77.覚悟
「はぁ〜〜参りました。これ以上の追求は、やめておきましょう」
上手いこと躱された訳では無い。むしろ、狙ってこの道へ誘導したのだろう。
今1番、僕が、深く触れて欲しくない所を表面的に触れてきた。
そして、陽葵さん達は、僕が降参したのを意外そうに見ていた。
僕だって素直に負けを認める事だってあるんだよ?
タチの悪い負けず嫌いじゃないからね?
「ねぇ、詩季くん。本当に、引き下がるの?どうしたの?体調でも悪い?静子さんに、電話する?」
僕の額には、怒りマークが浮き上がっているだろう。
「陽葵さん。確かに、僕は負けず嫌いかもしれませんが、状況は見ますよ!」
春乃さんに、瑛太くんは、口にしなかったが、陽葵さんは、バカ正直と言っていい程に、直球的に煽ってきた。
羽衣と知り合ってから、陽葵さんの暴走度が上がっている気がするのだが、羽衣が何か吹き込んでいるのではないかと疑ってしまう。
今度日本に帰国した際には、羽衣を問いたださないといけないな。
「あはは、白村が、掌の上で遊ばれているな」
「うるさいですよ、古賀先輩。本当に、背後から狙いますよ?」
「君は、マジでやりかねないから恐ろしいぞ」
「……冗談ですよ?」
「冗談に聞こえないんだよ」
何だか、また、話が逸れている気がする。
誰かが、軌道修正しないといけないが、陽葵さんたちは無理だろう。出来るとしたら……
「裕大、早く本題。時間も有限なんだから」
「……すまない。優花」
松本先輩が、古賀先輩に注意を入れた事もあって、話が、本題に戻る。
「4人の中で、生徒会に興味はないかな?」
広報と広報補佐的に、最大で2人、最低で1人を生徒会に迎え入れるつもりだろう。
「すみません。俺は、部活動を優先させたいので生徒会はお断りさせて頂きたいと思います」
瑛太くんは、部活動を優先させるために、生徒会入りを拒否して、部活動に行くために生徒会室を後にした。
「私は、興味があります」
春乃さんは、生徒会に興味があるらしく、話を聞くつもりだ。
「私は……」
陽葵さんは、悩んでいる表情で、僕の方を見て来た。
「ところで、白村はどうするのかな?」
十中八九、古賀先輩の目的は、僕を生徒会に入れる事だろう。
「どうでしょうね。中等部時代は、ただ、入るのが義務みたいな感じで入ったので、生徒会に拘りとかも無いんですよね」
中等部時代は、石川くんが生徒会長を目指すと言い出して選挙戦をサポートして、当選させて、彼に任命される形で副会長を務めて来たのだ。
「白村は、自分から何かをした事無いだろう」
古賀先輩の指摘は確かだ。
クラスの副委員長に関しても、春乃さんからの誘いだった。
「だったら、高等部の生徒会をキッカケにしたらどうだ?上を目指せるだろう?」
自分を変えたいと思っても、変わっていなかったのか。根っからのサポート体質だったのだろう。
「わかりました。生徒会の末席に加わらせて頂きたいと思います」
僕は、生徒会への加入を決めた。古賀先輩の上が何処を指しているかは人それぞれだが、目指すのも悪くは無いと思う。
「じゃ、私も入りたいです」
僕の返答を聞いた、陽葵さんも生徒会に入りたいと言い出した。
「理由は、何かな?今回は、広報と広報補佐の2人だ。君は、白村の動向を気にしていたようだが?」
「そ、それは、詩季くんのサポートを……」
「認められないな」
陽葵さんの理由を聞いた、古河先輩は、陽葵さんの生徒会入を拒否していた。
「な、何故ですか?」
「理由が白村のサポートだからだ。白村のサポートってなら住吉でも問題はない。同じ、広報として働いてもらうからな」
陽葵さんが、拒否された理由は、生徒会入りしたい理由が僕のサポートだからだ。
「西原。君が、生徒会で何をしたいのかを探そうとしていない。ただ、白村の近くに居たいだけだろう?」
陽葵さんは、顔を下げていた。
古河先輩の指摘は、陽葵さんにとって的を射ていたのだろう。
「白村の隣に居たいのは、形だけか?ただ、白村が悪い事をしたらNOを突きつけるだけが、隣に居るという事か?」
これ、恐らく、あの場面をどこかで見ていた可能性はあるな。
という事は、僕が間違えて中等部の生徒会室に行ってしまった事も把握しているだろう。
「すみませんでした。覚悟が足りませんでした。次の生徒会に入れるように努力致します」
陽葵さんは、深々と頭を下げて生徒会入りを辞退していた。
「……うん。合格だな。西原、君も生徒会に入れ」
「……え?」
急に態度を変えた、古河先輩に、陽葵さんは戸惑いの表情を浮かべた。
そりゃ、生徒会入りを拒まれていた中で一転して入れと言われれば、こういう反応になる。
「でも、私、生徒会での目的とか――」
「――んなもん、生徒会やりながら見つければいい。俺が欲しかったのは覚悟だ。覚悟を持って欲しかったんだよ」
すると、古河先輩は、僕を指さしてきた。
「白村だって、生徒会で具体的に何やりたいかは、持っていない。だけど、覚悟はある。西原は、この短時間で覚悟を持った。だから、合格。いやか?白村と一緒の時間が減るぞ?」
「は、はい。生徒会に入らせていただきます!」
パシッ♪
音のした方向を見ると、古河先輩が、彼女である松本先輩からハリセンで叩かていた。
「裕大?後輩で、遊ぶなと何回言えばわかるの?」
「い、いや、これは、覚悟をはかるため……」
「うっさい!」
パシッ♪♪
先程よりも威力が強めに、ハリセンを振り下ろしていた。
「だとしても、遊びすぎ。西原ちゃん、泣きそうじゃん。あんた、本当に、白村くんに背後から刺されるよ?」
おっと、古河先輩への反撃チャンスが訪れた。
「そうですね、僕の大切なお友達を泣かせたとなれば、色んな方法を行使するかもしれませんねぇ〜〜」
「お、おぉ〜い。目がマジだぞはくむらぁ〜〜?!」
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