71.警察署へ

「陽葵さん。おばさんは、何と言っていましたか?」

「うん。車出してくれるって」


 今は、学校を終えて家に帰っている途中だ。


 昨日、約束していた、陽葵さんが使っていた中等部時代の制服と体操服を持って家に、来て貰っている。


 女の子の陽葵さんに、持たせてしまっているのは、申し訳ない所だ。


 今日の放課後には、予定がある。


 その予定は、警察署に行くことだ。


 近々話をしたいと言われて、スケジュールに関しては、こちらに合わせてくれるという事だったのでお言葉に甘える事にした。


 約束した日が、今日なのだ。


 家に到着すると、西原さんの家の車が駐車場に停っていた。


 家に入り、陽葵さんに持って来て貰った中等部の制服と体操服を何故か、僕の部屋に置いた。

 と言うか、おばさんが家に来てくれるのなら、おばさんに持って来て貰えば良かった気がする。


「おばさん、すみません。急なお願いに対処して頂いて」

「いいよ。体調が優れないんでしょう?」


 今日は、あまり体調が優れない。と言うか、足腰の疲労が昨日からあまり取れていないのだ。


 季節の変わり目と言うのも影響しているのかもしれない。


 登下校なら大丈夫だろうが、学校より距離のある警察署へ行くなら厳しいだろう。


 それに、車で送り迎えして頂けるなら休憩時間も多めに摂ること出来る。


「はい。足腰の疲労が、抜けなくて」

「近く、病院にも行くでしょ?その時も送っていくから」

「ありがとうございます」


 基本的には、車は使わないようにしている。


 歩いて行ける範囲なら歩いて行かないとだらけてしまうからだ。


「少し、休憩したら行きましょうか」






 30分程休憩をしてから、警察署へ移動する事になった。


 車に揺られること、15分。


 警察署に到着した。


 おばさんは、警察署の入口の前の道路に車を停めてくれたので、降りる準備をしようとした所で、運転席のガラスがノックされた。


「はい?」

「すみません。本日は、どのようなご要件で?」


 ノックしてきたのは、お巡りさんだった。


 僕たちが、何故、ここに来たのかが、気になったのだろう。


「はい。えぇ〜と。詩季くん。担当の方の名前覚えてる?」

「はい。交通部交通捜査課の井原さんと水本さんと約束しています」


 お巡りさんは、無線で確認を取っていた。


「すみません。確認が取れました。どうぞ、入口近くまで車で入ってください」


 お巡りのお言葉に甘えて警察署の入口前まで車で移動させて貰い、中に入る。


「白村くん。来てくれてありがとうね!」


 出迎えてくれたのは、水本るかみずもとるかさんという女性の警察官が出迎えてくれた。


「おぉ〜と、すまない。遅れた!」


 急いで階段から降りてきた、40を超えた男性の警察官が降りてきた。


「白村くん、元気そうだな。ごめんなぁ〜〜忙しい中来てもらって!」


 男性の警察官は、井原圭太いはらけいたさんという。


 2人には、事故に遭ってから、大変お世話になっている。


「西原さんも、お久しぶりです!」


 水本さんが、おばさんに話しかけていた。


 西原さん家族も、2人の警察官とは、顔見知りだ。


「じゃ、陽葵。私は、夕食の買い物行ってくるから。言うこと聞いてね」

「わかってるよ!」


 おばさんは、買い物をしに、警察署を後にして行った。

 警察署のご好意で、車は、警察署の駐車場に置かせて貰うみたいだ。


「では、話を聞かせて貰いたいから。ごめんだけど、西原さんは、ロビーで待ってもらうね」

「はい」


 陽葵さんは、ロビーで待つことになり、他の刑事さんとかに声を掛けられたら、井原さんの名前を出してと伝えられていた。


 2人は、僕の脚に気を使ってくれて、同じ階にある一部屋に案内してくれた。


「水本くん。ロビーで待つ西原さんと白村くんに」

「わかりました!」


 水本さんは、部屋を出て何かを取りに行った。


「体調面はどう?少し、足が重そうだったけど……」

「確かに、今日は、少し、膝の状態が悪いですね」

「ごめんなぁ〜〜大変な日に――」

「――井原さん。こちらのスケジュールを優先して頂いたのでお互い様ですよ」

「ホンマに、大人みたいやなぁ〜〜高校生なんやから子どもらしくしたらいいのに」


 井原さんは、いつも通りの調子で話しかけてくる。


 すると、部屋の扉がノックされて水本さんが、紙袋を持ってきた。


「良かったら食べて!井原警部補の奢りだから」


 水本さんから受け取った紙袋の中には、サンドイッチとミルクティーが、入っていた。


「味は、安心してね。私が、選んだから。何処ぞの中年警部補が選んでないから!」

「おいコラ。そこの巡査何を言っている」


 2人は、水本さんが、配属されて以来コンビを組んでいるようで、大分仲がいいように見える。


「頂きます。昼食を食べずに来たので、丁度良かったです」


 ここで、遠慮する方が失礼になるだろうから、素直に頂く。


 水本さんは、僕と井原さんの間に座った。


「学校生活は、どう?」


 水本さんから質問された。


「普通ですよ。陽葵さんの暴走にヒヤヒヤさせられますけどね……」

「何か、しでかすん?」

「う~ん。僕を男の子として見ていない行動を取るんですよね」

「へぇ~~例えば?」


 水本さんに、陽葵さんの暴走の内容を伝えた。


 陽葵さんが、暴走するのは、僕と2人で居る時だけ。


 飲み物をシェアしようとするのは、序口だ。


 僕と2人の時に、スカートを自ら捲って中の体操ズボン見せてこようとするので、阻止したり、祖父母が、居ないのに、家に上がる事に躊躇が無いこと。


 諸々を伝えた。


「あはは、スカートの件は、同じ女の子として黙っとくけど……陽葵ちゃんも苦労しているんだね」

「苦労とは?」

「主に、白村くんが、原因なんだけど……まぁ、私が、教えても意味無いし……自分で、気が付けるように頑張りな」


 水本さんに、話をはぐらかされてしまった。

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