33.調べ方

 僕と高梨さんのペアも、調べ物を進めていく。


 僕は、調べ物と同時進行で、A3用紙にどの内容を何処に、どのように、まとめるかのレイアウトも考える。


 今の学校は、電子化の普及が凄い。


 僕が、小学生の頃は、こう言った調べ学習をするために、わざわざコンピューター室まで行っていた。それが、無理なら教室で教科書を使っての調べ学習が、限界だった。


 今や、生徒1人1人にタブレットが貸与されるというのだから進化したものだ。


 僕は、タブレットを使って調べたい所を調べ終えたので、少し、クラスの雰囲気を見てみた。


 ほとんどのペアが、タブレットを使って調べ物を行っていた。


 ただ、タブレットでの調べ物は、限界がある。これは、2時間目に図書室に移動する必要があると判断する。

 それは、僕の中で、ネット上の情報より書籍の情報の方が、正確だと思っているからだ。


「ねぇ、詩季。頼まれていた事、調べ終わった」


 高梨さんから、報告を受けて調べて貰った内容を見てみるが、調べたと言うより、ただ、検索サイトで出てきた記事をそのまま書いただけの内容だった。


「全然です。もう一回、調べ直してください。今、マーカーした所を重点的に」

「何で、内容的にも――」

「これでは、調べたと言っても10%です。これを、まとめるとなると編集が、出来ません。つまりは、ただのネット記事の書き写しにしかなりません。沢山の内容を調べてまとめたい内容に編集するためには。もっと沢山の材料が必要です」

「中等部時代は、これでOKだったじゃん」


 中等部時代か。


 僕が、幼馴染達と一緒に居た頃は、これと同じ内容で良かった。何故なら、僕が足りない所を補って調べていたからだ。

 そして、最後のまとめも僕の役目だった。


「それは、足りない所を、僕が、してあげていたからです」

「なら――」

「――なら?何が、言いたいのでしょうか」

「ごめんなさい」


 僕は、笑顔で高梨さんを見た。ただの作り笑顔で見た。


 笑顔と言うのは、普通の場なら場を和ませる効果を持つが、時の寄っては、相手を怯ませる効果をも持ってしまう。


「高梨さん。何時までも、僕が、手助けをするとは思わないで下さい」

「そっ、それは、どういう意味?」

「そのままの意味です」


 キーン♪コーン♪カーン♪コーン♪


 1時間目の終了を告げるチャイムが鳴った。


「高梨さん。2時間目は、図書室に移動します。準備をしてください」

「うっ、うん」


 僕は、先生に、2時間目に図書室の利用を申請するために、移動する。


 一応、この2時間分は、図書室も押さえているようで、自由に移動して良いとなっているが、一言添えてから移動するように言われている。


「あっ、詩季くんも図書室に行くの?」


 どうやら、陽葵さんも図書室に行く事にしたらしく、同じ様に先生に申請しに来ていた。


「はい。どうしてもネット記事だと嘘が飛び交いますしね」

「なら、一緒に行こうよ。荷物も持ってあげる」

「本当に、助かります」


 2人で、先生に2時間目から図書室に移動する旨を伝えた。先生からは、2時間目終了の10分前には、戻って来るように言われた。


 僕は、席に戻って教科書類をまとめ終える。


 陽葵さんも一緒に行ってくれるのは、本当に助かった。高梨さんに、荷物を持ってもらう事を頼むべきか悩む所だったからだ。


「詩季くん」


 丁度いいタイミングで、陽葵さんが来たので教材をお願いする。


「へぇ〜〜しきやんも図書室行くんかぁ〜〜真似るなや」

「真似なんてしていませんよ、奈々さん」

「あはは、怖い、怖い」


 僕達は、図書室に移動を開始する。


 高梨さんは、少々の居づらさを感じているようだが、構わずに向かう。


「陽葵さんと奈々さんは、何処を調べているのでしょうか?」

「私たちは、ここだよ」


 同じ授業を受けていれば、自然とこういう話題に落ち着くだろう。陽葵さん達が、調べている内容を目にしてみたら僕達に近い内容を調べていた。


「なるほど」

「そういう、詩季くんは、何処調べてんの?」


 向こうが、見せてきたのだからこちらも見せるべきだろう。


「僕も同じ所ですよ」


 向こうは、下書きを見せてくれたので、こちらも下書きを見せる。


「同じ、所なんや」

「真似したなぁ〜〜しきやん」

「真似をしたのは、そっちでしょ?」

「「言ったなぁ〜〜」」


 とやかく話していると、エレベーターの前に来た。


 図書室は、2階にあるので、2つ降りないといけない。


「じゃ、私と高梨さんは、階段で図書室に向かうわ」

「え、詩季とのペアは、私――」

「あんた、しきやんのサポート出来んの?」

「奈々さん」


 このまま放置をすれば、大変なことが、起こる気がしたので、奈々さんを止めに入る。

 奈々さんが、警戒するのも理解出来る。だからこそ、事が悪化するまでに阻止しないといけない。


「陽葵さん、今回は――」

「うん、わかってる」


 陽葵さんは、奈々さんと一緒に階段を使って下に降りる事にした。


 僕は、エレベーターを呼ぶボタンを押した。


「高梨さん。行きますよ」


 一応は、高梨さんのペアを組んでの学習なので筋を通す事にする。

 今回は、陽葵さんも、偶然、一緒に図書室に行くことになっていたが、本来であれば、高梨さんと2人だからだ。


 エレベーターが到着したので乗り込み、目的の階のボタンを押して移動する。


「ねぇ、詩季。何で、名前で呼んでくれないの?」


 エレベーターと言う密室に、2人で乗り込んで直ぐに、高梨さんから質問された。


「それに、高等部に上がってから私たちと距離あるし」


 高梨さんの言動を見るに、まだ、僕達は、仲のいい幼馴染と言う関係性だと思っているのか?


 人の心は、よく分からない。


 陽葵さん達に、抱いている僕の感情が、友情なら高梨さん達に抱いている感情は、怒りだ。


 ただ、相手が僕をどう思っているかは、未だに分からない。



――後書き―――


先日、10万PV達成しました!


これも、読者様のお陰でございます(*'ω'*)


これからも、当物語をよろしくお願いします。


面白いなぁと思ったら作品のフォローと☆☆☆評価して頂くと執筆のモチベーションが上がります!


是非、お願いいたします!


噓真 蓮都


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る