65.妹とデート
「何処に行きたいの?」
羽衣からのデートの誘いに対して、何処に行くのか聞いていない。
空港に向かって諸々の手続きをするためには、自由に過ごせるのは午前中だけだろう。
「言っとくけど、帰国の時間も考慮し――」
「――解っているとも~~詩季にぃの負担も考慮して午前中にここに帰って来られる所に行くよ~~」
朝食を食べたいのだが、それは許してもらえないようだ。
玄関に立っている羽衣の手には、バスケットが握られている。
「羽衣、朝食食べたいんだけど?」
「朝ごはんデートだよ!」
羽衣の言い方的に、バスケットの中身はサンドイッチといった所か。朝早くから起きて準備したのだろう。というか、まだ、時差ボケに対応出来ていない?
「何処に行くのかだけでも教えてくれませんか?」
「あっ、詩季にぃが下手に出た。近所の公園だよ。小さい時良く行ったじゃん」
「あそこか」
祖父母の家の近くには、鉄棒と砂場と滑り台しかない小さな公園がある。
小さい時に、祖父母の家に遊びに行ったタイミングで祖父母と遊んでいた公園だ。
公園に到着するとベンチに腰かけて、僕と羽衣の間にバスケットを置いた。
「ジャーン♪サンドイッチ作ったよ」
バスケットの中にはイチゴジャムを挟んだサンドイッチや、ハムと卵を挟んだサンドイッチが入っていた。
「よく作ったね」
「へへぇん。向こうで、お母さんに習ってたんだ」
不器用だった羽衣がサンドイッチを作れるまでになっているのに、お兄ちゃんは感動ものですよ。
「うん。美味しい」
「やったぁ〜〜詩季にぃの胃袋掴んだぁ〜〜」
「いや、胃袋掴んだまでは、いかないよ?」
「えぇ〜〜妹の手作り朝食で頬緩ませてるくせに?」
僕は、これ以上羽衣に、調子づかせるとまずいので手刀の構えをする。
「おぉ、詩季にぃ何構えてんの?」
「羽衣、手刀か頭グリグリどっちがいい?」
罰ゲームを選ばせてやろう。
羽衣よ、どっちの罰ゲームがいい?という感じに、答えを待つ。
「どっちも、ドンと来い!」
「いや、そこは、どっちも嫌と答えるのが最適解じゃなくて?!」
「ふふん。最適解の斜め上の答えをする。これぞ、正しく邪解!」
我が妹様は、ああ言えばこう言う状態だ。
とりあえず、両方ご所望なので、罰ゲームを執行しようとする。
と言うか、これ、罰ゲームか?
優しく手刀をお見舞する。
「あっいたァ」
次に、両手をグーにして羽衣の頭をグリグリする。
「おわぁぁ、あわわぁ〜〜詩季にぃ。バカになるよ。私の完璧な頭脳がバカになるよ」
「いや、むしろバカな羽衣の頭脳を矯正しているまであるよ?」
「そんな訳あるかぁ〜〜ギブ!ギブ!」
羽衣が、ギブアップを宣言したので、解放してあげる。
「両方するなよぉ〜〜」
「両方ご所望したのは、羽衣でしょ?」
「あっ、そうでした」
羽衣は、舌をテヘペロの要領で出した。
うん。可愛い。
「舌しまえ。バカ丸出し」
「あぁ〜〜バカって言ったなぁ〜〜バカって言う方がバカなんですぅ〜〜」
そんな会話をしていると公園に遊びに来た子ども達が増えてきた。
「将来、日本を支える子ども達が増えてきたのぉ〜〜」
「羽衣、君は、何歳なん?」
「えぇ、ピッチピチの今年、15歳だよ!」
「まぁ、いい。僕たちは、子ども達に、公園を譲るとしましょうか」
バスケットを羽衣が持ち、公園を後にする。
時刻は、9時を過ぎた辺りだ。
「他に、どこか行く?」
「んいゃ、帰って帰る準備しないとねぇ〜〜国際線って急に、出発時間変わったりするからねぇ〜〜稀だけど」
本当に、朝の散歩デートをしたかったようだ。
家に帰ると、祖父母が出迎えてくれた。
「おかえり。楽しめたかい?」
「おうよ、詩季にぃの胃袋は、掴んだぜ!」
「良かったね。羽衣」
羽衣は、祖父母とハイタッチをしていた。
僕は、その間に靴を脱いでリビングに向かう。
「羽衣、準備出来てんの?」
「ん〜〜ほとんど出来てんよ。今回、持ってきた服は、置いてくから。静ばぁ、洗濯お願い出来る?」
「解ったよ」
「終わったら詩季にぃの部屋に保管しておいて。何かに使うかもだし?」
この妹は、所構わず人構わず、からかってきやがる。
「静ばぁ、洗濯しなくてそのまま捨てちゃっていいから」
「んなぁ〜〜高かったんだからねぇ、今回持って帰ってきた服〜〜」
「なら、もっと大事にしなさい!」
「わかったよぉ〜〜完敗です」
今回の兄妹喧嘩もどき合戦は、僕の勝ちとなった。
ふん、まだお兄ちゃんに勝つには、早かったな。
僕がドヤっていると健じぃから話しかけられた。
「羽衣。しずかは、13時に迎えに来るって」
「りょ〜かい」
母さんは、13時に羽衣を迎えに来るようだ。
空港までお見送りに行きたい所だが、祖父母が車を持ったていない事もあり、家でのお見送りになりそうだ。
「詩季」
「何ですか?」
「警察の方から、お話を聞きたいって」
「なにぃ〜〜詩季にぃやらかしたん?まぁ、やらかしても、私が一生養ってやるよぉ〜〜」
「何も、してないですよ。健じぃ、しっかり説明してください」
健じぃの言葉足らずは相変わらずだ。
と言うか、やらかして警察のお世話になっいたら学校を退学になっている。
「事故の事について、再度、話を聞きたいそうだ。何時行ける?予定は、合わせてくれるそうだ」
「期末試験が終わったら、午前中授業期間があるので、そこで調整して頂けますか?」
「わかった」
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