゃんは夏休みの課題を終わらせて、昼食の時間となった。


 意外にも集中出来たのか陽菜ちゃんは、おばさんに決められた1日分の課題量を3日分こなしていた。というか、僕に撫でて貰いたいがために頑張っていたように見える。


 まぁ、これで、明日迎えに来るおばさんにも褒めて貰える事だろう。


「陽菜、詩季くんの前に持って行って」

「はぁ~い」


 昼食は、陽葵さんがメインで作って、陽菜ちゃんが隣で野菜の皮むきなどを手伝っていた。


「詩季兄ちゃん、どうぞ!」

「ありがとうございます」


 昼食のメニューは、オムライスだ。


 陽菜ちゃんが置いてくれたオムライスからは、美味しそうな匂いが鼻に入り、早く味わいたいという欲求だ溢れ出てくる。


「うへへぇ~~」


 陽菜ちゃんの頭を撫でてあげる。


 陽菜ちゃんへのご褒美となっている頭なでなで。


 陽菜ちゃんが、嬉しそうに表情を崩している。それが、可愛くて仕方が無い。


 ただ、その反面として、陽葵さんからの釘を刺すような視線を浴びてしまう。


 陽菜ちゃんが、3人分のオムライスを運び、スープを陽葵さんが運んだので、昼食を食べ始める。


 僕の向かい側に、陽葵さんと陽菜ちゃんが座った。


「2人とも手を合わせて下さい」


 陽菜ちゃんの号令に従って手を合わせる。


「いただきます!」

「「いただきます!!」」


 オムライスをスプーンで1口分取って口に運ぶ。


 うん、美味しい。


「ねぇ、詩季くん。どう?」

「美味しいですよ」


 陽葵さんに、オムライスの感想について聞かれたので素直に美味しいと答える。


 陽葵さんは、それだけで満足そうで、陽菜ちゃんの頭を撫でていた時に向けてきていた釘を刺す視線は、無くなっていた。


 ただ、本当に美味しかった。


 どんどん食は進み、あっという間に完食にした。


 ただ、オムライスだけでお腹が満腹に近くなり、スープは、少し苦労したが美味しかったので何とか食べ切る事が出来た。


 昼食を食べ終えると、陽菜ちゃんのお遊びモード全開だ。


 時折、休憩を挟みながら、おままごと(陽葵さんにとって羞恥プレイに近い)をしたり、小学校で流行っているというゲームなどをした過ごしていると、あっという間に、時計の針は、16時を過ぎていた。


「じゃ、夕ご飯作るね。陽菜、お手伝いしてくれる?」

「うん!」


 陽葵さんと陽菜ちゃんは、2人で家のキッチンへと移動した。


 まだ、16時を過ぎたばかりだと言うのに、もう夕ご飯の準備を始めているのだが、一体、何を作るつもりなのだろう。


 ちなみに、2泊3日分の食材は祖父母が、陽葵さんからの要望の物を購入済だそうだ。


 そして、陽菜ちゃんも泊まることになって必要になった分は、別途買ってきていた。


「詩季兄ちゃんも、一緒に作ろぉ〜〜」


 陽菜ちゃんが、大きいタッパーを1つと大きなボウルに入ったひき肉と玉ねぎとパン粉に卵を混ぜた物を持ってきた。


 これで、今日の晩御飯のメニューは、はっきりした。


「晩御飯は、ハンバーグですか?」

「そうだよ、バンバーグなら、3人で作ること出来るじゃん?詩季くん少し、立ってくれる?」


 陽葵さんは、そう言うと僕が座っていた椅子を真ん中に少しずらして向かいの椅子を持ってきた。


 そして、


 陽葵さん 僕 陽菜ちゃん


 と3人並んで座った。


 3人で、ハンバーグを成形していく。


 僕と陽葵さんは、ほとんど同じサイズ(僕の方が少し大きいかな?)だった。


 そして、陽菜ちゃんが成形しているハンバーグは、手のひらのサイズに合った可愛いサイズだった。


 僕と陽葵さんは、お互いの顔を見合って微笑んだのだった。






 夕ご飯のハンバーグは、美味しかった。


 成形が終わると、後は、陽葵さんが調理をしてくれた。


 何故か、僕のお皿には、陽葵さんと陽菜ちゃんが成形したハンバーグがメインで、僕が成形した大きめのハンバーグを2人で取り合っていたのが面白かった。


 じゃんけんまでしていたのが、ある種面白かった。


「じゃ、陽菜。お風呂入ろうか。詩季くん、先大丈夫なの?」

「はい。お客様なのでどうぞ」

「ねぇ〜〜詩季兄ちゃんも一緒じゃダメ?」

「んぐぅ――!」

「ゴホッ!ゴボッ!」


 陽菜ちゃんにとっては、大好きな人と3人で一緒にお風呂に入る = お父さんお母さんと一緒にお風呂に入る感覚なのだろうが、僕たちは、そうはいかない。


 本当に、純粋な小学1年生の攻撃は、ダメージは底知れない。


 陽葵さんは、顔を真っ赤にしており、僕は、飲んでいた紅茶を吹き出すのを我慢した影響で咳き込んでしまった。


「陽菜、何言うの……!」

「だって、お姉ちゃん。この前買った水着持って来ていたじゃん」

「ちょっと、陽菜~~お風呂行くよ!詩季くんとは、別々に入るから」


 陽葵さんは、顔を真っ赤にしながら陽菜ちゃんをお風呂に向かって行った。


 陽菜ちゃんの暴露によると、陽葵さんは水着を持って来ている様だ。


 恐らく、学校の屋内プールで遊ぶ時に着るために買った水着だろう。この前の電話で、胸のサイズが変わったとか言っていたし。


 どうして、こんな事だけは、覚えているのだろうか。


 でも、何で、水着を持って来たのだろうか。


 買った水着を先に、僕に見せてくれるという事なのだろうか。


 僕は、この2泊3日間、理性の修行をしなければいけないのかもしれない。

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