第8話 イースとの再開



翌朝、マリンは起きた後、身支度をして朝食を両親と済ませた。


マリンは朝食を済ませた後、毎日のルーティーンであるトレーニングを始める。


全力で10キロ走り込み、パンチとキックの打ち込み一時間、魔力運用一時間を行う。


マリンは「拳王」の才能により、トレーニングをすれば、どんどん能力が上がっていく。


マリンのステータスは、Aランク騎士や冒険者と同じくらいに育っていた。


マリンは強くなりたい一心でトレーニングを続けてきた。


マリンが強くなりたい理由は、イースを救うためだった。


でも、自分がアックより強くなった時点で、イースがイジメを受ける事が無いのも分かっていた。


マリンはイースとどう向き合って良いか分からなかった。


イースが嫌いと言ったらどうしよう?

無視されたら?


マリンには不安しかなかった。


マリンは、その不安を払拭するようにトレーニングに打ち込んだ。


マリンが森の奥に着いた時だった。


前方で誰がフォレストゴリラの群れと戦っていた。


フォレストゴリラと戦っているのは、黒髪の青年で苦戦してる様子は無かった。


マリンは、青年が苦戦してなかったからだろうか、戦闘に割って入る事も無く「あれ、誰だろ?」と思うだけだった。


黒髪の青年の戦い方は、フォレストゴリラのような動きをしていたが、パンチやキックの威力はとてつもないものだった。


フォレストゴリラは、青年に殴られたからだろうか、森の奥に逃げて行ってしまった。


青年は急にマリンの方を見る。


マリンは数百メートルくらい離れていたので、見つからないだろうと思ったが、次の瞬間。


青年は右手で、幅が1メートルはあろうかという大岩持ち上げた。


そして、体を後ろにひねると勢い良く、大岩を投げつけた。


大岩はマリンに迫るが避けれ無かった。


大岩はマリンの横を勢いよく転がって行った。


青年「あれ?森に人なんて珍しいな。何かすごい強い感じがしたから、飢えた動物かと思ったよ。石ころ投げてごめんね。才能ある人は当たっても、痛くないと思うけど。」


マリンは開いた口が塞がらなかった。


マリンは心の中で叫ぶ。


飢えた動物って何?

私、人間ですけど!

石ころ投げたって、石ころじゃなくて大岩だから!

当たっても痛くない訳無いでしょ!

普通に重症だよ!


と。


マリン「・・・驚かせてごめんなさい。魔獣の気配が沢山したから助けなきゃと思って。」


青年「え!?魔獣ですか!?どこにいます!?早く逃げましょう!ここにいたら殺されますよ!」


マリン「え!?いやいや、さっき戦って」


青年「村に戻りましょう!」


青年はマリンをお姫様だっこすると、ダッシュで森の中を抜ける。


マリン「あ、あ、早い、下ろして~」


マリンは必死に叫ぶのだった。


マリン達はすぐに森から出てきた。


青年「森に魔獣が出たって両親に話してきます!」


青年はイースの家に入っていった。


マリン「あ、イースの家に入っていった。あれ?イースってお兄さんとか居たっけ?え、まさか・・・」


アース「イース!俺は村長に話をしてくる!」


アースが走り出そうとするところを見て、マリンが止める。


マリン「アースおじさん!待って!魔獣は逃げたから!大丈夫だから!」


アース「何すんだ!離せ!俺は村長に助けをって、魔獣居なくなったの?じゃぁ、良いか。ってマリンちゃんじゃないか。久しぶり。」


マリン「お久しぶりです。高等部に行く前に村に帰って来たんです。」


アース「そうか。そうか。まぁ、ゆっくりしてきなさい。」


マリン「アースおじさん!あそこの男の人って・・・」


アース「あれ?気づかなかったかい?イースだよ。イース。」


マリンは驚くが、小さいころの面影があったので納得する。


マリンはイースの方に向く。


マリン「イースだったんだね。」


イース「あぁ。君はマリンだったんだな。大人っぽい可愛い女の子過ぎて分からなかったよ。」


マリンは顔を真っ赤にしてたじろぐ。


マリン「・・・イース久しぶり。」


イース「マリン。久しぶりだね。魔獣もマリンのお陰でどっか行ったんだね。俺は、少しでも才能のある人の足を引っ張らないようにトレーニングしてるけど、魔獣は強すぎて戦えないよ。」


マリン「いやいや。イースが戦ってたゴリラは魔獣だよ!あれ、普通にその辺りの才能ありの人じゃ勝てないから!イースは強いんだよ!」


イースは急に渋い顔になる。


イース「やめてよ。マリン。俺が才能無しでイジメられてボコボコにされたの覚えてるだろ?才能無しが才能ありより強い訳無いだろ。気休めはやめてくれ。その優しさは傷つく。」


マリンは呆然とする。


馬鹿!馬鹿!

ていうか本気で言ってんじゃん!

もう勝ってるよ!

アックも相手にならないよ!


と心の中で叫ぶ。


マリン「イース。ごめんね。イジメられた時に助けられなかった。」


イース「良いんだよ。過ぎた事だよ。またアックに何かされるよ?帰った方が良い。」


マリン「アックになんて、もう手は出させないから安心して!」


イース「ダメだよ。俺がアックに勝てるわけ無いし、俺がイジメられるとマリンがつらい顔をする。そんなの耐えられないよ。かといって、俺じゃアックに勝てないから、しょうがないよ。」


マリン「そんな事」


イース「良いんだ。じゃぁね。マリン。」


イースはそう言うと、家の中に入っていってしまった。


マリン「・・・だから冗談じゃないのに。」


マリンもそう言うと家に帰っていった。


こうしてイースとマリンは再開したのだった。

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