88.生徒会に呼んだ理由
「では、それぞれ役割に別れて仕事を始めよう」
古河先輩の号令で、僕達は、仕事を始めた。
僕は、松本先輩の下に就いて業務を行っている。
これでは、会長補佐ではなく副会長補佐ではないのか。
陽葵さんと春乃さんは、広報の仕事として、これまで、庶務の星川先輩が兼務して来た生徒会新聞の制作を行っている。
僕は、藤宮高校とのクリスマスイベントに関しての話し合いのための準備を2・3年生の生徒会メンバーと行っている。
会場に関しては、既に、押さえてあるようで、予算額や催し物に関してを詰めていく事になりそうだ。
「1・2年生で、何か、意見あるか?」
「会長、僕は――」
「私は――」
古河先輩の問い掛けに、橋渡先輩と星川先輩が意見を言っている。
2人とも凄い剣幕だなぁ~~と思う。
何だか、古河先輩の後継者を争っているように感じる。
まぁ、今年の9月で任期が切れる古河先輩の後継者ともなれば、2年生の生徒会メンバーが筆頭候補になって来るのは当然の流れである。
そして、2人の行動を見るに、古河先輩は、自身の後継者を選定していないように思う。まぁ、古河先輩に後継者認定されたとしても、生徒会長選挙に勝たないと意味が無いのだけど。
確かに、カリスマ生徒会長と評される古河先輩の後ろ盾があれば、生徒会長選挙では有利に働く事は、間違いない。
「それで、白村は、何か意見あるか?」
古河先輩から話を振られた。
ここまで、大人しくていた、僕に対して、何かしら発言をせよという圧力に感じる。
「そうですね、橋渡先輩に星川先輩の意見に反対する形になりますが、一介の高校生同士の交流会ですし、想定される予算額だと、夕食を食べながらの交流会が妥当かと」
橋渡先輩と星川先輩は、何かしらのゲストを呼んでの鑑賞会を提案していた。
「でも、それじゃ、イベントとしての盛り上がりが無くないか?」
橋渡先輩が、僕の意見に対する疑問を投げかけてきた。
「盛り上がりという部分では、他校との交流会がある時点であると思います。それに、両校の交流会なら両校生徒の交流が主な目的です。芸術鑑賞は、必要ないかと。そこに、予算を割くぐらいなら、食事などに回した方がいいと思います」
「――」
「橋渡、何か、反対意見はあるか?」
「――ありません」
反応を示さない、橋渡先輩に、古河先輩が結論を出させた。
「OK。藤宮への提案は、白村案にしよう」
僕の案が、採用された。
新参者が、全てを持って行った状況は、あまり面白くはないだろう。
星川先輩は、表情を変えていないが、橋渡先輩は、悔しそうだ。
「んまぁ〜〜いい時間だ。少し、休憩にするか。1年ガールズも休め」
遠くで、生徒会新聞を作っていた陽葵さん達も休憩する事になった。
「ねぇ、白村くん。少し、いいかな?」
松本先輩に呼ばれた。
以前の、お話の件といい、何かしら、僕の事を気にかけているように感じる。
「わかりました」
陽葵さんには、断りを入れて松本先輩について行く。
「ちょっと、白村くんのお話あるから、戻るの遅れるかも」
「んあぁ、最近、お前ら仲良いな」
「後輩の面倒を見るのは私の役目じゃない?あっ、住吉ちゃん、これ、私の連絡先」
そう言いながら、松本先輩は、住吉さんに自身の連絡先を渡していた。
「あぁ、西原ちゃんにも教えといて」
僕と松本先輩は、以前、2人で話した資料室に入った。
「今回も2人の惚気を聞かされるのでしょうか?」
「そうじゃないよ。裕大が、君を生徒会に入れた理由だよ」
「粗方、2年生の2人が自身の後継者としら心もとないんでしょう?」
「あら、わかるんだ」
予想は、していた。
僕の事情があったからだとしても、こんな中途半端な時期に生徒会に入る事になるのには、何かしらの思惑はあると。
「まぁ、そうだよ。2年生の2人が頼りなさすぎるから2人に刺激を入れるために君を入れた。あわよくば、1年生ながら生徒会長になっても構わない」
「僕だけって事は、陽葵さん達はついでですか?」
松本先輩の、言葉に関して、確認を取らないといけない部分があったので問い詰める。
大事なお友達を悪く言うなら、先輩相手でも言う事は言わないといけない。
「ごめん、説明不足だったね。君のライバル兼サポート役だよ。白村くん、1人だと不安だろう?」
松本先輩の答えに、臨戦態勢は解除しても良いと判断した。
「白村くんだけを生徒会に入れてしまえば、対外的にも内側でもライバル居ないだろう?まぁ、君と交流ある人達は、皆、成績が良かったからね」
陽葵さんと春乃さんは、僕のサポート役兼ライバルとして生徒会に入ってもらったみたいだ。
確かに、春乃さんとは、学校生活から良き競争相手となってくれている。
「それに、中等部から上がってきた天才。高等部から入学してきた天才。好きな人のために努力した天才。この3人が、生徒会で切磋琢磨すれば面白そうじゃない?」
中等部から上がってきた天才は、僕で、高等部から上がってきた天才が、春乃さんなら、好きな人のために努力した天才は、陽葵さんか?
陽葵さんに、好きな人?
もしかして、僕?
な訳ないか。
まだ、そうだと決めつけるだけの確証はないのだから、変に期待してもダメだろう。
「それで、他には、あるのですか?」
「……何かな?」
松本先輩は、少しの間をおいて、僕を生徒会に入れた理由は他にあるの?という意味を込めた返事をしてきた。
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