第17話 冒険者ギルド
イースが町に入ると、町の奥にお城ご見え、そこに向かって道が続いていた。
道の両脇には、肉屋、八百屋、鍛冶屋等のお店が並んでおり、奥の方にも家があった。
イースは村とは違う町の雰囲気に落ち着かず、おどおどしながら歩いていた。
イースは騎士に教えてもらった冒険者ギルドに行こうと、右を見ながら進んでいく。
すると、剣と杖が交差したエンブレムが掲げられた建物を見つけた。
イースは
ここが冒険者ギルドか。
と思い、建物内に入った。
建物の中は、奥にカウンターがあり、カウンターの中には、オシャレなスーツのような制服を着た赤色のロングヘア、胸はグレープフルーツくらいのスマートな小悪魔女子と、茶色のショートボブ、胸は小ぢんまりだが、クビレもあるスタイルが良いクール系女子の二人が立っている。
カウンターの脇にはテーブルや椅子が置かれ、沢山の人が話をしていた。
イースは
賑やかなところだな。
と思う。
建物の中にイースが入って来ても誰もイースを気にしていなかった。
というか、それよりも目に引く出来事がカウンターで起きている。
茶髪の女性が顔に傷のある男性冒険者に怒鳴られていた。
男性「おい!何で依頼の薬草を取ってきたのに、依頼達成にならねえんだ!」
女性「薬草の状態がクソだからです。分かったら出直して来て下さい。このクソやろう。」
イースは思う。
あの女性、怖い。
男性「なんだと!このアマ!ふざけんなよ!おい、ローゼちゃんからも言ってやってくれよ!」
男性は赤い髪の女性に向かって言う。
ローゼ「え~。でもランの言うとおりだから何も言えないよ~。そもそも、薬草を引っこ抜くだけなのに、何で葉っぱとかボロボロなの~?これ自分で取ったの~?」
男性「え!あ!自分で取ったに決まってんだろ!」
茶色の髪の女性が言う。
ラン「あなたは、スペード共和国でCランクでしたね。紹介状が無いので最低ランクのFランクからやってもらってますが。風の噂で聞きましたが、あなた前の国の時に低ランク冒険者から素材を横取りしていたみたいですね。この薬草も横取りしたんじゃないですか?」
男性「んな訳無いだろ!証拠あんのか!」
ラン「無いですね。でも、その薬草の状態じゃ依頼達成にはなりません。お帰りください。クソ野郎。」
男性「黙って聞いてりゃ良い気になりやがって!」
男性はキレたようで、ランに掴みかかった。
すると、ランとローゼの姿が消える。
ドガァーン
次の瞬間、男性はうつぶせで床とキスしており、男性の頭を右足で踏みつけるローゼと、左腕の関節を決め、男性の首を押さえ、背中に股がって座るランの姿があった。
ローゼ「お痛はダメ~。」
ラン「私達、こう見えてAランクくらいの実力はあるんですよ?Cランクごときが調子にのらないで下さい。この雑魚が。」
ギルド内は静まりかえる。
ランは気絶した男性の襟首を掴むと引きずってどこかに歩いて行ってしまった。
ローゼ「皆~お騒がせしました~受付再開しますね~!」
ローゼが何も無かったかのように言うと、また、冒険者達が並んで手続きを始める。
イースはそんな光景を見て思う。
冒険者ギルド怖い
と。
そのうち、ランも戻ってくるとトンカチと板で床を直した。
イースはどうして良いか分からず、突っ立ったままだ。
ランは床を直し終わり、立ち上がるとちょうど目の前に服がボロボロで浮浪者みたいなイースを見つける。
ラン「何か御用ですか?物ごいは外でやって下さい。このゴミが。」
イースはランのオーラに押され、怖くて怯え出す。
イース「!?あ、あ・・・」
ラン「早く要件をどうぞ。でなければ排除しますよ。」
イースは震える手で荷物から紙を出し、冒険者登録をしたいと書き、ランに見せた。
ラン「何ですか?あぁ、登録ですね。最初から言って下さい。何で話さないんですか?」
イースは人付き合いをしてこなかったので会話が苦手だと書いてランに見せた。
ラン「そういう人もいるんですね。では、登録しますので、この申請書を書いて下さい。」
ランはイースに申請書を渡した。
イースは申請書を受け取り、内容を見る。
申請書の内容は名前を書くだけだった。
イースは、すぐに名前を書き、申請書をランに渡す。
ラン「イースさんですね。それじゃ、名前の横に血を垂らして下さい。」
ランは針山を差し出したので、イースは人差し指に針を刺して血を出し、申請書に垂らした。
すると、紙が光り、縁が灰色になる。
ラン「あれ?灰色って・・・。あなた、ちょっとそっちで待ってて下さい。」
ランはそういうと、奥の部屋に入って行った。
イースは椅子に座って待っていると、ランが戻ってくる。
ラン「イースさん。ちょっと面接しますので、こちらにどうぞ。」
イースはランに案内され、奥の部屋についていく。
ラン「中に入って下さい。マスターがお待ちです。」
イースはランに言われて、部屋の中に入った。
部屋の中は、奥に大きな机があり、机には沢山の書類が積み重なっている。
そして、椅子に
白いショートボブの10代前半に見える女の子
が座っていた。
女の子「来たか。まあ、そこに座れ。」
女の子といってもギルドマスターだからか態度は偉そうだった。
というか、実際、偉い人な訳だが。
イースは机の前にあった椅子に座る。
女の子「率直に言うが、お前、才能無しだよな。」
イースは女の子に言われ、びっくりして体を震わす。
女の子「そういえば、コミュニケーションが苦手だったな。まぁ、態度で分かるから良いがな。」
イースは女の子の言い知れないオーラにおどおどしていた。
女の子「お前、冒険者ランクがランク外なんだよ。」
イースはびっくりする。
冒険者になれば、必ず最低ランクの登録はできると思っていたからだ。
イース「・・・ぼ、ぼ、冒、険者、・・・に、な、な、なれ、ま、ま、すか?」
女の子「まぁ、できなくはないがな。これから説明するぞ。」
イースは黙って頷いた。
女の子「まず、冒険者になる事は可能だ。だが、ギルドカードは発行できない。」
イースは首をかしげる。
女の子「ギルドカードの説明をするぞ。ギルドカードの仕組みは、それぞれの人の才能に反応して登録できる仕組みなんだ。これは才能を与える神の力を利用して読み込んでいるためだ。だが、お前は才能無しのため、神の力が反応しない。要はエラーを起こしている訳だ。紙の枠が灰色になったのはそういう訳だ。この世界で最の無しは神に認められていないという事だ。教会から言えば異端者だな。これは教会の敵って事だ。この状態でギルドカードを出せば、ギルドも教会の敵な訳だ。だからカードは出せない。だが、冒険者にはなれる。」
女の子は続ける。
「要はカードを発行せずに冒険者の依頼をこなすという事だ。だが、正式に登録された冒険者では無いから、冒険者登録した者が使えるサービスは使えない。ステータスを測ったり、お金を預けたり、パーティーメンバーの紹介、依頼人との仲介等だな。だからお前にできるのは、薬草採取や荷物運びだけだな。どうする?それでもやるか?」
イースは、すぐに頷いて答える。
イース「や、や、やります。」
女の子「・・・まぁ、それしか仕事につく方法は無いからな。それじゃ、薬草等の納品の仕方や荷運びの依頼の受け方をランに聞け。それじゃ、もう良いぞ。」
イースは女の子にお辞儀をして部屋を出た。
女の子「それにしても、えらく体を鍛えてあったな。努力したのだろう。神もひどい事しやがるな。全く。」
女の子はボソッとぼやいたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます