93.陽菜ちゃん参上

「詩季お兄ちゃ~ん!」


 8月に入って本格的に熱くなってきたこの頃に、家に、陽葵さんと陽菜ちゃんが、やって来た。


「いらっしゃい」


 陽菜ちゃんは、僕の足元に抱き着いて来た。僕が倒れないレベルでの優しさだ。


「陽葵ちゃんに陽菜ちゃん、ようこそ~~」


 静ばぁが、2人の出迎えに、廊下にやって来た。


「今日から明後日まで詩季の事よろしくね」

「はい!」


 静ばぁと健じぃは、今日から2泊3日で友人と旅行に行く事になっている。そして、陽葵さんが、家に2泊3日お泊りするイベントの初日だ。


 陽葵さんは、自分のお泊りセットと陽菜ちゃんのお泊りセットを持っていた。


「陽葵さん?」

「ごめんねぇ~~詩季くん。急に、陽菜もお泊りする事になって……」

「大丈夫ですけど、何があったんですか?」


 陽菜ちゃんのお泊りは、昨日に急に決まった。




〇〇〇


「お母さん、他に何が居るかな?」

「2日分の着替えと、夏休みの課題も持って行きなさい。まぁ、詩季くんと何かしたいならそれも持って行ったら?」


 私は、明日からの詩季くんの家でのお泊りの準備を始めている。


 詩季くんから2人で遊びに行く事を提案されたが、静子さんと健三さんに反対された。そして、その代案として2人がご友人と旅行に行っている間に、詩季くんのお家でお泊りして面倒を見てくれないかと言われた。


 元々は、私の家に詩季くんがお邪魔する予定だったが、2人が気を効かせてくれた。


 私としては、願ったり叶ったりだ。


 2泊3日も詩季くんと2人で同じ屋根の下で暮らすのだ。


 絶好のアピールタイムだ。


 私は、明日からの詩季くんのお家へのお泊りの準備を進めていた。


「んにぁ〜〜あれ、お姉ちゃん何処か行くの?」


 お昼寝をしていたはずの陽菜が起きてきた。


 私は、陽菜が寝ている時間を狙って準備をしていた。


 何故なら……


「う、うん。お友達のお家に泊まりに行くの」

「もしかして、詩季お兄ちゃんのお家?」


 ギクッ!


 やはり、直ぐに感ずいて来た。


 この妹、時折、本当に、小学1年生かと疑いたくなる程に、察しが良いのだ。


 そして、詩季くんに関することになると、さらに察しが良くなる。


「さ、さぁ〜〜どうかなぁ〜〜」

「あ、詩季お兄ちゃんのお家だ。私もお泊まり行きたい!」


 やっぱり、こうなった!


 陽菜は、詩季くんに懐いている。


 私が、詩季くんのお家に泊まりに行くと分かれば、ついて行きたがるに決まってる。


「えっ、でも、急に、陽菜もお泊まりは、迷惑になると――」

「――陽葵、静子さんから、陽菜ちゃんもいいよだって!」

「わぁ〜い!」


 お母さん!


 確認が、早すぎるよぉ〜〜


 折角の詩季くんとの2人きりがぁ〜〜


 私は、詩季くんとの2人きりが崩れた事に、落ち込みを隠せない。


 可愛い妹の頼みなら仕方が無い部分とあるのだけどもだ。


「ムゥ〜〜詩季くんと2人きりが……」


 高校1年生の私が、ムキになるなと言う話ではあるが、楽しみにしていた分仕方がないと思う。


「でもまぁ〜〜1日だけ泊まって、次の日は帰る!」


 あれ?


 さっきまで、悪魔に見えた陽菜が、天使に見える。


「えっ、陽菜それでいいの?」

「うん。だって、お姉ちゃんも詩季お兄ちゃんと2人がいいんでしょ?1泊するのは、私に黙って泊まりに行こうとした罰だよ」

「……本音は?」

「私も、詩季お兄ちゃんとお泊まりがしたい!」


 私は、陽菜を抱きしめたのだ。




〇〇〇


「という事が、あったの」

「あはは、陽菜ちゃんの押しに負けましたか」


 急に、陽菜ちゃんも1泊だけお泊まりする事になったので理由を陽葵さんに聞いたが、何とも可愛い理由では無いか。


 そして、陽菜ちゃんはご機嫌かご様子なので、良かった。


「明日、お母さんが、陽菜を迎えに来てくれて、その時に、詩季くんの様子も確認してくれます」

「ありがたいねぇ〜〜感謝だよ」


 陽葵さんは、陽菜ちゃんと2人が宿泊する予定の客間に自分達の荷物を置きに行った。


 陽菜ちゃんは、可愛いワンピースを着ていて、陽葵さんは、陽菜ちゃんと遊ぶ事を想定してジーパンにTシャツとラフな格好をしていた。


 ラフな格好なのに、色気がやばかった。


 ジーパンに関しては、ブカブカでは無く、ピチピチタイプのを着ていたので、お尻のラインが出ていて、目のやり場に困る。


「詩季よ。こっちに来るのだ」


 何だか、健じぃが、面白そうにな表情を浮かべながら、僕の部屋に手招きをする。


「詩季よ。今日の陽葵ちゃんは、大変、べっぴんさんじゃ。色気もやばい。特に、あのおし――痛ァ」


 僕は、自身の歳を弁えろと言わんばかりに、健じぃに、手刀をお見舞いした。


「おい、おじいちゃんに、手刀お見舞いする孫がどこにいるんじゃ!」

「人のお友達をそんな目で見る祖父は、何処に居るんですかね?」


 いい歳をしているのに、何を言っているのだろうかと思う。


「ゴホン。話を戻そう。陽葵ちゃんは、魅力的じゃ……詩季や、手刀の構えを辞めるのじゃ」

「次に、何を言うかでこの手の行方は変わりますよ?」

「……とにかくじゃ、これは、持っておけ」


 すると、健じぃは、パッケージに、0.01と描かれた箱を手渡してきた。


 男女が、エッチな事をする時に使う俗に言うコンドームと言う奴だ。


 僕は、手刀をお見舞いしようとするが、健じぃが、ガードした。


「……もしもの時は、使うんじゃぞ。そういう事で、1番被害を受けるのは、女性なんじゃ」


 僕は、手刀をお見舞いしようとした手を緩めた。


 これは、受け取らないと健じぃは、引かないと思うので、受け取って机の引き出しの奥にしまっておく。

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