39.テスト範囲

「うわぁ〜〜広いのか狭いのかわかんねぇ〜〜」

「1年の中間だから基準が――」


 5月に入った。


 今は、帰りのホームルームの時間だ。


 普通なら、連絡事項を黒板に書いて、「これ見とけ!」が、基本の守谷先生のホームルームが、まだ、終わっていないのは、配布物が原因では無い。


 今日、1学期の中間テストのテスト範囲が、発表になったのだ。


 まだ、1週間前という訳ではない。中等部の時からそうだったが、この学校では、定期考査がある月頭の平日に、範囲を発表する事になっている。


 これは、教師としての自分の評価をあげようとして、定期考査終了後に、次の範囲を独自で発表する教師陣が増えたためこの仕組みに、なったそうだ。


 そして、範囲発表から定期考査(中間・期末)は、原則として、月頭の平日に、範囲発表。そして、月の中旬にテスト実施の流れだ。


 高等部1年の1学期中間考査の範囲を知ったクラス内は、自分自身が想像するテストの難しさに照らし合わせて、各々、感想を言っていた。


 配られたプリントに載っているテスト範囲は、殆どの教科で、僕の予想通りだった。

 クラス中が、広いだの狭いだの話しているが、各授業の進み具合とテストまでの日程を逆算すれば、ある程度の範囲は、予想できる。


 ただ、例外があるとすれば、テスト範囲が終わっても次の範囲に入る教諭は、予想が難しい。


 帰りのホームルームが終わったら、何時もの6人が集まった。


「瑛太くんと奈々さんは、部活動ですよね?」

「うん。1週間前までは、みっちり部活動だよ」


 瑛太くんは、野球部に所属していて、奈々さんは、野球部のマネージャーを務めている。他の4人は、帰宅部という部活動?に、所属している。


「今日、皆で、学校の図書室でテスト勉強しようと思っていたのですが、難しいですよね」

「難しいなぁ~~サボったら、顧問にどやされる」

「では、1週間前になったら、一緒にしましょう」

「おうよ!」


 何時の日か、僕の身体のコンディションが、良くなったタイミングで、応援に行けたらと思う。


「でもさぁ、しきやんと瑛太バカを一緒に、テス勉させたらさぁ~~私たちが、影響受けない?」

「「確かに!」」


 陽葵さんと陽翔くんは、同意の意味だろう、2人とも2回頷いていた。春乃さんは、「どういう事?」と、頭を傾けていた。


「はるるん、しきやんと瑛太バカは、負けず嫌いなんよ。だから、一緒にテス勉したら、競い合って、そのしわ寄せが、私たちに来るんだよ?」

「そうなの?」

「あ、これ、はるるんも同じ側の人間だ」


 奈々さんの中で、僕・春乃さん・瑛太くんの3人は、負けず嫌いという認識をされていたようだ。くしくも、この3人が、高等部に入る。


「でも、負けず嫌いだから1・2・3何だろうな」

「ふふっ。まぁ、それは、それで良いとして――おい、奈々。さっきから、俺の事、バカ・バカ、言い過ぎじゃね?」

「だって、事実でしょ?」

「おいコラ、俺の彼女だろ――」


 瑛太くんと奈々さんは、痴話喧嘩をしながら、部活に向かって行った。


「あの、2人は、本当に仲いいよね?」

「2人は、お付き合いしてどれ位なんですか?」

「うぅ~~んと、確か、中学1年生の秋頃だったかな。2人が、お付き合い始めたの」

「長い、お付き合いなんですね」


 中学1年生の秋頃だという事は、2年以上のお付き合い。それでいて、友達のようなお付き合いで、お互いの事を信頼し合っている事が、解る。


「では、4人でテスト勉強しますか?」

「そうだな。図書室で良いか?」


 図書室で、勉強をする事になった。


 図書室は、テスト1週間前になったらテスト勉強をする生徒で、自主スペースや、本を読むテーブルの取り合いになるそうだが、今日は、空いている。


 僕と陽葵さんが、隣同士で座り、向かい側に、陽翔くんと春乃さんが座って、テスト勉強を開始する。


 図書室に、ノートにペンを走らせる音だけがする。


 友達同士のテスト勉強は、教え合いが、定番イベントな気もするが、僕たちは、高等部に入る際のテストは、上位10位以内に入っているので、教え合いというイベントは無く、各々で各々の課題を進めている。


「ねぇ、詩季くん」

「何ですか?」


 陽葵さんに、名前を呼ばれた。


 隣を見ると、陽葵さんは、数学の問題集を進めていたようで、解らない問題でもあったのだろうかと思ったが、ペンは、スラスラと走っていたので、そう言う訳では無いようだ。


「問題集は、もう終わったの?」

「終わりましたよ。陽菜ちゃんと遊んだ日には、テスト範囲の問題集は、終わりましたよ」

「私ももう終わったよ」

「――二人とも、何で、もう終わってんの!」


 僕は、学校指定以外の英語の問題集を解いていて、春乃さんは、学校指定の数学の問題集を解いていたが、問題集の問題番号に、赤ペンで〇を付けている問題をノートに解いていた。


「僕は、時間が有れば復習がてらに、問題集解いていましたから」

「私も」


 これは、僕の勉強方法だ。どうやら、春乃さんも同じスタイルで、成績を残していたようだ。


「凄いねぇ~~」

「でも、陽葵さんは、今の勉強スタイルなのですから、無理に変える必要は無いと思いますよ?むしろ、今、勉強方法を変えて、躓いてくれれば、僕の主席キープに、一歩近づくので、有難いですが?」

「むぅ~~絶対に、詩季くんに、勝つんだから!」


 一応、図書室なので、周りに迷惑にならない大きさの声で話しているが、陽葵さんとのお話は、本当に楽しい。


「陽翔くん。2人、仲良いね」

「本当にな。お互いが鈍感で、発展しないが、お似合いな2人だよ」



――― 後書き ―――

今日は、夕方17時頃にも投稿しますので、お楽しみに(*'ω'*)


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