第3話 なぜ「腹が立つ」と「頭に来る」のか?

「怒り」を表現するのによく使われるのが、「腹が立つ」と「頭に来る」です。

「腹が立つ」と、何かが「頭に来る」のでしょうか?


まずは、それぞれの語源を解説しましょう。


「腹が立つ」は、「おなか」が立ち上がるのではありません。

「腹」には「心や気持ち(感情)が収められている場所」、「感情や精神の中枢」という意味があります。


かつては、「腹」こそが人間の体の中心であり、心も「腹」にあると考えられていました。現代では、「ハート(心臓)」辺りに「心」があると考えている人が多いでしょうか。


「腹が立つ」以外にも、「腹」を使った言葉がたくさんあります。

「腹の虫がおさまらない」「はらわたが煮えくり返る」「腹に据えかねる」「腹に一物(いちもつ)ある」「腹を決める」「腹を割って話す」「腹を探り合う」「腹黒い」など


そして、「立つ」は「感情が激する・激昂する(げきこうする)」という意味が由来になっています。「沸き立つ(わきたつ)」の方がイメージしやすいでしょうか。


つまり、「腹が立つ」の意味は、「人の心が激しく沸き立つこと、感情が高ぶること」で、特に「怒りの感情を抱く」という意味で使われています。


それでは「頭に来る」とは、何が頭に来るのでしょうか?


ものすごい怒りによって、一瞬で沸点を迎えることを「カッとなる」ともいいますが、このとき顔は紅潮しています。


感情が高ぶって、冷静さを失うことを「頭に血が上る」というように、怒りによって「頭に血が上る」状態が、「頭に来る」です。つまり、「頭に来る」のは「血」です。


頭に血が上って、顔が紅潮するので、頭や顔の体温が上がって「カッとなる」のです。「頭に来る」をさらに強調した言葉が「鶏冠(とさか)に来る」です。


そして、怒りを鎮めて、冷静になるために、血が上った状態の「頭を冷やす」のです。頭に血が上って冷静さを失ったら、しっかり頭を冷やした方が良さそうですね。


怒りの表現をもう一つ。

「怒り心頭に発する」という言葉があります。


「怒り心頭に達する」と間違えて使っている人が多いようですが、正しくは「発する」です。また、「怒り心頭」と略して使われることもあります。


「怒り心頭」の「頭」は、名詞や動詞などの後につける接尾語で、「あたま」の意味はないそうです。


そのため、「怒り心頭に発する」で、「心から怒りを発している」という意味です。



「怒り心頭に発する」は、「腹が立つ」と「頭に来る」を合わせた言葉では?

と思って調べたのですが、「腹が立つ」に近い意味のようです。

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