61.離脱③
「ねぇ、詩季。私とは?」
「そうだよ、琴葉との関係はどうするのさぁ?」
幼馴染達に、今後は今まで通りの関わりは持たないと言う意志を伝えた。
すると、高梨さんに、岡さんが、高梨さんとの関係性について尋ねてきた。
何を思っているのか。
昨年の夏頃、事故にあって入院している時に、別れを告げてきたのはそっちだろう。
「何が、言いたいのですか?」
これは、僕の率直な意見であり疑問だ。
何で、僕が悪者のような空気を2人で流しているのだろう。
「何って、あんた、琴葉の彼氏でしょ!それなのに、高校に上がってから、そこの西原陽葵と2人で登校したり、住吉春乃と仲良くなったり――」
岡さんは、まくし立てる。まるで、僕が不貞を働いたかのような物言いだ。
「何が、言いたいのですか?」
「あんたが、浮気を――」
「――先に、お別れを言ってきたのは高梨さんの方ですよ」
「「えっ??」」
自覚が無いのだろうか、高梨さんと岡さんは、目を見開いてお互いの顔を見てかは僕の方に向き直した。
「琴葉、本当なの?」
「ち、違うよ」
自覚なしか。
入院している間に、僕は、メッセージアプリで直接言われたのだ。
僕は、証拠となるメッセージアプリのトークルームのスクリーンショットをスマホに表示して2人に見せる。
「この時に、別れを告げられましたよ」
「そ、それは、喧嘩してて。その後も、メッセージ送ってたじゃん。全然、読んでくれなかったけど」
「だって、そのメッセージ貰ってから君たちの連絡先消しましたから。それは、スクリーンショットですよ」
高梨さんは、僕のスマホをスワイプしてスクリーンショットである事を確認して青ざめた。
僕は、スマホを回収する。
「ちなみに、グループも抜けてますから。僕は、喧嘩の最中に、彼女側から一方的に別れを告げられた。だから、連絡先を消した。そして、君たちとも距離を取りたいから連絡先を消しました。それだけです」
「ちょっと、待ってよ!」
高梨さんは、目に涙を浮かべながら僕を呼び止めた。
僕としては、話は付いたし、今日は疲れたので早く帰りたい。
「何でしょうか?」
「あの時は、私達喧嘩してただけじゃんか。その流れで――」
「――流れが何ですか。カップルが喧嘩の最中に【別れ】というカードを使った時点で、そのカップルは終わっているんですよ」
「何で、そうなるの!」
「対等じゃないからです。別れというワードを使って自分にひれ伏させようとしている時点で、相手を下に見ている事でしょう」
僕は、恋人とは対等な関係性で居たいと思っている。
だからこそ、交際中のどのような事情があったとしても【別れ】をちらつかせた時点で、交際関係は破綻していると言ってもいい。
「そ、それは……」
「それに、高梨さん……いや……君たちは、僕が一番しんどかった時に傍に居てくれなかった。一番しんどかった時に、別れを突きつけて来た。その時に、僕たちは終わっているんです」
僕がしんどかった時に、一番傍に居て欲しかったのは、幼馴染達であり当時彼女だった高梨琴葉だった。だけど、そのタイミングでの嘘吐き呼ばわりに、別れを告げられた。
僕にとって、幼馴染達や高梨さんとは修復不可能な溝が出来上がってしまっている。かろうじて、プライベートに侵食してこない、ただのクラスメイトという関係でいられる位だ。
「だったら、やり直すチャンスをーー」
「やり直した所で、高梨さんが傷付くだけですよ」
「えっ?」
「僕は、貴方とセックスを出来ません。つまりは、貴方を女として見ることはできません」
高梨さんは、床に膝から崩れ落ちた。
「他に、何かありますか?」
幼馴染3人の顔を見るが、何も発する事はなさそうだったので、僕は立ち上がって教室の扉まで移動する。
「帰る時は、鍵施錠して帰ってくださいね」
僕は、教室から後にして行った。
「詩季くん。お疲れ様」
教室から離れて、下駄箱に着いたタイミングで、陽葵さんから頭を撫でられながらそう言われた。
「年下扱いしないでください」
「いいじゃん。しんどい時位人に甘えてもいいんだよ」
「……ありがとうございます。ただ、二人きりの時が良いです」
「陽翔は、気にしなくていいよ?」
「……少しは、陽翔くんを労わってあげてくださいよ」
双子の兄妹というのは、独特の距離感があるのだろう。時折、陽翔くんが可哀想に見える時がある。
陽翔くんは、僕の鞄を持ってくれていながら、陽葵さんに対して冷めた視線を向けている。
「陽翔くん。兄と言うのは大変ですね」
「なぁ、妹にいいように扱われたりしてな」
僕は、陽翔くんと兄としての苦労を共感した。年の近い妹に振り回されると言う経験は、陽翔くんと共感して話すことがある。
僕たちは、校門前に移動する。
今日は、西原さんの車に乗せて貰う事になっている。一度、帰宅してから再度迎えに来てもらえるという事で大変助かる。
西原両親の事は、おじさんとおばさんに呼び方を変えた。二人からの希望だった。西原さんのお母さんより、親しいからこっちの方が良いと僕も思った。
校門前で、移動して車の到着を待つことにした。
すると、後方から聞き慣れた声がした。
「久しぶりだね」
声がした方向を見たら、母親が幼馴染たちの親と対峙していた。
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