第6話 イースは森のトレーニングを終えて帰宅する。
イース「ただいま。」
クレア「お帰りなさい。今日もトレーニング?ケガするといけないから、森には入っちゃダメよ?」
イース「分かってる。魔獣が出たら大変だからね。(まぁ、今日は猿しか相手してないから、言わなくても良いよな。怒られるの嫌だし。)」
クレア「森の中でフォレストゴリラっていう魔獣が目撃されてるんだけど、とっても強いんだって。イースが出くわしたら殺されちゃうから、絶対に森に入ったらダメだからね!」
イース「そっか。危ないから近づかないようにするよ。」
イースは、今日、遭遇したのが魔獣だと思わず、魔王のような大きいゴリラをイメージし、自分のような弱い者は森に入っちゃダメなんだと本気で思っていた。
クレア「そう言えば、一週間後に首都に行ったマリンちゃんとアックが帰って来るんですって。7才の時から帰ってないから、イースは久しぶりでしょ?帰ってきてたら、久しぶりにマリンちゃんと話でもしたら?」
イース「俺みたいな才能無しが話をすれば、マリンに迷惑をかける。極力、会わないようにするよ。」
イースは微妙な笑顔でクレアに言うと、自分の部屋に入ってしまった。
クレアはイースが心配で仕方ない。
なんせ、国内初の才能無し。
イースは筋トレをして体も大きく、がっしりしたが、イースの両親は才能無しの力では何も出来ないと思ったし、自分達が生きてるうちは、イースを守りきると考えていた。
イースも自分が弱く、下位才能の人より弱い、世界最弱と思い込んでいた。
そのため、イースの話と考えとイースの両親の話と考えが驚く程、噛み合ってしまうのだ。
イースは、ただ、毎日をひたすら筋トレ等に費やし、自分の能力を少しでも上がるようにトレーニングに打ち込んだ。
イースが森に行くと、フォレストゴリラの群れが襲ってきたが、魔獣とは思っていないし、イースは逃げたり、防御したり、攻撃したりして追い返していた。
数日後、イースは父のアースと森に狩猟に出かけた。
これは才能無しのイースに、アースが罠猟を教えるためで、罠猟なら森に罠を仕掛けて獲物がかかるのを待つので、普通の狩猟のように魔獣等と戦う必要が無く、才能無しのイースでもできるようになると思ったからで、12歳から週に一回は二人で森に入っている。
イースとアースは、一週間前に仕掛けた罠を見て回っていた。
一ヶ所、鹿がかかっているところがあり、弓矢や槍を使って止めをさし、その場で血抜きをしていた。
すると、草むらがガサガサ音をたてると、フォレストウルフが三匹出てきた。
ガルルル
アース「ヤバい!イース下がれ!魔獣のフォレストウルフだ!」
イース「!」
イースは驚いた。
初めて魔獣を見たからだ。
そう。イースの中ではフォレストゴリラは魔獣としてカウントされていないからだ。
フォレストゴリラに比べたら、フォレストウルフ三匹なんて雑魚である。
だが、イースは初めての魔獣だと思って、フォレストウルフに驚き、心臓の鼓動が早くなるのを感じた。
アース「一旦、下がって様子を見るぞ。目を離すなよ。」
イースはアースの言うとおり、フォレストウルフを見つめる、というか睨む。
すると、フォレストウルフが怯えながら下がり始めた。
クゥーン、クゥーン
そして、そのままフォレストウルフは反転し、逃げて行ってしまった。
アース「え?何だ?まぁ、良い。イース、鹿を担いで家に帰るぞ。」
イース「分かった。」
イースは筋トレのお陰で鹿一頭なんて軽々担ぎ上げる。
アース「それにしても、イースは力持ちだな。才能無しでも、父さんや母さんがいなくても生活できるだろうな。」
イース「縁起悪いからやめてよ。」
アース「あ、悪い悪い。でも、イースの努力の賜物だな。これで才能があればな。すまないな。才能を持たせてあげられなくて。」
イース「父さん。本当にやめて。才能無しは止め達のせいじゃない。こうして猟を教えてもらって感謝してるよ。だから気にしないでよ。」
アース「分かった。すまないな。さて、帰ろう。」
イースとアースは家に帰っていく。
アースも気づかない。
フォレストウルフは、はるか強者のイースの力を本能的に感じて逃げただけなのだ。
アースもイースのトレーニングを昔から見ている事もあり、才能無しのイースが普通だと勘違いしてしまった結果、イースの異常性に気づいてないのだ。
こうして勘違いが勘違いを呼び、現在のイースの勘違いに繋がってるのである。
ていうか天の声的には、何で気づかないんだよ!って突っ込みを入れたくなる。
イースの勘違いがいつ正されるのかは、誰にも分からない・・・
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