第3章
76.この時期
コン♪コン♪コン♪
「はぁ〜い」
僕たちは、交流会館の高等部生徒会室の前にやって来た。
僕の中等部時代の癖で、中等部の生徒会室に先に行ってしまった事が、少し恥ずかしい。
まぁ中等部生徒会時代の後輩と少し話せたのでよしとしよう。
生徒会室の扉が開けられ、1人の女子の先輩が顔を出してきた。
「あぁ〜〜待ってたよ。どうぞ、入って」
生徒会室に入り、女性の先輩に案内された所に、着席する。
「あれ、あと男の子1人呼んだのだけど?」
あぁ、陽翔くんの事か。
先輩の雰囲気的に、何かやらかした事で呼び出された訳では無さそうだ。
「西原陽翔くんですね」
僕が、受け答えをする事にする。他の子は、どう答えたらいいかを悩んでいた様子だった。
「彼は、今回の呼び出しに対して、お断りだそうです」
「本当に?!」
「本当です」
呼び出しを断られるとは思っていなかったようで、少し、驚いていた。
「まっまぁ、今回の呼び出しは、問題行動があったからではないので、大丈夫です」
「おぉ〜〜来ていたか」
生徒会室に、古河先輩が入ってきた。
文化祭の屋台で、圧倒的な雰囲気を放っていて、中等部の生徒会時代に、数回程度関わることもあった。
古河先輩の後ろには、2年生と思わしき男女の2人の先輩がいた。
「よく来てくれたねぇ」
古河先輩は、生徒会長だけが座れる椅子に腰掛けた。他の役員さんは、僕たちの向かい側に座った。
本来は、4人で向かい合って座れる席なので、少々、手狭感は否めない。
「まずは、自己紹介だな。俺は、生徒会長の古河裕大。まぁ、顔は知れてるか」
そして、副会長以下の方の自己紹介が始まった。
副会長 : 松本優花(3年)
会計 : 橋渡剣 (2年)
庶務 : 星川愛理 (2年)
そして、会長・副会長が、恋人同士という、正直、扱いに困る情報も提供された。
「では、僕たちも自己紹介ですね」
「あぁ〜〜白村くん。君は、知っているからしなくていいよ」
古河先輩の一言で、僕以外が陽葵さん→ 春乃さん → 瑛太くんの順番で自己紹介した。
「君が、高等部入学ながら唯一進学クラスに入った住吉さんか」
「はい!」
古河先輩に、名前を呼ばれた春乃さんは、緊張した面持ちだ。
「そして、久しぶりだね。白村くん」
「顔、覚えられていましたか」
「忘れる訳無いだろう。君が、中等部の生徒会の副会長を務めていた時に、中高での行事で代表として協力した間じゃないか」
何度か顔を合わせたと言っていたが、顔を合わせる度に、かなり大きな仕事をしていたのだ。
「古河先輩。僕に、気がついていましたよね。文化祭の時」
「そりゃなぁ。容姿が変わった程度で、天才だと認識した人物を忘れる訳無いだろう?」
「天才とは、見る目がありますね」
「性格に関しては、かなり変わったな。以前のような、ロボットみたいじゃなくて、しっかりと自己を持っている」
なるほど、古河先輩にとって中等部時代の僕は、ロボットに見えていたのか。
「クソ生意気だが、こっちの方が話しやすいからいいか!中等部時代の白村は、話していて楽しくなかったしな。こっちが、ミスしたら背後から刺されるかと思ってたし」
古河先輩に、僕は、どのように映っていたのだろうか。
僕は、失敗したら背後から刺すなんて真似はしないぞ?
中等部時代の僕なら、失敗したら理詰めしていて精神をへし折っていたかもしれないのは、確かだ。
「古河先輩、おふざけはいいので本題をお願いします」
古河裕大は、この学校においてかなりの有名人だ。
中等部か高等部の生徒会に入っていれば、学内である程度の知名度は、ある。
だけど、古河先輩の知名度は、凄いものがある。
実際、陽葵さんと瑛太くんは、緊張した面持ちだ。
春乃さんは、初対面なのと入学して日も浅いこともあり、2人とは別の緊張だ。
その中、僕が、古河先輩と対等に話しているのは、驚きもあるのだろう。
陽葵さんと瑛太くんは、冷や汗をかいている。
「ん〜〜そこは、懐かしいなぁ〜〜」
「本題をお願いします」
「わ、わかったから、今度、背後から刺さないでくれよ?」
謎のお願いをされたが、ここで同意してしまえば、古河先輩のノリに乗ってしまう形になるので、無視を決め込む事にする。
「本題を話す。今、生徒会では、広報と広報補佐の2名の新たな生徒会役員を募集している。君たちの中で、選べたらと思っている」
呼び出された、内容は、生徒会において、広報と広報補佐の新たな役員を探しているからだった。
にしても、色々と引っかかる部分があるな。
「何で、今の時期なのでしょうか?」
「やっぱり気がつくよな」
中等部と高等部の生徒会の任期は、2学期の体育祭が終わるまでだ。
今年の体育祭は、9月の後半にある。
つまりは、任期が、残り約2ヶ月程度で、新たな役員を入れる形になるのだ。
あまりにも、中途半端な時期だ。体育祭に向けての人員補充だったとしても、1学期の頭から加入させて文化祭で、実務経験を積ませるべきだろう。
「う〜ん。色々、理由はあるのだけど……まぁ、深い理由は、中を見てもらって理解してもらいたい」
古河先輩の言い方は、僕が、生徒会に入る前提で進んでいるように感じる。
「まぁ、それは、それとして、やっと一区切り出来たのだろう?君が、中等部時代に支えた人と」
本当に、この人はくえない人間だ。
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