94.夏休みの宿題
「詩季お兄ちゃん、ここは?」
「ここはねぇ、こうするんだよ」
「ありがとう!」
今は、リビングで陽菜ちゃんと陽葵さんは、学校の課題を進めている。
祖父母は、健じぃが、僕に例の物を渡した30分後位に旅行に旅立って行った。
少々、健じぃにムカついたので、静ばぁに、陽葵さんの事を変な目で見ていた旨をメッセージで密告しておいた。
せいぜい、旅行先で詰められるがよい。
陽菜ちゃんがわからない問題があれば、僕に聞いてくれて、僕が教えている。
どうやら、陽菜ちゃんのお泊まりの条件が、僕と陽葵さんの言う事を聞くことと、午前中は、夏休みの課題をする事だったみたいだ。
その約束をする時に、おばさんは、陽葵さんの事をチラッと見ていたので、陽葵さん自身、「私も含まれてる約束」だと、直感したみたいだ。
ちなみに、僕は、藤ノ宮大学の過去問を解いている。
この前、藤宮高校との話し合いで、この学校に興味を持ち、藤宮高校は、藤ノ宮大学の付属高校なので、大学の入試問題を解いていた。
「ねぇ、詩季くん。夏休みの課題終わったの?」
「??夏休みに入る前には、終わらせましたよ」
夏休みの課題は、期末テストが終わった次の授業に各教科かは配布されていた。
なので、僕は、終業式を迎えるまでに、夏休みの課題を全て終わらせていた。
「へっ……早くない?!」
陽葵さんは、驚いた様子だ。
「結構な量あったよね……?!」
夏休みの課題は、中等部時代もかなりあったが、高等部でしかも進学クラスになっているのでかなりの量をこなさないといけない。
「春乃さんも瑛太くんも終わらせたみたいですよ?」
僕は、春乃さんと瑛太くんとのトークルームを見せた。
2人とも、僕に遅れること幾許、7月中には課題を終わらせたみたいだ。
放課後に、何もしていない僕とは違い、春乃さんは、アルバイトで、瑛太くんは、部活を頑張っている中で7月中に終わらせるのは早い方だろう。
「う、うそ……」
「これは、2学期の頭の実力テストでは、陽葵さんのトップ3の維持は厳しいかもしれませんね」
「むぐぐ……」
元はと言えば、瑛太くんが大博打に敗れた事が幸いしての陽葵さんの3位だ。
ただ、陽葵さんの頑張りが無かったという訳ではない。
本気を出した瑛太くんに、今の課題を進めるペースなら間違いなく瑛太くんは、3位以内に返り咲くだろう。
「詩季くんは、そこから勉強するの?」
「色んな大学の過去問を解きますよ。これが、いい復習になるんです」
「へっへぇ〜〜」
何だろう。
僕としては、当たり前の事を話しているだけなのだが、陽葵さんは、ドン引きしているように見える。
「ねぇ〜〜難しいお話してないで、詩季お兄ちゃん、この問題は、どしたらいい?」
痺れを切らした陽菜ちゃんが、わからない問題を聞いてきた事で、この会話は、一旦終わった。
ちなみに、数学の入試問題の過去問を解いてみたが、正答率は、55%と言った所だ。
解けなかった問題は、3年生の範囲を必要とする応用問題で、1・2年生の範囲の問題は、粗方解くことが出来た。
流石、名門大学なだけはある。
殆どが、高校3年生レベルの学力を身に付けたうえでの応用力を試されている。
間違いなく、同じ高等学校でも藤宮の方がレベルは上だ。
何たって、向こうは進学クラスの上に、特別進学クラスがあって、先日、お会いした生徒会の1・2年生は、全員、特別進学クラスだそうだ。
「ねぇ、詩季くん。この問題、教えてくれないかな?」
陽葵さんから課題の解らない所の質疑を受けた。
陽葵さんが質問して来たのは、英語の応用問題だ。
陽葵さんは、問題集の僕の近くまで持って来て質問をしてきたので、自然と距離が近くなる。それと同時に、ドキドキも増している。
陽葵さんが、隣に居るのには慣れているが、今日は、陽葵さんの服装が問題だ。
何でか解らないが、今日の陽葵さんは、身体のラインが際立つ服装をしている。多分、陽菜ちゃんと遊ぶことを視野に入れて動きやすい服装にしているのだろうけど、僕にとっては刺激が強い。
何でだろうか。
高梨さんとの交際中には、こんなにドキドキした事は無かった。
だけど、陽葵さんにはドキドキしてしまっている。
これは、僕の成長によってこういう欲求が生まれてしまっているのだろうか。もしくは、環境の変化によるものだろうか。
隣に座る陽葵さんからは、いい匂いがするし、陽葵さんの胸の膨らみにも視線が泳いでしまう。
「ここは、こう翻訳してみてはどうですか?」
「わかった!」
問題を理解できた陽葵さんは、僕との距離を開けてくれた。
何とか理性を保つことが出来て一安心だ。
この2泊3日も陽葵さんのお泊り期間……僕の理性を何とか保たないといけない。
陽菜ちゃんは、1泊の予定だけどおばさんに頼んでもう1泊してもらう事にするか……
色々と僕の理性を吹き飛ばすために、色々考えるが、どれも僕の理性を吹き飛ばしかねない結論に辿り着いてしまう。
「ねぇ~~ねぇ~~詩季兄ちゃん!今日の課題、終わったぁ~~」
丁度いい所で、天使の笑みを浮かべた陽菜ちゃんが、今日の分の課題が終った事を褒めて欲しそうに頭をこちらに傾けてきたので、撫でてあげる。
助かった。
陽菜ちゃんが、居てくれた事で理性を保つことが出来た。
陽菜ちゃんが大天使様なら陽葵さんは、大悪魔と言った所だ。
あくまで、僕の心の鍵を守れるかどうかなのだが。
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