85.後継者候補
「はぁ〜〜まぁ、いい。今日2つ目のお仕事だ」
どうやら、今日は、業務を教わるだけじゃなかったみたいだ。
まぁ、僕は、松本先輩に、忠告を受けただけで、会長補佐の仕事は、「裕大がやらかしたらしばけ!」と言う一言で済まされただけだ。
「まぁ、こっちの方が、本題に近いんだがな」
すると、松本先輩が、僕たちにホッチキス止めされたプリントを配った。
それは、2年生の先輩方にも配られたので、2年生の先輩方も初耳なのだろう。
「今年のクリスマスに向けて、藤宮と合同でイベントをする事になった」
古河先輩が話した、「藤宮」とは私立藤宮学院高等学校で、僕が通っている桜宮学院と同じかそれ以上の名門校だ。
ここが中高一貫なら、藤宮は、高校が大学に付属しているのだ。
この学校のややこしい所は、校名に、〜〜大学付属と付いていない上に、藤ノ宮大学の付属の高校が、藤宮学院高等学校なのだ。
よくあるパターンとして、ここの進学クラスから藤ノ宮大学へ進学する事もある。
そして、藤宮と桜宮の2年生の生徒の中で希望者の中で、クリスマスパーティーで交流を図るという企画だ。
「古河先輩。この企画は……」
「おぉ、白村。いい視点を持ってるな。そうだ、次期生徒会に引き継ぐ案件だ」
古河内閣生徒会は、9月の体育祭で任期が満了して、10月から新たな内閣の生徒会が発足する事になる。
つまりは、この案件は次の生徒会に引き継ぐ案件なのだ。
「だから、今度の藤宮の生徒会との話し合いには、2年生の2人と白村にも参加してもらう」
話し合いへの参加は、2年生の先輩方と僕が指名された。つまりは、陽葵さんと春乃さんは、参加出来ないと言うことだ。
「1年生は、僕だけですか?」
「そうだ。何か、不満か?」
「しいて言うなら、松本先輩が、格好つけてはなしたらカッコいいのに、古河先輩が格好つけているのが、変だと思っただけです」
「んだとぉ~~」
「裕大、適正な評価をされて文句言わない。ほら、2年生の2人も同じ顔してる」
不満気だった古河先輩は、松本先輩にも追い打ちを掛けられてかなりのダメージを受けていた。
「藤宮との話し合いは、来週だから、白村は出席する事。1年生2人は、話し合いに参加出来ないから、その日は休みだ。だが、白村のサポートなら話し合い中は、生徒会室への待機は大丈夫だ」
この話を終えた事で、本日の生徒会活動は終了になった。
2年生の先輩方は、それぞれ帰宅していき、古河先輩と松本先輩の2人は、デートに行くようだ。
僕達3人は、一緒に帰ることにした。
春乃さんは、終始悔しそうな表情を見せていた。
「春乃ちゃん、どうしたの?悔しそうにしてるけど?」
陽葵さんは、何か面白そうな物を見つけたかの如く、春乃さんをイジリ倒している。陽葵さんは、M気質が強いと思ったが、場合によってはS気質になるのかもしれない。
「だって、悔しいじゃない?」
「悔しいって?」
「まぁ~~陽葵ちゃんは、詩季くんと一緒に居らればそれで良いんだもんね?」
グサッ!
陽葵さんは、カウンターパンチを喰らっていた。
「わ、私だって、生徒会に入ったからには、頑張るよ!それで、春乃ちゃんは何に悔しがってんの?」
「それはさぁ、詩季くんの方が、私たちより期待されている事が悔しいんだけど?」
確かに、古河先輩は、僕の事を買っているように見える。
「……そうなの?」
陽葵さんは、ある種大物なように見える。
春乃さんは、少し呆れ気味に僕の顔を見て来た。まるで、「いつも苦労、お疲れ様」と言わんばかりの表情になっていた。
「だってさぁ、私たちは広報とその補佐で、詩季くんは、会長補佐だよ。2年生の先輩方……松本先輩より役職の序列的には、上なんだよ」
「……!!」
陽葵さんは、今気が付いたようだ。
「……あぁ、会長補佐って事は、古河先輩の下なんか!」
本当に、ある種の大物だろう。陽葵さんと言う女の子は。
「それにさぁ、藤宮高校とのクリスマスパーティーの打ち合わせも、私たちは参加出来なくて、詩季くんは、参加するじゃん?古河先輩が、最初に言っていた事覚えているよね?」
最初に話をしていた事……
それは、この案件は、古河先輩から次の生徒会に引き継がれる案件だという事だ。
「つまりはさぁ~~今度の話し合いに参加する2年生の先輩方と詩季くんは、古河先輩に自身の後継候補と見られているとも言えなくない?」
なるほど、そういう見方もあるのか。
現生徒会から次期生徒会に引き継がれる案件ならその場に立ち会う後輩の生徒会メンバーは、実質的な古河先輩の後継者候補と言ってもいいかもしれない。
「悔しいじゃん。陽葵ちゃんはMだから大丈夫かもしれないけど、私は、悔しいよ。同じ、生徒会メンバーなのに、後継者として見られてないのは」
「……春乃さん、多分ですけど、僕と古河先輩は、僕が中等部時代から付き合いがあったからだと思いますけど……」
「だったら、それも跳ねのけるしかないじゃん?」
春乃さんの表情に、僕自身の負けず嫌いも発揮したようだ。
「ねぇ、春乃ちゃん。私が、Mってどう言う事かな?」
Mと言われた陽葵さんは、納得出来なかったみたいで、途中で別れるまで抗議していた。
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