18.班選択

 守谷先生とのお話を終えて、HR教室に戻ると、西原兄妹に、瑛太くん・奈々さんカップルと高梨さんを初めとする幼馴染達が、面と向かって話し合っていた。


 奈々さんの呼び方に関しては、最初は、苗字呼びをしようと思ったが、本人が下の名前で良いと言うので、そう呼んでいる。


 流石に、陽葵さんに、さん付けしているので奈々さんもさん付けしている。


「何をしているのですか?」


 僕は、集団に向かって問いかけた。


 すると、奈々さんがこちらにやって来て事情を説明してくれた。


 陽葵さんは、高梨さんと睨み合っている様子だ。今にでも、口喧嘩を初めかねない雰囲気だ。

 下手したら、実力行使もい問わない雰囲気も感じる。


「校外学習の班でね、詩季くんを巡る争い的な?ひまりん、陽翔と高梨達がね」

「なるほどですね。陽葵さん、陽翔くん、一旦、下がりましょう」


 僕は、これ以上最悪な展開にならないように、西原兄妹に1歩下がるようにお願いする。


 2人は、僕の声は聞こえたようで、お願い通り1歩引いてくれた。


 幼馴染達は、それを自身達へ味方したとでも捉えたのだろう。僕の方向に歩み寄って来た。


「なぁ、詩季。校外学習は、俺らと同じ班になろうぜ。中等部は、そうだったじゃねぇか」


 奈々さんの言っていた通りだった。


 さっきまでは、張本人が居なかったため、僕を誘うための主導権争いをしていて、張本人が現れたため、直接判断を聞こうとしているのだろう。


「詩季が、班員になれば移動にバス使えて色々回れるじゃないか。そうしたらまとめも他より良くなる」

「――僕は、詩季の体調をよく見て1ヶ所に集中的に見に行くべきだと思うね」


 陽翔くんが、僕の前に立って、石川くんに対して反対意見を発した。


 本日の帰りのホームルームで、僕が、所属する班には、バス移動が認められる事が、通達されている。

 

 どうやら、口論の原因は、バス移動に起因しているように見える。


 陽翔くんと石川くんが、再度、口論しようとしている。


 まぁ、2人の討論を聞いてどちらが、僕の事を考えてくれているかは明白だったので、すぐに答えを出す。


 僕のを班員に入れるメリットを見てる人と僕の事を気にかけてくれる人。


 どちらを取るかは明白だろう。


 僕は、ゆっくりと動いて手を差し出す。


「陽翔くんの班に入れて貰えませんか?」

「――!もちろん。班員は、妹とバカップル2人だ」


 元々、幼馴染達の班には、入るつもりも無かった。一緒に居ると疲れるから離れたのに、一緒の班になっては意味が無い。


 まぁ、断る口実を向こうが作ってくれたのは、有難い所か。


「そう言えば、班員は、最大6人までですよね?」

「そうだったな」


 僕は、幼馴染達に目も向けずに、陽翔くんに話しかけた。


「おい、ちょっと待てよ」


 石川くんが、僕の肩を掴もうとする。


 僕は、手が触れられそうなギリギリのタイミングを見計らい。


「暴力――振るってみますか?」


 石川くんの手が止まった。


 昨日の父親の1幕を見ていたので、「暴力」という単語に反応すると思っていたが、やはりだ。それに、石川くんは、瑛太くんへの暴力が原因で警告を1枚貰っている。


 2日続けての暴力行為での警告は、クラス内での立ち位置を喪失するに等しいのだ。


「石川くん。貴方は、そんなにのんびりしている暇は無いでしょう」

「な、なんだよ」

「警告に対する反省文。早く、出さないと大変な目にあいますよ?」


 僕は、それだけを言うと目的の生徒の所に歩み出そうとする。


「ねぇ、詩季!」


 また、呼び止められた。


 呼び止めた人物は、心当たりがあり過ぎる程、中等部時代は近くに居た人物だ。


「何でしょうか、高梨さん」

「え、なんで、琴葉って名前で呼んでよ――」


 何で、別れた女の子に対して、名前呼びしないといけないのか。


 男女交際は、1度付き合って別れたのならそれきりだ。


「いぇ、高梨さんと呼びますよ。もう、そんなに深い関係ではないのですから」

「そ、そんな、し――」


 これと言った用事は、無さそうだったので僕は目的の生徒の元に歩みを進めていく。


 まだ、教室に残っていた。


 彼女は、入学の経緯からまだ、交友関係を構築出来ていないだろう。


「住吉春乃さん、初めまして。白村詩季と言います。校外学習の班が、まだ決まっていないようでしたら僕たちとご一緒しませんか?」


 住吉春乃すみよしはるのさん。


 中等部から上がってきた生徒が多数を占める進学クラスにおいて、唯一、高等部入学で進学クラス所属になった女の子。


1位 白村詩季

2位 小原瑛太

3位 住吉春乃



 しかも、成績は上から3番目だったのだ。


 天才として、興味がある。


 彼女が中学校時代にどれだけの努力をしてきたのかを知りたい。


「住吉さん、一緒の班にならない?」


 いつの間にか移動していたのか、後ろから、陽葵さんが、顔を覗かせた。


「もしかして、もう、班決まってましたか?」

「ううん、むしろ、周りは、既にグループ形成されてて――」

「では、一緒の班になりましょう」

「ありがとう!」


 住吉さんに、一緒の班になる事が決定したので、守谷先生に提出するためのプリントに班員を記入していく。


「班長と副班長は、誰にする?」


 班員全員を書き終えた後に、瑛太くんが、班員・副班長をどうするかの発言がされると、皆、僕に視線を向けた。


 これは、そう言う事だろう。


「わかりました。僕が班長を務めましょう」


 無駄な抵抗を辞めて、記入欄に僕の名前を書く。


「詩季くんが、班長やるなら、私が副班長だね!」

 

 何かを待ってました、と言わんばかりに、陽葵さんが立候補して、皆の同意を得ずに副班長の所に、自分の名前を書いていた。


 副班長を積極的にやりたいなら班長をやって欲しいの思うが、住吉さん以外は、こうなる事をわかっていたみたいだ。


「陽葵さんやる気あるみたいですし、班長にしま――」

「無理ですぅ〜〜もう、詩季くんが班長ですぅ〜〜」

「子どもですか!」

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