66.期末試験の結果

「テスト返すぞ〜〜」


 羽衣が、イギリスに帰ってから7月に入り、その頭にテスト範囲が発表され、7月中旬に、1学期の期末テストが行われた。


 今日は、テストの答案用紙の返却並びに成績上位50位が貼り出される日だ。


 守谷先生のが、クラス1人1人に答案用紙の入った封筒を渡していく。


「白村〜〜」

「はい」


 呼ばれたので、教卓まで、歩いていく。


 基本的には、出席番号順だが


 僕は取りに行くのに時間が掛かるので最後になっている。


「小学校から本気出していたら神童と呼ばれていたかもな」

「そうですね。僕は、天才ですので」

「可愛くねぇな」

「いぇいぇ、僕は、まだまだです。の方が良かったですか?」


 自信満々に答えたら可愛くないと言われたので、仕返しに可愛く謙遜して言ってみた。


「そっちは、何か気持ち悪いな」

「それ、教師が生徒に言ってはいけないセリフだと思います」

「まぁ、白村は、変わんねぇな」

「最後は、無難な解答でしたね?」

「うっさい。論戦は、俺の負けだ」


 僕は、守谷先生を論戦で負かして封筒を受け取って自分の席に戻った。


「採点ミスは、今日中だ」


 昼休みに、成績表が、貼り出されるまでは、各々が採点ミスを探す。

 しかし、僕と瑛太くんに春乃さんは、貼り出されるまで解答用紙を見ない。


「あれ?陽葵さんも見ないのですか?」

「うん。私も貼り出しで、まず順位確認する」

「そうですか」


 昼休みになって、成績が貼り出されてから少し経ったタイミングで見に行く。


 中間の時は、同じタイミングで見に行ったらある程度人が減っていた。

 だけど、今回は、前回より人は減っていなかった。


 折角、見に来たのだから見に行くことにする。


 僕が、転けないように、皆が、サポートしてくれている。


――なぁ、すげぇよな

――うん。2人、いや、3人すごいよね


 1年生の成績表の所には、他学年の生徒が集まっている。ネクタイやリボンの色を見ればわかる。


――あいつらが、例の集団か


 誰からか、僕達に向けられた視線と言葉を聞き取った。


 だけど、その人たちは、僕たちの近くから去って行った。


 まぁ、気にしても始まらないので、自分たちの成績を見に行く。



『 第1学年 一学期期末考査 成績上位50位 』


 主 席 白村詩季

 次 席 住吉春乃

  3  西原陽葵

  4  小原瑛太

  ⇣

  6  西原陽翔

  ⇣

  ⇣

  ⇣

  10  桜井奈々



 成績としては、僕と春乃さんは、成績をキープした。そして、陽葵さんが3位になって、瑛太くんは、2連続で順位を落として4位になっていた。


「んなぁ〜〜陽葵にまで抜かれたぁ〜〜」


 瑛太くんが、悔しそうな声を上げている。


 中間試験で春乃さんに抜かされて、期末試験で陽葵さんに抜かされたのだ。負けず嫌いの彼にとって悔しくない訳無い。


「あらぁ~~瑛太。どんどん抜かされてやんの~~」

「うるさい。ていうか、俺の彼女なら少しは労わってくれよ~~」

「あによぉ~~なら、中間から順位を上げた私を先に労わいなさいよ!」


 瑛太くんと奈々さんカップルは、喧嘩しているように見えるが、通常運転だ。


「2人とも、激しくなるなら放課後どちらかの家でしてくださいな」

「「詩季(しきやん)、変な事言うなぁ!!」」


 何を連想したのか。


 恋人歴1年以上の中堅カップルさんの考える事は、よく解らない。






 教室に戻って来て、僕と陽葵さんに、瑛太くんと春乃さんは、解答用紙の採点ミスの確認をしている。奈々さんは、瑛太くんを待っていて、陽翔くんは、おばさんの手伝いがあるという事で既に帰宅している。


 期末試験が終了したので、終業式までは午前中だけ授業があり。午後には解放される。


「うわぁ~~ここもミスしてる」


 瑛太くんは、今回、ケアレスミスが多いようだ。かなりのショックを感じていた。


「詩季は、成績維持出来ているんだな」

「もちろんです。もしかして、春乃さんの勉強方法聞いて、そのまんま実践しましたか?」

「そうだけど……」

「そりゃ、大博打かましましたね」


 人それぞれ個性と言う物があるのだ。


 他人に合っている事が、自分似合うとは限らない。


「詩季は、春乃の勉強方法は、実践したのか?」

「自分に合うと思った所は取り入れて合わないと思った事は、切り捨てましたね。自分の基本の勉強方法はあるので、そこは崩しませんでしたよ」


 今回に関しては、春乃さんの勉強方法を聞いた事を発端として、自分の形を崩さなかった僕が、主席の座を死守して、春乃さんの方法に大幅に変えた瑛太くんがケアレスミスを連発して順位を落としたのだ。


「にしても、ひまりん凄いやん」

「ありがと!でも、春乃ちゃんと詩季くんの壁は高かったよ」


 奈々さんは、瑛太のケアレスミスを笑いながら陽葵さんと話していた。


「僕は、採点ミスありませんでした。皆さんどうですか?」

「「「ない!!!」」」


 放課後に残って採点ミスを探すが、見当たらない。


 まぁ、筆記問題以外は、マーク式の回答方式なので、殆ど、間違いを見つける方が至難の業だ。教員側からしたら、マーク式の方が、採点の負担は減っているのかもしれない。


「陽葵さん。この後、付き合って貰えませんか?」

「うん。羽衣ちゃんの事だよね?大丈夫だよ」


 羽衣の編入試験の結果が、今日出る。


 本来なら羽衣本人か母さんが、取りに来るべきだろうが、2人とも今は、イギリスだ。


 僕が、代理として受け取る事になっている。


 今朝も、結果が解り次第送ってこいと、羽衣からの催促のメッセージが来ていた。


「では、瑛太くんに奈々さんに春乃さんさようならです」


 僕は、3人と別れて陽葵さんと教室から後にして行った。

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