87.水着
グループ通話を終えた。
学校のプールで、皆で遊ぶことになった。まぁ、学校のプール清掃をするという条件付きだけど。
ブー♪ブー♪ブー♪
電話が掛かって来た。
スマホの表示を見たら、陽葵さんからの電話だった。
「何ですか、陽葵さん」
『ごめんね、寝ようとしてた?』
「そうですね、もう寝る時間ですから」
時刻は、22時を過ぎていた。
入院生活中は、夜は1人になっていて暇だったので、22時には寝ていた。その生活リズムが染みついており、夜更かしする事無く、健康優良児並みの睡眠をとるようになっていた。
正直に言うと、けっこう眠い。
明日は、生徒会が無いので1日休みなのでゆっくり寝られるとは言え眠い。
僕は、ベットに寝転びながら陽葵さんと会話する事にする。
スマホを充電器に差し込んで会話を続けていく。
『ごめんね?』
「大丈夫ですよ。所で、どうしたんですか?」
『ねぇ、詩季くん。私、どんな水着が似合うかな?去年までのは、サイズが合わなくなったから買い替えようと思って。主に胸が』
最後の方は、女の子同士の会話なら納得出来るが、何故、男の僕に対してそんな事を言うのだろうか。
『春乃ちゃんに言ってたみたいに、あんまり露出の少ない方がいいの?』
「う〜ん。露出が、多いのは、嫌いではないですよ。僕も男の子なので、そういうのにも興味はあります」
『でも、谷間は、隠して欲しいんだよね?』
「目のやり場に困りますからね。友人をそういう目で見たくはありませんから」
いくら気心知れた友人の女性であっても、高校生のそういう欲求には抗えない。
水着だったとしても、露出している肌は見てしまうものだ。
まぁ、プールで水着になると言うのは、大事な所以外の肌を見られる事を了承している場とはいえ、ジロジロ見るのもマナー違反だ。
そして、高校生になって新たに出来た友人とは、仲良くしたい。
だからこそだ。
奈々さんは、彼氏である瑛太くんがガードしてくれるから見逃すとしても、陽葵さんと春乃さんには、露出を控えて貰いたいと言う思いが強い。
『じゃぁ、2人きりなら見たいの?』
「そうですね、深い関係にあったら見たいですね」
『ふ〜ん。そうなんだ』
「だって、失礼じゃないですか。友人として接してくれているのに、性的に目で見るのは」
『ぶぅ〜〜』
何だか、陽葵さんが、不満を込めた声を発している。
『ねぇ、話を戻すけど、私には、どんな水着が似合うかな?』
そう言えばそうだ。
話が逸れたが、陽葵さんは、僕にどんな水着が似合うかを聞いてきたのだ。
うん。
陽葵さんなら、どんな水着でも似合うと思う。
制服姿でも陽葵さんのスタイルの良さは見てわかる。体操服姿なら尚更、よく見える。
そして、体操服だと陽葵さんの胸の膨らみが制服以上に強調されている。
陽葵さんが、着痩せするタイプだと予想が出来る。
そんな陽葵さんが、水着を着る事は、更に、陽葵さんの身体のラインが出るという事だ。
確かに、陽葵さんの胸の大きさや身体のラインを見たくないと言ったら嘘になるし、見たいに決まっている。
それは、年頃の男の子として当然の欲求だと思う。だから、その欲求を我慢しないといけない。
だけど、陽葵さんに、建前を話すのも嫌だと思ってしまう。
だから、陽葵さんの問いには、素直に答えようと思う。
「陽葵さんは、スタイルもいいですし……ビキニでも似合うと思います。フリルがついていたら可愛いと思います」
『それって、谷間は?』
「良いと思います。というか、色気がやばいと思うので、気絶するかもですね」
『あはは!でも、皆の前だとあまり露出が少ない方が良いんだよね?』
「そうですね」
何なんだろう、この水着に関するヒアリングは。
今、話した僕好みの水着を陽葵さんが着てくれると言うのだろうか。
だとしても、人前は、遠慮して欲しいと思う。
『ねぇ、私の水着姿見たい?』
「…………」
ある意味、究極な質問が来てしまった。
まぁ、ここまで来たんだ。
正直に話すしかない。
「見たいです。機会があれば、露出が少ない方も……」
『はぅっ……!』
言っていて、僕自身、何を言っているのか分からない。
恐らく、電話越しで2人とも赤面しているのだろう。
「陽葵さん。このお話、終わりにしませんか?」
『そ、そうだね』
陽葵さんも同じ考えだったようで、話題を変えて、のんびりとお話をする。
学校の話題や陽菜ちゃんのお家での様子等々、陽葵さんとの会話は、途切れる事はない。
「あぁ、そうだ」
『なに』
「次の生徒会が終った後に、病院に行く事になりまして……」
『うん、ついて行くよ。あっ、陽翔もいるなら付き合わせるけど……』
「いえ、行き慣れた場所なら大丈夫だから、陽葵さんと2人でいいと言われました」
以前、陽葵さんと2人で遊ぶことはダメだと言われた。
そこでの補足は、行き慣れていない場所に2人で行って不測の事態になった時の心配があったが、病院となると幾度となく通っている道なので、陽葵さんと2人でも大丈夫だそうだ。
『お母さんにも、声かけとくね。おかあさぁ~ん』
善は急げと言わんばかりに、陽葵さんはおばさんに、確認を取っていた。
電話口で、おばさんが、『静子さんから、詩季くんの通院の予定は聞いてるから調子次第では、車出す準備してる』と帰ってきていた。
本当に、静ばぁは、根回しが上手いな。
ほんの、数分陽葵さんと会話をしなかっただけで、就寝時間を過ぎた僕の身体は限界を迎えていた。
『詩季くん、お母さんも大丈夫だよ~~!』
僕は、返事をしなかった。
「ん~~」
代わりに、寝息を立てていた。
『あれ、詩季くん?』
『陽葵、詩季くんねたんじゃない?』
『あぁ、そうか。おやすみ、詩季くん』
そう言って、陽葵さんは、電話を切った。それと同時に、自室の部屋の電気も消えた。
〇〇〇
「本当に、あの子は鈍感ねぇ~~。まぁ、その鈍感さが、良かったのかもね。あの子が、イケイケドンドンで、陽葵ちゃんの詩季への好感度ならもう一線超えていてもおかしくなかったからね」
「いやぁ、詩季は、元々しっかりした子だ。例え、陽葵ちゃんと交際したとしてもしっかり、避妊するさ」
詩季が寝た事を確認した、祖父母は、2階になった寝室で詩季の事を話していたのだった。
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