60.離脱②
窓側
岡 石川 高梨
[机] [机] [机]
陽葵 僕 陽翔
廊下側
僕たちは、上記の席順で座った。
「何とか、上手くいきましたね文化祭。いや、一時、大失敗するかと思いましたが、僕たちの頑張りもあって成功に導けました。MVP級の活躍ですね僕たちは」
開口一番、文化委員を務めた石川くんに対して、今回の文化祭の成功に関しては、僕達の手柄で石川くんは、何もしていないという事を言葉で伝える。
いわゆるマウントを取るという行動だ。
「石川くんとそのイエスマンが、崩壊させたクラスを抜群の手腕で立て直して成功に導いた。僕は、本当に天才なんですね」
石川くんは、失敗したの自覚している。
そんな中、自分と対立してきた人間から自慢話を聞かされていい思いはしないだろう。
それに、元々は自分側にいた人間と来たらいい思いはしないと思う。
「お、俺が失敗したのは、お前が協力してくれなかったからだろうが!」
待っていた答えを石川くんの口から発してくれた。
これで、石川くんは、自分がクラスを引っ張っていけなかった要因を自分の口で話したのだ。
ただ、自分の口で要因を話したが頭では理解していないだろう。
次は、頭で理解させる作業だ。
「石川くん。今、何と言いましたか?」
「んだよ。詩季、お前が協力してくれなかったから俺たちは失敗したんだ」
「そうなんですよ、石川くん。君は、僕が居ないと何にも出来ない人間なんですよ。自分には、才能があると思っていたのでしょうが、実情はこうです」
勘違いとは恐ろしいものだ。
石川くんは、中等部時代の成功体験を自分自身の能力だと信じきってきたのだ。
しかし、実情は、僕が影で色々と物事を動かしていたのだ。
ただ、ここでも本質は違う。
僕だって、僕一人で動いていたら文化祭は、失敗していただろう。
成功した要因は、陽葵さん達を初めとするお友達が頑張ってくれたお陰だからだ。
「まず、正副委員長に関して、石川くんは両方に立候補しましたね」
「――――」
石川くんは、苦い思い出を思い出したく内容に唇を噛み締めている。
「委員長は、春乃さん。副委員長は、僕になりましたが、両方のクラス内投票で、君は惨敗しました」
「何が、言いたいんだよ」
「石川くん、クラスメイトからよく思われてないって事です」
オブラートに包んでも良くないだろう。しっかりと直球的に伝える。
「で、でも……中等部時代は――」
「だから言ったじゃないですか。君は、僕が居ないと何も出来ないって。大変だったんですよ?中等部時代から君のワンマン体制にはクラス中嫌気がさしていましたからね。その仲介役は、大変でしたよ」
思い知らせる。
自分達が、如何にクラス内で浮いてしまっていたかを。
ただ、面倒くさい委員を喜んでしてくれるだけの存在だったかを。
その反面、仲介役をしていた僕は、クラスメイトからの信頼を勝ち得ていたので今の交流関係がある。
「今回の文化祭準備のリーダーですが、使った手法は、同じですよ。トップによるワンマン体制。そこには、たった1つだけ違いがあったんです」
文化祭準備の運営体制。
ワンマン体制のトップダウン方式を石川くんと僕は敷いた。
そこで、失敗もしたり成功もした。
その違いは何なのか。
「分からないようなので教えましょう。簡単ですよ、下につくクラスメイトと如何にコミュニケーションを取っていたかですよ」
何事の組織体制に置いて大事なのは部下とのコミュニケーションによる関係性の構築だ。
トップダウン方式だろうが、ボトムアップ方式だろうが変わらない。
むしろ、トップの意見が強くなるトップダウン方式の方が部下とのコミュニケーションの必要性が上がってくるだろう。
「君は、中等部時代からクラスメイトとのコミュニケーションを疎かにして、カリスマ性を作れなかった。片や、僕はクラスメイトとコミュニケーションを取っていてカリスマ性が出来上がっていた」
カリスマ性と検索すれば、多くね人を魅了する才能や能力と出てくる。
だけど、カリスマ性と言うのは、ある程度作れるものだと思う。
特に、学校のクラス内という狭い交流関係内であれば、尚更だ。
クラスメイトとコミュニケーションを取って、クラス内での立ち位置を確立していれば、それがカリスマ性となりワンマン体制でもある程度上手くいく。
「石川くん。そもそもの話、君がクラスを引っ張って行く環境を作れていないんですよ」
僕は、石川くんに、実情を伝える。
これが、僕が甘やかした側面に対する最大限の償いだ。
「俺は、どうすればいいんだ。親父の期待に応えるためには……」
「知らないです。それに関しては、石川くんが考えるべきです」
これからは、もう、幼馴染達とはクラスメイトという立ち位置で接していく。
「な、なぁ、以前のような関係性に――」
「無理ですよ。僕は、もうあなた達をお友達と見れないです」
「な、何で――」
「……僕が入院している時、傍に居てくれたのは、陽葵さんと陽翔くんです。君たちは、傍に居てくれなかった」
傍に居て欲しい時に、居てくれたのは、陽葵さんと陽翔くんだ。
「そ、それは――」
「それに、僕の事を嘘吐き呼ばわりしてきた人達とは、今後お付き合いは無理です」
「た、頼むから、見捨てないで――」
「はっきり言います。もう、無理です。これが、僕からの最後の情です」
僕は、石川くん達に、拒絶の意思をはっきりと伝えた。
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