Chapter 8 : 決心
私はつぶやく。兵士を恨むことはできない。考えてみれば、こうなったのはすべて私の責任で、彼らも私の犯した過ちの被害者にすぎないのだ。不満があるのは事実だけど、逆に申し訳なくなり、ただ引き下がるしかなかった。
いつの間にか日が沈み、空が暗くなっている。
「時間は確実に流れていると感じる。この選択が本当に正しいのかはわからないけど、果たして、このゲームはどう終わるのだろうか。確かに何十回もクリアして、実績達成率100パーセントの私なのに!」
「ア!」
頭を抱えてあれこれ悩みながら、ベッドにドスンと倒れ込んだ。
それにしても、あの男は結局どうなったんだろう? 解放されたのは確かだよね? 約束を守ると言ったのだから、確かだろう。
不安でたまらない。
どうしてこんなにあの男が気になるのだろう? もっと近づけば、あの男だけが困るのは明らかだけれど、どうにかしてここから抜け出し、彼に直接謝りたい。
窓の外を見る。変わらず高い。夜になってよく見えないから、逆にもっと高く感じる。やはり飛び降りるのは無謀だ。
「どうすればいいのか?」
しばらく静かにして、空を見上げるが、月は動かない。
「何だ…また!また!また! 時間が止まったのか?」
再び選択を強いられている気がする。今やこれがうんざりしてきた。
「この状況で下す選択は一つだけ。」
「ここから抜け出すこと。」
「そう、これしかない。」
私はどうすればいいのか頭をひねる。
「正門から出るのは確実に見つかるだろう。」
その時、メイドが入ってくる。
「あなたは!」
そうだ、私には専属のメイドがいた。
「いつもこの時間に紅茶を持ってきてくれたよね?」
メイドは驚いた表情を浮かべる。私がなぜこんなに慌てているのかわからないのだろう。
「はい、お願いされたので…」
私は一歩で彼女の腕を掴む。
「お願いがあるの。」
「何ですか?」
「服を着替えて変装しよう。あなたは私になりきって、私はあなたになりきるの。そして、私がここから出られるように手伝ってほしい。」
「それがどういうことですか?」
「お願いだから。」
「…」
「その男に直接言いたいことがあるんだ。」
彼女は眉をひそめる。
「約束を破るつもりですか?」
「私もそうしたくはない!だけど、心がそうさせているの。」
メイドはため息をつく。当然、承諾の意味だろう?
「分かりました。ただし、一つ条件があります。」
「あなたも条件なの?」
「…」彼女は何も言わず私を睨む。
私はただ恥ずかしくて笑うだけだ。
「わかった…何なの?」
「危険なことが起きたら、必ず自分で解決しようとせずに助けを求めること。そして約束した時間にここに戻ること。この二つです。」
「何それ!そんなことを真剣な顔で言うの?難しい条件じゃないね?すごく簡単じゃない!」
「何を考えていたのかは分かりませんが、私が公女様に望むのはこれだけです。ただ約束した時間に安全に戻ってくること。」
「分かった。」
私は服を着替え、ウィッグをかぶる。
「どう?変装した姿は本当に完璧だよね?」
彼女は私が浮き立っている様子を見ても冷静だ。
「はい、そうですね。」
「じゃあ、少し待っていて。」
私はすぐにドアに向かう。胸が高鳴り、破裂しそうだ。
果たして騙されるかな…
「ちょっと待って…」
入口で兵士が立ちふさがる。私は足を止める。
「どこに行こうとしているのですか?」
ここでまともな理由を言えなければ、さっきの努力が無駄になってしまうだろう。
「うーん…公女様が今日は別の紅茶を飲みたいと言ったので、別の紅茶を取りに行きます。」
「そんなことはあり得ないだろ…お前は嘘をついているな。」
私は驚き、冷や汗をかく。
「いや…違うんです。」
「公女様が別の紅茶を求めるわけがない。」
兵士と押し問答しているうちに、ウィッグが脱げてしまう。
「公女様、どこに行こうとしているのですか?確かに…」
「違う!!!!」
私の叫び声と共に、目の前が真っ暗になる。
「ダメだ!こんなことが!」
再び目を開けると、やはり部屋に一人ぽつんといる。
メイドもいなくて、服装もそのままだ。
これは明らかに失敗という意味だろう。
「難問だな…」
どうすればいい?失敗したらループすることをありがたいと思うべきか?
これは祝福なのか?それとも罰なのか?
私は眉をひそめ、頭をかきむしる。
その時、誰かが入ってくる。
「紅茶を持ってきました。」
「うん。」
「大丈夫ですか?」
「大丈夫だ。」
「それなら、私も準備します。」
彼女はゆっくりと紅茶を注ぐ。
そして二人とも何も言わないので、ただ気まずい静寂が続く。
こうしてじっと待っていたら、何か変化が生まれるかもしれないと思い、無理に冷静さを保ちな
がらメイドだけを見つめる。
メイドが私をちらりと見て、頭を下げる。
「それでは、私はこれで失礼いたします。」
「何だって?それで終わりなの?」
「何か他に必要なものでもありますか?」
「え?いいえ、何もない。」
「それなら、ゆっくりお休みください。」
メイドは簡単に挨拶をして部屋を出て行く。
私は期待していた自分が恥ずかしく、虚無感だけが漂ってため息をつく。
私は再び立ち上がり、窓に向かう。高くそびえている。暗い夜だからか、逆に地面よりも空が近く感じる。
やっぱりこの方法しかないのだろうか?
説得することから間違っていたのか?
それともここから飛び出して成し遂げるのか?
私は目をぎゅっと閉じて、城の外に飛び降りる。
そしてしばらくめまいがした後、目を開けるとまた部屋の中でベッドに横たわっている。
私は顔を両手で覆った。
「これもダメってことなのか?やっと勇気を出してこんな馬鹿げたことをしたのに…」
無意識に笑い声が漏れる。
待ち続けても、月は動かないままだった。
このゲームは確かに私に選択を強いている。
やっぱり時間が来ると、メイドが私の部屋に入ってきて紅茶を注ぐ。
そう、この部分までが正解だ。
そして、今私が新しい答えを出す番だ。
私は再びメイドと服を着替え、その男の元へ直接向かうことを選ぶ。
「私がうまくやるから。ここでじっと待っていて。」
「はい、わかりました。」
私は大きく深呼吸して、再度挑戦することにする。同じ失敗を繰り返さなければ、きっと何か進展があるだろう。そう信じている。
「自然に、できるだけ自然に。」
ドアをそっと開けると、すぐに兵士が立ちふさがる。
「ちょっと待って!」
「どうしたの?」
別の紅茶を理由にするのは通用しない。私はこの時間にこれだけを飲む人だと言ったのだから。
「疲れたので少し休みたいとおっしゃっていました。今日は色々あったから、早めに出かけるようにと言われました。」
「本当に?」
「はい、本当です。」
兵士は疑念に満ちた表情で私をちらりと見て、ドアをノックする。
私は胸が高鳴るが、できるだけ平静な表情を保とうとする。
そして、部屋の中から声が聞こえる。
「公女様。」
「そうだ、ほんとうだ。まさか部屋の中に入るつもりじゃないよね?明らかに一人になりたいって言ったはずだし…」
「はい、わかりました。申し訳ありません。」
兵士は気まずそうに頭をかきながら咳払いをする。
私は少しでもぐずぐずしたら余計な疑いをかけられると思い、素早くその場を離れる。
「では、私はこれで失礼します。」
ありがとう。この恩は絶対に忘れないつもりだ。
私はメイドの助けを借りて城を抜け出し、暗い夜道を走る。
ふと空を見上げると、月がゆっくりと動いている。
不安を振り払うことはできないが、今走っている道が正しいと感じると自然に力が湧いてくる。やっぱりこれが正解だった。
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