クウちゃんとお兄ちゃんの一大事 その2

 ウサギさんというのは、捕食される立場なので、自分が弱っているというのを、見つからないようにするそうです。

 その為、クウは、陰に隠れてじっとしているのでしょう。


 それが、どうやら、それだけでは、済まされなくなったようです。

 今までは、じっとしているだけだったのですが、苦しそうに、首をすくめはじめました。

「吐きそうなのかな」と、心配してみていると、体をよじって、ッグッグとけいれんのように不自然な動きを繰り返します。


「ああ、クウが死んじゃう、クウが死んじゃう」

 もう、心が、破裂しそうです。


 今日は、診察じゃないけど、注射でもなんでもしてもらって、ちょっとでもクウのしんどさを取ってもらおう。それでお兄ちゃんの所に行って、お兄ちゃんをこっちに連れて帰ってくる。それから、明日はクウに手術を受けてもらうのだ。


 後の事は後!

 お兄ちゃんの所へ行く準備と、クウのキャリーケースを持って家を出ました。


「先生お願いです。お願いです。昨日の今日の、明日は手術だって言うのに、本当に申し訳ないんですけど、苦しそうなんです。どうか、クウを診てやってください」


 先生には、「来たって一緒なのに」って、思われるだろう。「できることはない」って言われるかもしれない。


 でも、先生は、嫌な顔一つせず、診てくださいました。

 そして「ん?」と、言うのです。

「これは…もう一度レントゲンを撮りますよ」

 先生はしばらくして戻って来ると、レントゲン写真を見せながら言いました。

「結石が、尿道のすぐ手前に移動しています。上手くいけば、おしっこの出口から取り出せますよ。やってみますか?」

 取り出せる?あまりの意外な言葉に、一瞬、呆然としました。

「本当ですか?お願いします」


 しばらくすると、先生は、銀のトレーに石を載せて帰ってきました。

「成功です。もう、大丈夫ですよ。この病気は、石さえ取れれば大丈夫なんで。小さいものが残っているかもしれませんが、おしっこと一緒に出るでしょう」


 「クウは、もう、大丈夫?」


 余りのことに、先生が目の前にいるにもかかわらず、涙が止まらず、ただただ、涙がとまりませんでした。


 この後、クウちゃんは、あれはいったい何だったんでせう…と思うぐらい元気になりました。

 でも、もう二度とあんな目に合わないように、ペレットは動物病院で売っている特別仕様に、おやつも、体に悪いものはカットです。


 お陰様で、どどどどど!ダンッ!キッ!キ!シュタ!と、走り回る日々。

 そして、その後はしばらく、お兄ちゃんと暮らすことになりました。お兄ちゃんは、就職活動のプレッシャーで、うつ病にかかっていたのです。


 そのお話しは、またの機会に。

「クウちゃん、はじめてのキャンプに行く」で、お伝えしたいと思います。








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