第10話 イースの夢


そうこうしているうちに、マリンとアックは王立クローバー学園高等部に入学するため、村から首都に向かっていった。


村の人達は皆で二人を送り出した。


他のファマやウズ等の村の子供達は、村の領主町にある高等部に入学するため、一時的に帰省したが、すぐに戻っていった。


高等部を卒業すると、子供達はそれぞれ冒険者や町で商いの仕事をしたり、武器等を作る鍛冶屋で修行したり、村に戻って農家になったりする。


だが、イースは違った。


学校に行ってないからだ。


イースがクローバー王国でできる仕事は両親の手伝いくらいしかない。


これは才能無しのためだ。


もし、イースが違う仕事をしたいと思ったら、外国のジョーカー連邦という国に行くしかない。


ジョーカー連邦は、才能に関係なく、なりたい仕事につける。


だが、自分が持っていない才能で成功するのは難しく、あまりこの選択をする者はいない。


良い意味で考えれば、自分の才能以外の仕事につきたい「変わり者」はジョーカー連邦に行く者も少数いる。


しかし、やっぱり才能が無い仕事についても、仕事で成功する事は0だ。


どうしても、才能が無い仕事で成功するより、才能がある仕事で活躍する方が効率が良い。


それでは、なぜジョーカー連邦で才能が無い者が才能が無い仕事を承認するのかというと、それは何の仕事につくにしても、税金を徴収して国の利益にしているからだ。


成功しない仕事をやろうと、国は税金収入があれば良いのだ。


イースの場合、クローバー王国で両親の手伝いはできたとしても、正式に才能が認められないので、自分で仕事として狩猟や裁縫をやろうとしても国が認めず、お金をもらう事ができない。


そもそも、才能無しなんて前列がないので、世間の共通認識は、才能無しにできる仕事は無いである。


今後、イースが生きていくためには、ジョーカー連邦に行って、何でも良いから仕事につくしかないのだ。


イースは、自分と同じくらいの村の子供達が学校に行ってる間、将来、1人で生きて生けるように両親の手伝いをしながら経験を積み、お金を貯め、何かあった時に逃げられるようにトレーニングを続けていた。


まぁ、イース本人はそう思っているが、狩猟も裁縫も料理等の家事能力、Cランク魔獣を軽くあしらう戦闘能力があるので、ジョーカー連邦に行けば、冒険者として生計を立てるのは難しくないだろう。


残念ながら、イースもイースの両親も気づいていないのだが・・・。


それから日々時は流れ、イースの18歳になった夏、イースは両親と将来の話をしていた。


イース「父さん、母さん。俺、ジョーカー連邦に行くよ。この国にいても、将来、俺は仕事につけないから。」


アース「イースもそんな歳になったんだな。」


クレア「私達もずっと生きてる訳には行かないし、私達が死んだらイースはこの国じゃお金を貰えないからね。」


イース「そうだね。今の俺の夢はジョーカー連邦で何かしらの仕事につければ、何でも良いんだ。高望みはしないよ。」


アース「それしか無いんだな。すまないな。イース。」


イース「父さん、気にしないでよ。俺が決めた事だから。向こうの生活が軌道にのったら手紙を書くよ。」


クレア「そうね。私達はイースを応援してるからね。」


こうしてイースのジョーカー連邦行きが決まったのだった。


イースは一週間かけて荷物を用意した。


そして、イースは両親に見送られながら村を出発し、ジョーカー連邦に向かうのだった。

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