20.フォロー

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「詩季、校外学習ここに行きたいからコースまとめておいてくれ」


「詩季くん、大海とデートの予定だから代わりにお願い!」


「詩季くん、ごめんね。用事があるからまとめお願い」


 中等部2年の秋頃に、校外学習があった。その時は、幼馴染たちと同じ班になった。


 見学前に、班で何処に行くかを決めたまでは良かった。


 だけど、その後の見学ルートなどは、役割分担の名のもとに、僕の役目になった。


 校外学習を終えた後のまとめ学習に、関してもだった。


 石川くんの彼女の岡さんは、彼氏とデートしたいと自分がまとめるはずだった範囲を僕にお願いして行った。


 高梨さんは、手伝う時もあれば、用事と言って帰って行く日もあった。


 陽葵さん達に、出会うまでは、それが普通だと僕の役割だと思い込んで、過ごしてきた。


 陽葵さんと出会って接していくうちに、陽葵さん達と一緒は疲れなかった。だけど、幼馴染達と一緒は疲れると気がついたのだ。




○○○




「場所は、生田神社周辺で、どうだ?」


 陽翔くんからの提案に、陽葵さんが学校から配布されているタブレットで生地神社のHPを開いて班員に見えるように中央に置いた。


「生田神社の神様は、恋愛の神様と言われてんな」

「生田神社の御神体は、稚日女尊わかひるめのみこと機織りをする女神として糸をつむぐ、つまり、縁をつむぐ『縁結びの神』と言われるみたいですよ」

「何か、詩季くんサポート役に自然と徹しようとしてない?」


 長年染みついた癖は、中々、抜けない。


 幼馴染達とつるんでいた時は、基本的に、彼らがやる事のサポート役だったので彼らが発した事に対して、すぐさま詳細を調べて情報を教えていた。


「どうなんでしょうか。長年の癖が染みついているのかもですね」

「でも、凄いよな。ひとつの情報をすぐさま詳細に調べ上げるのは、簡単には出来ないぞ」


 陽葵さんに指摘された時は、この癖は直さないといけないと思った。だけど、陽翔くんからこの癖に関して褒められた。


 つまりは、調べる能力は保持しつつサポート役に徹する癖は抜いていけばいいという事だ。


「生田神社なら駅も近いし、近場に飲食店や商業施設などあって休憩も取りやすいだろうし」


 三宮への校外学習なら色んな所に行けるだろう。


 その中の候補の中から生田神社を選んだ理由は、僕の体調面を考慮してくれているのだろう。


「そうだね。詩季くんも楽しめないと意味無いもんね!」

「任せなさい、詩季くんは、私が守る!」

「ひまりん、あんたが1番の問題児なんよ」

「んなによぉ〜〜」


 この人たちは、大変に愉快だ。


 物静かな印象の住吉さんを誘ったのはいいが、馴染めているか心配だったが、僕の隣でクスクスと笑っている。


「どうしたんですか、白村くん?」

「なんでも、住吉さんが馴染めているか心配だっただけです」


 いけない、住吉さんの事を気にするあまり視線を向け続けすぎたようだ。


 そして、住吉さんと逆隣りに座っている陽葵さんから、物凄い、圧を感じるのは気のせいか。







 結局幼馴染達は、僕を除く3人で班を組むことになった。


 まぁ、幼馴染3人からは、とてつもなく暗い空気がクラス中に漂っていた。


「所でだ、石川。お前、舐めてんのか?」


 そんな最中に、守谷先生が、石川くんに対して怒りの感情がこもった声を発したのだ。


 高校生になりたての僕らからしたら何事だと反応してしまうのも仕方がない。


「な、舐めているとは」

「警告に対する反省文だ。十分過ぎる期限をあげたのに、この内容はおかしくないか?」


 守谷先生は、石川くんが座っている机に、彼が提出しただろう反省文を置いた。


「同じ文言だけならまぁ、大目に見てやっても良かったけどな。1行いっぱい使わず、字もふざけたように大きく書きやがって。反省していないのが丸わかり」


 石川くんは、本当に、馬鹿だなぁと思った。


 中等部のころから反省文の書き方に関しては、口酸っぱく言われていたのに。


 あぁ、そうか。


 中等部時代は、彼が何かやらかしてしまう前に、僕が、各所にフォローしていたから書く機会が無かったか。


 にしても、学校に提出する――しかも、反省の意を示すための物で、手を抜くとは、怒られても仕方がないと思う。


 耳を澄ましていたら、視線を感じた。石川くんの席から。


 チラッと見てみたら、何と言うご都合主義だろうか、目線で、僕に助けを求めているようだった。


 確かに、僕が悪かったかもしれないよな。


 中等部時代は、彼らがやらかす前・後で、僕が、教員・クラスメイトにフォローを入れていたので問題になる事が無かった。


 それが、原因で幼馴染達の甘えになっているのなら――最後の情けだ。


 僕は、立ち上がって杖を突いて幼馴染達の近くまで移動した。


 向かっている方向を見た陽葵さんと陽翔くんは、直ぐに立ち上がり両隣に来てくれた。


「守谷先生、どうしたのですか?」


 僕は、守谷先生から事情を聞きだした。


 僕の推測通りだった。


 警告を喰らった石川くんに、反省文10枚の罰になり提出期限は、特別に今週の金曜日まで待っているとの事だ。


 そりゃ、配慮をして貰ってこのような反省文を提出されたら先生だって怒るだろう。いや、怒らない方が居おかしい。


「へぇ~~これは、石川くんが一方的に悪いですよね。入学早々に、暴力行為で警告喰らったのに、守谷先生の温情を無下にしたのですから」


 守ってくれると思っていた人に裏切られたという顔をしている幼馴染達だが、のはどっちだよって思う。


「守谷先生。石川くんには、2枚目の警告を出さない代わりに、反省文15枚。期限は、明日の放課後まで。今回と同じ事並びに提出期限に遅れた場合は、ペナルティ含め警告3枚目までと言うのはどうでしょうか?」


 提案は、主に守谷先生寄りだ。


「確かにな、白村の言う通りにしよう。追加の反省文の紙だ。勿体ないから先の10枚は再利用してくれ」


 守谷先生は、追加の5枚の反省文のプリントを渡して教卓に戻って行った。


「なぁ、詩季」

「あっ、もちろん、僕はどっちも手伝いませんよ」


 僕は、何か助けを求めるような石川くんの声を無視して西原兄妹と一緒に席に戻る事にした。

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