84.推しカップル
「何で、そんな事を僕に話したんですか?」
資料室からの帰りに、松本先輩に、彼氏との初めての事を話した事について聞いた。
過去の古河先輩と被っていたとしてもそこまで話すかと言う疑問も残る。
「う〜んとねぇ、歴史は繰り返したらダメだからね。日本全体では無理だろうけど、身近な人間で、忠告したいと思った人間にはするかなぁ〜〜」
「身近な人全員には、しないんですね」
「そりゃ〜ねぇ〜自分の性事情……しかも異性になんて、余程って思わないと話さないし忠告しないよ」
松本先輩の忠告は、博愛主義的な行動では無かった。
まぁ、確かにそうだ。
博愛主義的な行動で、自分の性事情なんて話せないだろう。
「それで、建前はいいので本当の理由を教えてください」
「あはは、バレるよね。さっきのもあながち間違いではないんだけど……」
「推しカップルなんだよ」
推しカップル?!
多分、男は、僕だろうが女の子は、 陽葵さんと春乃さんのどちらだ?!
「ちなみに、男は僕だとして……女の子は、誰ですか?」
「ん~~西原さんだよ!」
「何で、そうなったんですか?僕と陽葵さんとの関わりは、そんなにないでしょう。もしかしたら、陽葵さんと中等部時代に、関わりありましたか?」
高等部に上がってから陽葵さんと関わりだしたが、松本先輩と関わっている所を見た事無い。
一体どこで、僕と陽葵さんを気に入るキッカケがあったのだろうか。
「貴方たち、高等部の入学式さぁ~~代表挨拶まで舞台袖で筆談で楽しく話していたりしたよね?」
「見られていたんですね」
「そりゃ、生徒会副会長だからね。入学式の進行に関しては、私たちが関わらない訳無いじゃない。……その時、西原さん、スカートの中見せようとしていたじゃない?白村くんが止めていたけど」
一体何処から見られていたのだろうか。
「貴方たち、付き合って無いの?」
「お友達ですよ」
「意外。女の子が、あそこまでするんだから、てっきり交際関係にあると思ってたぁ~~。でも、さっきのは話して良かったかな?」
「はい。良い忠告になりましたね。僕は、足が悪いので女性でも抵抗して貰えると言う他人主義的な考えを持っていた所もありましたから」
確かに、僕は、足が不自由なので、女性でも抵抗して逃げられると思っていた節があった。だけど、女性側に、抵抗する意思が無く傷つく覚悟を持っていた場合は、また違う結果になると。
「あぁ~~この事は、裕大には内緒ね」
「わかりました」
何だかんだ、陽葵さん以外の女性と2人になるのは、初めてな気がする。
「松本先輩のお眼鏡に叶った様なら何よりですね」
「幸せになってよね、推しカップルさん」
「僕と陽葵さんは、良き友人なんですけどね」
「はぁ~~西原さん。苦労するだろうなぁ~~この壁を破壊するのは大変だぞ」
松本先輩は、何かに呆れている表情になっている。
何に呆れているのだろうか。
生徒会室に到着して部屋に入ると、僕達以外でお菓子を食べたりしてまったりしていた。
「おう、仕事の説明は終わったのか」
「終わりましたよ。というか、橋渡くんは大丈夫だとして……バカイチョウは、仕事終わったの?」
「バカイチョウとは何だよ、ゆうかぁ~~」
古賀先輩は、何かを隠すかのように、抗議の声をあげていた。
「あぁ~~これも。これも終わってない」
「……はい。……はい。すみません」
古賀先輩は、松本先輩にへこたれていた。
これが、皆が噂するカリスマ生徒会長と言われていると考えると、想像がつかない。
僕は、陽葵の右隣が空いていたので、そこに座った。
「広報のお仕事は?」
「うん。教わり終わったよ。それで、古賀先輩の発案でお菓子食べて親睦を深めてた」
「僕と優花さんは、まだなのにですか?」
「あわわぁ〜〜違うよ、詩季くん。そんなつもりは、無いから!」
少し意地悪をしてみたら、こんなにも面白い反応を見せてくれる。
春乃さんと同じくらい、面白いかもしれない。
「大丈夫ですよ。古河先輩が、松本先輩にある意味フルボッコにあっているので、結構スッキリしています」
古河先輩は、終わっていない仕事を松本先輩によって強制的にやらされていた。
「あんた、お菓子食べたいならこの仕事早く終わらせな。あ、君たちは、遠慮なく食べていいからね」
陽葵さんは、遠慮なくお菓子をつまんでいる。春乃さんも、チビチビと摘んで食べている。
「詩季くんも食べなよ」
陽葵さんに、紙皿にお菓子を取り分けられて置かれた。
「……いただきます」
ちょうど、小腹が空いていたので、お菓子を摘む事にする。
「おっしゃぁ〜〜終わったぁ〜〜俺もお菓子食うぞ……あれ?」
30分経過したタイミングで、古河先輩が、仕事を終えたようで、お菓子を食べようと、こっちに来た時には、既に遅し。
お菓子は、2年生2人と1年生3人で綺麗に平らげていた。
「古河先輩。ご馳走様でした」
僕は、色々、からかわれた事に対する反撃の意味も込めてニッコリ笑顔で、古河先輩の顔を見た。
「……うむ。後輩が楽しめたらそれでいいだろう!」
「裕大、本音は?」
「俺も、お菓子食いたかったぁ〜〜」
ここが、本校舎から離れた所で良かったと思うぐらい、普段の印象とは、かけ離れている。
松本先輩は、古河先輩を指差し、悪い顔をしていた。
まるで、スッキリしたでしょ?と言わんばかりの表情だ。
確かに、結構、スッキリしたのは、違いない。
「はぁ〜〜まぁ、いい。今日2つ目のお仕事だ」
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