64.このチャンス
「本日は、ありがとうございました」
白村家と西原家の話し合いは、終わった。
玄関で、おばさんが母さんにお礼を言っていた。
「いぇいぇ、こちらこそ。詩季がこれからもお世話になります」
「こちらこそ、詩季くんとは、家族同然の付き合いをさせてもらっています」
陽菜ちゃんは、僕と遊べなくて不満そうな表情を浮かべながら車に乗っていた。
今日は、学校で沢山遊んだのだからご勘弁して欲しい。
西原一家が、帰ったあと、僕たちはリビングに移動して夕食にする。
母さんも一緒に食べる予定で、食べ終えたら、日本の家に帰るようだ。
「いやぁ〜〜陽菜ちゃん可愛いなぁ〜〜詩季にぃが帰ってくるまで、沢山遊んだわぁ」
一時は、浮気相手だぁ〜〜と騒いでいたとは思えない程に、陽菜ちゃんを気に入った模様だ。
「でしょう。庇護欲を燻る可愛さでしょう」
「分かる!……でも、詩季にぃ。私の居ないところで、新たな妹に浮気してたんは根に持ってるよ?」
「ごめんって。て言うか、浮気って何さぁ」
羽衣にとっての浮気の基準が分からない。と言うか、僕と羽衣は、実の兄妹だ。
陽菜ちゃんと仲良くなった事の何が、浮気なのだろうか。
「私と言う、可愛くて麗しい妹がいながら……、若い女の子を妹の如くデレデレしちゃってさぁ〜〜」
「陽菜ちゃんは、年下だから仕方ないじゃん!」
「あぁ〜〜認めたなぁ〜〜!」
羽衣は、僕の肩をポンポコと叩いてきた。丁度、肩が凝っていたのでマッサージになっていい感じだ。
「でもさぁ、羽衣は、僕にとって唯一無二の妹じゃん?」
「んへへぇ〜〜詩季にぃ、解ってるぅ〜〜」
「ふん、チョロいな」
「んなぁ〜〜チョロいとは、何だ。チョロいとは!」
さっきまでのご機嫌はどこへやら。
チョロいと言われた事に納得がいかなかったのか、再度、肩をポンポコと叩いてきた。
「陽菜ちゃんには、出来ないことしてあげるもん」
「ん?!んむむ!」
羽衣は、僕の顔を自身の胸に押し付けてきた。
「へへぇん、どうだ。このDに近いCカップの胸のお味わぁ〜〜?」
「んん〜〜んん〜〜〜ん〜〜(そんなもん、兄に教えんでいいわ。てか離せぇ〜〜)」
「羽衣、詩季が、窒息しかけてる。兄の死因が、妹のおっぱいで窒息死でいいの?」
「ムゥ〜〜それは、嫌だなぁ〜〜」
母さんの説得もあり、何とか解放された。
妹に対して目覚めてはいけないものを堪えるこっちの身にもなってくれ。
と言う事で、お仕置を執行しておく。
ペシッ♪
羽衣の頭に優しく手刀をお見舞した。
「あっいたァ。詩季にぃ何すんのさぁ!」
「お仕置です。兄に対して色気を使った罰です」
僕と羽衣は、以前日本にいた時よりも仲良くじゃれ合っていると思う。
「あぁ、母さん。嬉しそうやん」
羽衣が、母さんの顔を見て嬉しそうにしていた事を指摘した。
「だってね。もう、詩季と羽衣が仲良くしている姿を見れると思ってなかったからね」
親と言うのは、独特な感情を持つのだろう。
親になった事が無いから、母さんの感じている感情の正体は分からない。
将来、親になったらわかるのだろうか。
「何で、そう思うのですか?」
気になれば、聞くのみだ。
「あんた達の事が大好きだからだよ」
そう言うと、母さんは、僕と羽衣の頭を撫でた。
思う存分撫で終えたのだろう。
母さんは、僕たちの頭から手を離した。
「お母さん。今日は帰る。2人のことよろしくお願いします」
「解ったよ」
母さんは、日本の家(中学まで僕が過ごした家)に帰る。
僕と羽衣と祖父母は、お見送りの為玄関まで移動する。
その姿に、祖父母はにこやかな笑顔を浮かべていた。
「しずか」
静ばぁが、母さんを呼び止めた。
家から出たばかりの母さんは振り向き静ばぁの方向を向いた。
「この機会を逃すんじゃないよ」
「うん。この機会を逃せば……もう無理だと思うから」
母さんは、一礼して家に帰って行った。
「おっはよォ〜〜にぃさん!」
いい目覚めをしたい朝。
僕は、愛する妹が、掛け布団越しに体をパンパンの叩いた事で起こされた。ていうか、羽衣が僕を呼ぶ時のレパートリーが多すぎる気がするのだが……
「兄を叩き起こす妹は、何処にいる?」
「ここに居るがぁ?」
目覚めたので、ベットから体を起こした。
「私、今日、向こうに帰るからさぁ。それまでに、デートしようよ」
羽衣は、今日の夕方の便で、イギリスに帰る。
編入試験に合格した場合は、2学期から通う事になる。そうなると、日本への帰国は、8月辺りになるだろうか。
「デートって、ケニーくんは?」
「兄妹のデートじゃん」
「解りましたよ」
何だかんだで、羽衣に甘い僕は、羽衣のデートの誘いに乗るのであった。
着替えを終えてリビングに向かう。
着替えを鑑賞しようとしていた妹をリビングに追いやるのがまぁまぁ大変だった。そこら辺は、陽葵さんは聞き訳が良い方だと思う。
「おぉ~~」
「何に、歓声上げているのか解りませんよ。いつもの服装じゃないですか」
「それが良いのだよぉ~~」
羽衣の感性が時々解らなくなる。
「何処に行きたいの?」
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